忍者ブログ
マンガ家Mの日常

「美しき侵入者」コミックス 3、の記事について、ご意見をいただきました。


「(原稿受け渡しが編集部への)着払いなのに、文句を言うのか。」
というご趣旨でした。


全体の流れがあっての話なので、その一点だけにこだわられると、
ちょっと困ってしまいます。


原稿の受け取りに関しては、
作家が遠方に居住していて、往復に多大な時間と費用がかかる場合は別として、
編集者の仕事の内の一つとして続いて来ました。(平成になってもね。)
コピーでも可能な文章作品と違って、
郵送や宅配での破損や紛失はマンガ原稿にとっては致命的です。
正直なところ、郵送、宅配は怖いのです。
手渡しであっても、100%安全というものでも無く、
原稿を編集者が電車に置き忘れた、なんていう事も、
ドラマだけでは無く、実際にあったりしたそうですが。
それでも、郵送、宅配よりは遥かに信頼度が高いです。


「保管に関して責任は一切取れない。」と、
大手宅配業者の代理店で言われた事もあります。
万が一、宅配業者が原稿を破損、紛失した場合、
仮に金銭的賠償がなされたとしても、原稿そのものは戻っては来ません。

そういう、描き手側の懸念はご理解いただけるでしょうか?


当時の記事で、郵送、宅配のトラブルの心配だけを書いた訳でもありません。

打ち合わせ等、コミュニケーションの機会が全く設けられず、
それでは信頼関係が育まれず、
仕事としての共同作業に齟齬が生じている、という点です。

そこはご理解いただけているでしょうか?


私個人としては、状況次第では自分で編集部に足を運んで原稿を納めます。
ネームの打ち合わせでも、毎回担当者が近所まで来てくれていましたが、
自分から編集部に出向くのは全く苦ではありません。
むしろ行きたい方で、
会社に顔を出すのも、様々な情報を収集し、互いを知る為の良い機会だと思えます。
出版社、編集部にもよるようですが、
会社に来られるより、喫茶店等を使用するのを好まれる編集者も多かったです。

加えて、ごく単純な事ですが、
会社とウチとの距離だと、郵送、宅配よりも、
地下鉄の往復の方が経費は安く済むんですよね。
会社は漫画家よりも経費が潤沢にあるから、高い方を選択出来る。


編集者が原稿を取りに来るのは「大御所」「昭和の考え方」とのご意見でした。
ネット時代になって、データで原稿をやり取りする方も増えて来ました。

そういう、物理的な事ばかりではなくて、
コミュニケーションが軽んじられるのは良い傾向とは思えないのです。


投稿者の「通りすがり」さんからは、
確か以前にもコメントをいただいたように記憶しています。
私ごときの拙いブログに時間を割いて熱心に読んでいただけて嬉しいです。
短文なので、マンガの出版関係の方なのかどうか、全く分かりませんが、
出版社とマンガ家の仕事について具体的な見解をお持ちであれば、
もっと詳しくコメントしていただけたらと思います。

PR

「美しき侵入者」コミックス、
ハーパーコリンズ・ジャパンより、
7月11日発売!

宜しくお願いします。


見本本は土曜日に届きました。
雑誌掲載からのコミックス化なので、今までのハーレクインコミックスと違って、
「ハーレクインコミックス★きらら」という括りだそうです。

ちょっと残念なのは、表紙の装丁が変わって、若干、古い印象。
上部30%分くらいがタイトル表示スペースで赤い面になっていて、
その分、絵が切られている。
前のハーレクインコミックスの時は、全体に絵が入ったのにな。

表紙、裏表紙とも、元の雑誌掲載時のカラー使い回し。
まぁね、後から描かされるのもシンドイことはシンドイんだけど、
せっかくなんで、描き下ろしの方が良いよね。
こういうのは、出版社が、原稿料浮かして、経費削減する為。

中表紙が、カラーの白黒化になるんで、
そっちを描き下ろしさせてもらえれば、とも思ってはいたんだけど、
相変わらず、打ち合わせも何もない編集部だから。



本日の朝刊で訃報に接しました。

若い世代の読者の方はご存知無いと思うけど、
かつて「りぼん」で活躍されていた大御所のマンガ家さんです。

当時の「りぼん」は、一条ゆかり先生がデビューされて、
一気に華やいでいた頃だったので、
巴里夫先生の教訓的な作品には、子供心で、地味で面倒臭いイメージがあった。
さりながら、重厚なテーマの作品では比類する者無く、
心の奥底にじんわりと浸透するものがあった。

「りぼん」で文学作品のコミック化シリーズがあって、
その中で巴先生が手がけられた
野坂昭如「火垂るの墓」、一色次郎「青幻記」はいつまでも心に残った。
他のマンガ家が20歳そこそこの若さだったのに対して、
巴先生はもう少し上の世代であられたので、
文芸作品を表現する説得力があったのだろう。
「火垂るの墓」はジブリのアニメ映画で広く知られるけれど、
私にとっての「火垂るの墓」は巴先生の「火垂るの墓」しかない。

