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マンガ家Mの日常
商店街の小さな広場パティオを挟んで、
両側に一方通行の緩やかな石畳の坂道が通っている。
のんびりとした足取りで鳩が道を横切ろうとしていた。
その時、カーブを曲がって坂道を登ろうとする大型トラックが現れた。

刹那、鳩の状況に危険を感じた。

トラックの運転手に合図をするか、一瞬迷いながらも、
坂道を登る為に速度を上げている事もあって、
大型トラックの重量では、ブレーキをかけても間に合わないと分かっていた。

前輪の間に鳩の姿が吸い込まれていった。
鳩は少し戸惑うような表情をしているように見えた。
そのままトラックが鳩を跨いで通り過ぎる事を願ったが、
パンッと陶器が弾けるような音が響いた。
鳩は後輪に巻き込まれてしまったのだ。
石畳の上に、一瞬前まで鳩だった物が、サモサのような形で横たわっている。

普段なら、鳩達は車の振動や騒音を聞きつけて飛び立つ。
しかし、あの鳩がそう出来なかったのは、既に年老いていたからだろうか。
トラックの運転手は鳩の姿に全く気付いていなかったのか。
鳩など気にしなかったのか。

状況に怯える間も、痛みを感じる間も無く、鳩の魂が旅立った事を願うのみ。

自分の死の瞬間はどうなるだろうかと考えが巡る。
不意の一瞬を襲って来るのか。
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