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マンガ家Mの日常
日テレの調査報告書が出されて、ますます混迷する「セクシー田中さん」問題。

芦原先生がドラマ化に不信感を抱いた事柄の中の一つに、
登場人物の「キャラ変」があった。

田中さんを慕う後輩女性の設定。
原作では、家庭の経済的事情で短大に進んだとなっているが、
日テレ側は、
現在、短大は馴染みが薄い、
同じような経済的事情でも、可愛い制服の学校に行けなかった、としようと提案した。
(それがどう決着したかは知らない。)
芦原先生は「可愛い制服なんてどうでもいい。」と立腹だったらしい。
 
原作もドラマも見ていないので、正確な事は言えないが、
おそらく、
この後輩女性は、本質的には上昇志向の持ち主だったが、
短大に進学せざるを得なくなった時点で、諦めのような感覚に支配され、
自ら可愛子ちゃん路線を演出するしかなくなっていた。

しかし、
可愛い制服に憧れて、とされると、
キャラクターの内面が切り離され、ただの可愛子ちゃんになってしまう。

日テレ側としては、そういう単純化によって、
わかりやすい設定に落とし込もうとしていたのだろうけど、
それでキャラクターの内面が変えられてしまうと、
その後の物語の展開、キャラクターの心理や言動も、何もかも違ってしまう。
もうメチャクチャ。
日テレ側はそれをわかっていない。

芦原先生のイライラが募っていったのも無理ない。


芦原妃名子先生が自死された事件で、
日本TVがようやく社内の調査報告書をまとめて発表。

ネットでひと通り読んでみると、
事件の後に報道された事柄からいくらも深掘りされておらず、自己弁護に終止している。
自社のドラマ制作部門を庇い、原作者と脚本家の対立構造に落着させようとしている。
芦原先生が不満をぶちまけたのが問題の発端だったような書き方。
死者に鞭打つ非道。

芦原先生が事前に要望を伝えた事が、ドラマ制作部門に正確に伝わっておらず、
徹底されなかった。
その齟齬が何故起きてしまったか。
そこが根本原因なのに、肝心な事が曖昧にされたままとなっている。
要するに、自社に不都合な結果だから。

これでは芦原先生も浮かばれない。

先頃、マンガ家引退について示唆されていたが、
この程改めて引退を発表された。
4月4日発売号で、雑誌連載はラストとなる。 
「キャプテン翼」と共に歩んだ43年間。
お疲れ様でした。

先の報告でもあった通り、
今後はネームの形で連載を継続される。
完成原稿を描く体力が厳しくなったが、スピーディに物語を続ける為に。

成る程なぁ。


水島新司先生の「ドカベン」にしてもそうなんだけど、
学生スポーツマンガって、高校の全国大会での優勝で完結させるのが綺麗なんだけど、
キャラクターの人気が高いと、そのまま連載が継続される。
試合を丁寧に描いていたら、とてもじゃないけど、終わりが見えない。
雑誌連載を継続していたら、高橋先生は「キャプテン翼」完結までに40年かかるとか。
翼君、幾つになるんだろう。

ゲームやアニメの王道的なイラストで人気を博した、
いのまたむつみ先生の訃報がネットニュースに上がっていた。
詳細不明。
描きかけの絵もあったそうで、突然の出来事。
63歳。


先日の鳥山明先生に続き、60代での逝去。

マンガやアニメの仕事が、如何に心身に疲労をもたらすか。