忍者ブログ
マンガ家Mの日常
ナチスによる略奪絵画の返還をテーマにした映画。

度々になって恐縮だけど、
拙作「ポー・ド・ルルスの娘」のテーマと関連するモチーフなので、
期待して待っていた映画。

...「ポー・ド・ルルスの娘」を、さっさと加筆修正して、
デジタル配信に回してもらわなきゃなんだけど、
ずっとあれやこれやに追われて手付かず。
編集さん、ごめんなさい。
もうそろそろ見捨てられたかしら...。

映画に話を戻します。


実話をベースにした映画。
1990年代になって、ようやく、ナチスの略奪絵画の返還が進展を見せた。
ナチス政権下、夫婦でアメリカに亡命したユダヤ系オーストリア人女性マリアが、
巨匠グスタフ・クリムトによって描かれた叔母アデーレの肖像画の返却を求めて、
オーストリア政府に訴えを起こした。
夫の死後、一人で洋装店を経営して細々と暮らしているマリアに余分なお金は無く、
友人を頼って、弁護士をしている息子ランディを紹介してもらった。

「黄金の女」と呼ばれているその作品は、
ウィーンのベルベデーレ美術館所蔵となっており、
オーストリア政府は、アデーレが「美術館に寄贈する。」と書いた遺言状を盾に、
頑なに所有権を主張している。

若くてキャリアの浅いランディは、不利な裁判に二の足を踏んでいたが、
「黄金の女」の価格が1億ドルを下らないと知って、やる気を出す。
マリアは、老親を置いてアメリカに旅立たねばならなかった、
過去の記憶に苛まれ、度々心が折れかける。

ランディは著名な音楽家シェーンベルクの孫にあたり、
自らの一家も故国を追われてアメリカに移住した経緯がある。
裁判の為にオーストリアへ行くのを躊躇うマリアの本心に触れ、
絵画返還請求の意義に目覚める。

「黄金の女」の正式な所有権はアデーレではなく、アデーレの夫にあった。
その事実を証明する書類が見つかり、
裁判所はマリアの所有権を認める判決を出す。
オーストリア政府は、国家の至宝である「黄金の女」を
ベルベデーレ美術館に留め置くよう懇願するが、
ナチス時代と、裁判の過程での政府の仕打ちに耐えかねたマリアは、
アメリカに持ち帰る決意を固める。

現在は「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」として、
ニューヨークのノイエ・ギャラリーに展示されている。


世界的に有名な作品に関する実話なので、フィクションの要素の入る余地が狭く、
モチーフの規模の大きさの割には、全体の仕上がりがやや地味な印象。
もう少しハリウッド映画的にドラマチックにしてくれた方が好きだったかな。
元がお堅いテーマだし、恋愛の要素も無いしで、
地味になってしまうと、世間の注目度が上がらない。
そこんところはもう少し割り切っても良かったんじゃ無いかな。
ハイライトとなる裁判のシーンも、やや盛り上がりに欠けるような。

マリアの家系は元々が大富豪なので、
ナチスに財産を没収される様子を見ても、庶民からは悲劇に感情移入し辛い。

マリアやランディのキャラクターも、何かもう一味欲しい気がする。
実在の人物だから、作り変え難いだろうけど、
ほんのちょっと、ユーモアの要素を足して貰えると良いのかも。
ヘレン・ミレンとライアン・レイノルズは上手だけど、やや地味。
シャーリー・マクレーンとトム・ハンクス(もう少し若い頃の)だったら、
もっと観客の心を掴んで、作品にグッと華やかさが増しただろうにな。
ランディの妻役のケイティ・ホルムズも、何だか顔が良く無い。

製作者のスタンスを汲んでの脚本、演出だったんだろうけど、
少しずつ惜しい要素がいっぱい。

自分だったらどう描くかを考えると楽しいかも。

PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック