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マンガ家Mの日常

年賀状の中で嬉しかった一文。
「たまい先生の仕事場はやり甲斐があって好き。」
と、アシスタントさんから言葉をいただきました。

そこそこ長い年月仕事をやって来たので、
すぐには数えられない人数のアシスタントさんに来ていただきました。
全くの臨時で、1日だけで終わりという方も大勢ですが。

お互い仕事は仕事としてやっているのではありますが、
毎日24時間、ずっと同じ狭い空間に一緒にいるので
ただビジネスライクでは長続きしません。
信頼関係あってこそです。

でも、マンガの仕事はやはり難しい。
お金の問題は置いておいたとしても、
アシスタントさんにはプロとしての画力が求められるし、
体力的にもキツイ。

自分が数カ所の仕事場でアシスタントをした経験と、昨今の情報等から
アシスタントさんの待遇を整えるように努めていて、
無論限界もあるので、好待遇とまでは言えないのですが、
良い仕事をしてもらえるよう気を配っています。
それでも、不満があったり、
私の至らない面があったりで離れていく方もおられた事でしょう。
人間的な相性もあるようで、そこは否定しきれません。
作品と同じで、「すごく好き!」という方もおられれば、
「どうしてもダメ。」という方もおられるものです。
100人中100人に好かれる事も、反対に100人に嫌われる事も無い。
次の仕事を打診して微妙な返事で断られれば速やかに身を引きます。

絵に関しては、私の原稿が全てのマンガの中で一番難しいという訳でも無く、
一番下手という訳でも無いので、何とも言い難く、
読者の方々へ、出版社へ、プロとして出せる原稿を描いている、と言うだけです。
アシスタントさんのキャリアや、
ウチにどれくらいの期間来てくれているかにもよりますが、
安心して原稿を任せられる方とそうでない方がいます。
その点はマンガに限らずどんな仕事でも同じでしょう。

なので、「先生」と呼ばれるのは面映ゆいですが、
時間の許す限りは絵の指導をしています。
残念ながら付いて来れない方や、指導されるのを面倒がる方もいれば、
きちんと吸収して上達していく方もいます。
ウチの仕事場の場合、その辺りに分かれ目があるのかもしれません。

仕事への姿勢を理解して受け入れてくれるかどうか。

生きていく為にお金は絶対に必要なので、
仕事してお金を稼ぐ事はとても重要です。
しかしながら、ブログで度々触れてきたように、
マンガの出版は薄利多売が基本にあって、原稿料は低く抑えられており、
多くのマンガ家は綱渡り状態で、
アシスタントさんも少なからずその影響を受けます。
楽ではないし、安心も出来ない、ブラック企業状態です。

ブラック企業の問題が世に出た時、
被雇用者の権利が守られるのは当然としながらも、
経営者側からは少し違う意見も出ました。
中小企業、特にベンチャーで新しく起した企業の場合、
起業の始め数年は借金を抱え、起業メンバーは夜も昼も無く死に物狂いで働いて、
会社を軌道に乗せてきたのです。
それでも潰れる会社が毎年山のようにある。
経営がやっと安定して来た頃に入社して、
企業に対して安心と安定ばかりを望むのも
仕事の姿勢としてどうなんだろうか、という意見です。

仕事の姿勢、理念、言葉は色々ですが、
マンガの仕事の場合、自分でも、最後に向き合うのは「やり甲斐」です。
充実感、達成感、仕上がった原稿を目の前にして、
やり甲斐を感じられる仕事であれば、仕事中は泣きたい程辛くても、
終わった時に笑顔でいられる。

まともなお金を稼げない仕事なので、本当にキツイ。
お金が続かなければ生きていけない。
「やり甲斐」だけにどこまですがって行けるか?
綺麗事で済む話では無く、常に悩むところであります。

それだけに、
アシスタントさんの「やり甲斐がある。」という言葉の重みを強く感じる。

読者の方の「面白かった。」「感動した。」という言葉と同じように。

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