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マンガ家Mの日常
「ジョニーは戦場へ行った」「ローマの休日」等々、
数々の名作の脚本家として映画史に名を残すダルトン・トランボの伝記映画。


脚本家として活躍するトランボは、
自ら執筆した小説「ジョニーは戦場へ行った」等で反戦思想を示しており、
戦後の赤狩りで裁判にかけられ、服役を余儀無くされた。
釈放後もブラックリスト入りは継続され、映画の仕事を失う。
多くの脚本家仲間とともに、偽名を使うなどして脚本を執筆。
友人イアン・マクラレン・ハンター名義にした「ローマの休日」が大ヒット。
アカデミー賞に輝くが、トランボもハンターも授章式は欠席した。
質の高い脚本を書く一方で、自らと脚本家仲間の窮状を打開すべく、
皆でB級映画の脚本も多産する。

仕事に没頭するトランボは疲労の為にアンフェタミンを服用。
次第に家庭を顧みなくなるが、
賢夫人の妻クレオがトランボと家族を献身的に支える。

ハリウッドで権力を持つ反共のコラムニストのヘッダが、
トランボを排除しようとするが、
徐々にトランボの名声が広まり、
名優カーク・ダグラスや巨匠オットー・プレミンジャーらが脚本を依頼し、
ケネディ大統領までもがトランボの作品を称賛するようになった事から、
トランボは名誉を回復する。


映画マニアのハートを沸き立たせる作品。
当時の映画人達が実名で登場するのも興味深い。
戦後のハリウッドの赤狩りの無常さと共に、
トランボの才能の豊かさが伝わる。
ロマンチック映画の最高峰「ローマの休日」を、あの髭おじさんが創作したなんて。
でも、トランボが最初につけたタイトルは「王女と無骨者」で、
名前貸しを頼まれたマクレランが「ローマの休日」を提案したらしい。
「ローマの休日」は。やっぱり「ローマの休日」じゃなくちゃね。

信念を貫いたトランボや、陰ながら協力した友人達、
トランボに信頼を寄せたカーク・ダグラスらは名を上げたけど、
仕事を得る為にトランボを裏切らざるを得なくなった俳優ロビンソンは、
今作の公開で、再び辛い立場に置かれてしまうような。
当初、トランボ達の裁判の資金援助で有名絵画を売却までして協力しながら、
仕事を干されて、どうにもならず、寝返った。
やがて買い戻された絵画をトランボが見て、
ロビンソンに軽蔑の眼差しを向けるのが、見ていてちょっと辛い。
「脚本家は偽名で仕事が出来るけど、俳優は顔が商売道具だから。」と言う
ロビンソンの言い分にも一理ある。

トランボを演じたブライアン・クランストンの名演が光る。
アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。
そのトランボを光らせたのは、強烈な悪役ヘッダを演じたヘレン・ミレン。
ヘッダがコラムニストとして権勢を振るった背景には、
大物プロデューサーにレイプされた過去があり、
告発を恐れる彼らは、ヘッダを優遇せざるを得ない状況にあった。
近年のMeToo運動を想起させる。

何はさておき、
改めてトランボの天才を世に知らしめる。
原作、監督も務めた普及の反戦映画「ジョニーは戦場へ行った」や、
「ローマの休日」のような王道ロマコメ作品から、
史劇「スパルタカス」、アクション「栄光への脱出」、
更には「パピヨン」まで、
幅広いジャンルで歴史的名作を物したのは驚嘆に値する。

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NHKドキュメンタリー「ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像」

番組を観た。


当然ながら、加害者が悪い。

でも、番組を見進めるにつれ、
メディアの卑怯さに気持ち悪くなる。
自分達の利益を優先させて、犯罪から目を背けた。
被害者の人生よりも、自分達の儲けが大事。

被害者(故人)の姉という人が、電話で事務所に謝罪について詰め寄っていたけど、
この人自身、それまで弟の告発本を嫌がって読もうともしていなかった。
一番身近な家族に裏切られた弟は、どれだけ辛かっただろうか。
この姉は、メディアの人達とどれだけ違うというのだろうか。
(思い出した。
 冤罪で死刑判決を受けて服役していた袴田さんの姉。
 彼女は弟の無実をひたすら信じて、活動し続けた。)

そして、NHKの卑怯さも浮き彫りになった。
加害を黙認していた事は認めたものの、
その証言を、NHKを退職して現在スタエンの顧問になっている人物に求めた。
今、内部にいる人達を出せよ。
外部の人間に責任追及して、NHK自身は他人事のように振る舞って、
反省していない様子が露骨。

ふと思った。
これって、かつて戦争に突入していった構図と同じ。
頂点にいる犯罪責任者が確かに悪いのだけど、
その他大勢が日和った事で、助長されていった。

怖い。

果たして、自分はどこまで対抗出来るだろうか。

…人として。

人として、どう生きるべきか。

人として、どう死ぬべきか。

Facebookの海外のグループで、写真がアップされていた。
トルコの俳優。
超いイケメン。
Wikiのページがあったので、それなりに活躍の形跡あり。

試しに、Facebookの映画ファンのグループに投稿してみたら、反響大。
知っている人も多かった。
イタリアのミステリードラマが日本でも放送されたらしい。
見逃してるなぁ、そこまで情報ないし、時間も無くて。
一応覚えておこう。