マンガの流行の波には抗えず、
「りぼん」では、巴先生はマンガスクールの監修に移行されて、
次第に作品を目にする事は無くなった。

売れ線の華やかなラブコメを押すのは編集部としては当然なのだけど、
それでも、巴先生の作品を掲載していた、当時の「りぼん」編集部の、
読者に対する使命感のようなものに謝意を贈りたい。

享年83歳、肺がんだったそうです。
ご冥福をお祈り申し上げます。

巴里夫(ともえ さとお)のペンネームは、
大好きな「巴里(パリ)」にちなんで付けられたそうです。


体重ではありませんよ、念の為。

紙の厚さは、重量で測られます。
「原紙1000枚分の重さが何kgになるか」だそうです。
kg数が多い程、厚いって事ね。


マンガの原稿用紙は、
最近ではトンボ(印刷の為の目安)を印刷したものが通販であるようですが、
トンボが入ってると、何となく気になってしまうのが嫌で、
画材店で用紙の裁断をしてもらって、自分で鉛筆で枠線を入れています。
昔ながらのやり方。
自分専用のトンボを印刷所に発注されるマンガ家さんもおられますが、
そうすると、経費がかかるからね、私はやりません。

トンボが無いと校了時に印刷の合わせが面倒なようで、
以前編集さんから、トンボを印刷するよう言われた事がありましたが、
そりゃね、その分の経費を編集部が持ってくれるならね、やらんでも無いけどね、
1円も出してくれる気配は無いんで、
「トンボが無い方が描きやすい。」と言ったら、それきり話は無くなりました。

まぁね、確かに、測ったり何だりする手間はいらなくなるだろうけど。
トンボの印刷時に、紙が痛まないかなぁ、とか、考えてしまう。


最初にアシスタントをした仕事場の先生が100kgを使っておられて、
それに慣れてしまっていたので、
投稿を始めた時、100kgを使っていました。
100kgはかなり軽くて、薄い。
デビュー後、アシスタントさんを雇うようになったら、
トーン貼りの作業で、ちょくちょく紙を切り抜かれました。びっくり。
もうちょっと力加減しろよ。

その後、区切りが変わったのか、
100kgは無くなって、代わりに110kgを使う事に。
10kg違うだけで、ペンの沈み具合だとか、随分変わる。

135kgを使ってるマンガ家さんが多いので、
当時、たまに外にアシスタントしに行くと、
紙に馴染むのにちょっと時間がかかりました。
紙質、厚さ、インク、等々、仕事場によって違うので、
思ったような線を描く為に、それらに対応する必要があるのです。
普段通りに描いていると、いきなり線が滲んだりして焦った事がありました。


IT企業マンガの為に、原稿用紙の補充。
画材店で注文。
白の上質紙をA4規格で裁断してもらいます。
ちょっと行かない間に、画材店の品揃えが変わってるし、
裁断費も値上がりした?

通常のマンガ原稿はB4サイズですが、
ハーレクインの時はコミックスだったので、やや小さめのA4で描いてました。
B4からコミックスのサイズに縮小されると、感覚的に分かり辛いので。
IT企業マンガもA4で描きます。

A4で描き始めた頃は、原稿用紙が小さくて描き辛いような印象があったけど、
B4の時程、線に強弱を付けて太く描かなくて良いので、手は楽かな。
どっちでも、多分、慣れ。

英国在住の友人夫妻からのお仕事。
趣味の旅行のブログを開設するにあたって、
夫妻をマンガの絵にしたようなアイコンを入れたい、との事。

マンガだから、サラサラっと描けるだろうと、彼女は思ったみたいだったんだけど、
土台が無いところにいきなり家を建てるのは、やっぱり手がかかるもんです。

キャラクターの絵作りから始まって、微妙な調整を施しつつ、
着彩の様子も見つつ、
いつもお仕事で組ませてもらってるデザイナーさんに
デジタル処理の相談をしつつ。

再録原稿の修正の仕事もずっと抱えていたので、締め切りがある仕事が優先。

何やかやで取り掛かりも遅くなり、小さなプレッシャーが積もりつつある中、
ようやく今日、元絵をデザイナーさんに渡して、私の持ち分の仕事は完了。

10枚程のイラストだけど、完了するとホッとする。


今日は同時に、これまで手掛けたIT企業マンガの次回作の打ち合わせもしました。
諸般の事情があって、やや長めの枚数になるので、この夏はそちらにつきっきり?


こうしたイレギュラーのお仕事はそれなりに楽しさもあるし、
IT社長さんはこちらの希望に応じた原稿料を出して下さるので、とっても有難い。


でも、やはりそろそろ商業誌の仕事、新作にシフトしたい。