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マンガ家Mの日常
カナダの画家モード・ルイスの伝記映画。
カナダでは人気の画家だそうだけど、全く知らなかった。
いわゆる、美術学校で専門的に学んだ画家ではなく、
田舎町で身近な自然をシンプルな表現で描いた。


モードは若年性リウマチを患い、身体が小さく、動きがやや不自由だった。
両親の没後、兄が家を売り払ってしまったので、叔母の家で暮らしていたが、
地元の魚売りの男性エヴェレットが家政婦を探していると知り、
半ば押しかけ的に住み込みで働き始めた。

孤児院育ちのエヴェレットはやや偏屈で心を開かないタイプ。
動きがトロいモードに最初はキツく当たるが、次第に打ち解け合い、
モードの求めに応じて結婚する。
時間を見つけては絵を描くモードを支える。

NYから避暑に来た女性サンドラがモードの作品に関心を抱き、購入する。
モードは少しずつ絵を売るようになり、作品は評判になり、TV取材が来る。
アメリカ大統領ニクソンもモードの作品を購入する。
モードが注目されたのと、大勢の人が家に押し寄せるのとで
エヴェレットは不機嫌になり、一時期モードはサンドラの元に身を寄せるが、
お互いが相手を必要としており、無事仲直り。
2人は電気も無い小さな家で、慎ましやかに暮らし、
モードが肺気腫を悪化させて息を引き取るまで、添い遂げた。


モードを演じているのが、アカデミー賞作品賞に輝いた
「シェイプ・オブ・ウォーター」のサリー・ホーキンス。
今作は地味だけど、改めて見直されるかもしれない。
ガリガリに痩せていて、皺くちゃな顔はお世辞にも美人の範疇には入らない。
だからこそ演じられる役がある。
若年性リウマチによる身体的障害で、トロそうなモードはなんかウザったい。
でも、内側に決意と知性を秘めているのが段階的に伝わって来る。
イーサン・ホーク演じるエヴェレットは素朴な田舎人だが、
モードを受け入れる感受性を、やはり内側に秘めている。
家中が可愛い絵で溢れるのを止めず、
絵筆を買ったり、網戸を取り付けてあげたりする様子に、
モードへの敬意と静かな愛情が見える。

映画開始当初は一見退屈そうな感じで、何故録画したんだろうと思いつつ、
イーサン・ホークの登場で引き止められた。
しかし、地味な展開ながら、飽きさせない。
そういう作品は、編集のテンポが良いのだ。
未開発の田舎町の光景も美しい。
モードが足を引きずりながら孤独に歩く長い1本道。
やがて夫婦仲が深まって、エヴェレットは手押し車にモードを乗せて移動する。
一家の邪魔者のような存在だったモードが、
エヴェレットの愛情を身体全体で受けて、心から楽しそう。

愛情が深まるにつれて、お互いの知性や感性もまた成長していく。

モードの成功に便乗しようとやって来た兄をはねつける様は爽快。
キツく当たっていた叔母も、モードに心を開く。
モードの成長の証。

こういう愛情を感じられたら、人生は豊かだろう。
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