同じくトルコ出身の他の俳優についてもお知らせをいただいた。
トルコの俳優はイケメンが多くて、欧州の女性を熱狂させているとか。
モデル系の整った顔立ち、鍛えられた肉体、エキゾチックな容姿。
黒髪に青い目というのが理想らしい。
あっ、そう言えば、ハーレクインに出て来る男性もそうだったなぁ。
日本人はほぼ黒髪に黒い目なので、髪や目の色には関心が薄い。

実話を元にした、イタリアの社会派ドラマ映画。


1960年代、イタリア南部の都市ビアチェンツァ。
詩人で劇作家のブライバンティは同性愛者で、
教え子の青年エットレと恋愛関係になる。
しかし、同性愛が許されていなかった当時のイタリアでは、
ブライバンティは「教唆罪」として逮捕され、裁判にかけられる。

教養人のブライバンティに気に入られたくて、過去に関係を持ったらしい、
エットレの兄や他の男子学生は、嫉妬もあって、不利な証言をする。
エットレは家族によって矯正施設に入所させられ、電気ショックを施され、
ボロボロの姿になり、朦朧としながらも、
ブライバンティとの愛情関係を肯定し、正しく証言しようと努める。

共産党機関紙「ウニタ」の記者エンニオは孤立無援な中で取材を続け、
エンニオの従姉妹も支援活動を行うが、敗訴する。
禁固15年の求刑に対して、裁判では9年の判決が下される。
逮捕の背景には、ブライバンティの政治的背景もあったとされるが、
戦時中のレジスタンス活動への貢献から減刑されたらしい。

服役期間の途中、ブライバンティの母親が亡くなり、葬儀に出席。
刑務所に帰りに、刑務官の温情で、僅かな時間ながらエットレと再会し、
かつての愛情を確かめ合う。

その後、2人は会う事は無く、人生を終える。


同性愛に不寛容な、半世紀前の事件。
そう締めくくってしまえば簡単なのだけど、
ネットで他の方の考察を拝読すると、
キリスト教との関連を詳しく説明したものもあって、感嘆するばかり。
裁判にかけられたブライバンティはイエスの立場だと。
そう言われると、裁判の前半で全く発言しなかった様子とも重なる。

タイトルの「蟻の王」は、
ブライバンティが蟻の生態系の研究もしている事にも由来していて、
エットレが、羽が取れた女王蜂を見つけた事とか、
比喩的なんだけど、正直よくわからない。

諸々、欧州圏の文化に精通していないと理解が及ばない難解作。
監督のジャンニ・アメリオは、
カンヌ国際映画祭審査員特別賞やヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、
ヨーロッパ映画賞作品賞3回受賞と、輝かしい経歴の持ち主。
...やっぱり、カンヌやヴェネツィアの受賞作は難しい。

たまたまなんだけど、
つい先日観た「ザ・ホエール」でも、知的で繊細な主人公が同性愛者だった。
同性愛者イコール知的というわけでもない筈だけど、
まず、映画等では、知識階級からの改革が社会を動かすとされるのかな。

イタリアの地方都市の風景や、室内が美しい。
何故だかわからないけど、エンニオのアパートのダイニングが
見惚れるほど綺麗だった。
光の使い方かな。


ストーリーの続きから。


トーマスは親と和解できた感謝を告げに来るが、
再びニューライフの思想に深く戻ってしまい、
チャーリーの同性愛を否定しにかかる。

娘に罪滅ぼしをしたいチャーリーに、エリーは読書感想文の代筆をさせる。
「白鯨」の感想文で、チャーリーはエリーの子供時代のものを提出。
何も気付かなかったエリーは、良い点数が取れなかったと激怒するが、
チャーリーは、子供時代の素直な文章こそが最上だと語る。
憤慨して出て行こうとするエリーに、チャーリーは感想文の音読を頼む。
巨体を必死の思いで起こして歩こうとするチャーリーの姿を見て、
エリーが感想文を読み上げると、
チャーリーの巨体が浮き上がり、白い光に包まれる。


ほぼ事前の情報無しで観たので、予想と違って、感動も増した。
舞台劇の映画化は退屈になる事が多いけど、
今作は複雑な設定を上手く構成し、感情を良い流れで揺さぶった。

TVで時々放送される超肥満体の人の番組では、プアホワイトが多いようだが、
チャーリーは知的で繊細なタイプ。
ただ、やはり食欲の神経はどこか壊れていて、
ストレスを感じると、鬼気迫る顔で無茶食いに走る。
孤独で生じる精神的な飢餓感が、食の飢餓感に変換されている。

今作では、「聖書」と「白鯨」が重要なモチーフとなっていて、
どちらもアメリカの人達にとっては人生の一環のような書物だけど、
日本人からするとやや距離があって、両作を詳しく読みこなしていないと、
今作を理解しきったとは言えないかもしれない。

「白鯨を倒せば人生が変わる。」
それが、エイハブ船長の信念のようなものであり、
今作の登場人物達にとっての、それぞれの「白鯨」がいる。

彼らは「白鯨」を倒せたのだろうか。

童顔のブレンダン・フレイザーが、丸い目をクルクルさせると、
余計に傷付き易さが際立ち、物悲しくなる。
ブレンダン自身も、美男俳優としてハリウッドでスターの道を歩みながらも、
セクハラを受けて鬱状態に陥り、過食で太ってしまった。
今作で本格的な復活となる。
願わくば、体調管理して、もう少し体を絞って欲しいかな。


(完了。)