忍者ブログ
マンガ家Mの日常
新聞の映画評で、今作に登場する建物等について触れられた一文があった。
舞台となったモーテルの色彩と、引きの構図になった時の説得力。
その他にも、建物が印象的な構図で捉えられている。

台詞等、言語で説明されていない事柄について、
鑑賞者が言葉で表現するのはやや難しい。
場面のテーマとともに解りやすく伝わるものもあるけれど、
イメージとして、心に先に届くものが多い。
表象的な夢の世界と、すぐ側に迫っている崩壊の切なさが、
建物の外壁を通して伝わってくる。

言語で語らないという点では、例えば、
ヘイリーがシングルマザーになった経緯や、
この場に辿り着いた経緯も直接的には語られていない。
おそらく、プアホワイトの家庭で育ち、勉強にも身が入らず、高校中退。
近所の仲間の男の子と無軌道なセックスをして妊娠してしまい、
喧嘩になってすぐに別れた。
若さだけを武器に働ける場所は限られていて、
フロリダの観光地のストリップバーのダンサーになった。
こうした説明は、しようと思えばやり方はいくらでもある。
でも、敢えて語らないところに、鑑賞者がなおさら強く感情移入する。

ヘイリーが売春を始めてしまった流れも遣る瀬無い。
ダンサーをクビになったのは、性的サービスを強要されそうになったから。
そんなヘイリーであれば、売春にも大いに抵抗があっただろう。
でも、モーテルの宿泊費を稼ぐのに、それしか思いつかなかった。
ネット用の写真を自撮りする場面も胸に迫るものがある。
ムーニーと一緒に遊びながら自撮りして、
自分を鼓舞し、自分を騙そうとしている。

客の男性の荷物を漁って、ディズニーリゾートの入場パスのバンド4個を盗み、
転売してお金を得る。
客は当然気づいて、ヘイリーの元に押しかけて来る。
ヘイリーの居場所が客に知られている以上、仕返しに来る可能性は高い。
ただお金目当てでやるにはリスキー。
客の男性は家族4人でリゾートに来て、合間に買春。
ヘイリーはそういう男性に腹が立ったのではないだろうか。
ディズニーリゾートのすぐ側にいながら、お金が無くて入れない。
ヘイリーとムーニーを支えてくれる夫も家族もいない。
家族4人でディズニーリゾートに来られるなんて、どれ程幸せな事か。
それを、この男性は裏切っている。許し難い。
そんな心理が背景に感じられる。

また、今作ではヘイリーの恋愛についても全く描かれていない。
ヘイリーはまだ若くて魅力的なのに、男性を求めようとしていない。
育った環境の中にいた男性や、ムーニーの生物学的父親の男性に対して、
失望しきっているのではないだろうか。

ヘイリーの若さの中に残る純粋さ。
いつか良い職を得て、ムーニーと再会出来る希望をそこに見たい。
PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック