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マンガ家Mの日常
土曜日の夜、夕食後に歯を磨いていたら、口の中にゴロッとした感触があった。
以前歯に入れた金属の詰め物が外れたのだった。

日曜日はラン大会なのに、縁起悪いなぁ。

微妙に食べかすが残る違和感。

月曜日にすぐ歯医者の予約を取って、木曜日に行く。

外れた金属を念の為に持参して行ったら、
それをセメントで付け直すだけで事足りた。良かった。
時間も費用も節約出来た。

来週、噛み合わせをチェックしておしまい。


子供の頃から歯は丈夫で、
生え変わり後の小学2年生くらいの時に一通り歯医者に通って治療して、
以降は何も問題無かった。
歯並びも、ブリッジも何もしていない割にまぁまぁ良い。

右利きだから、食事の時に左側に食べ物を入れて、そのまま左側で噛み砕くので、
左側に負担がかかって虫歯になるケースが多いらしい。
その通り、ある日左下の小臼歯が虫歯になって、気付いた時には穴が空いていた。
かなりなショックだった。

デビューして間も無く、
いきなり160ページ一挙掲載で横溝正史先生の「悪霊島」を描く事になって、
一人でボロアパートに篭ってひたすら描いていた。
原稿料4000円ではアシスタントを雇える筈も無く、
最終盤の3、4日だけ友人に仕上げを手伝ってもらった以外は全て一人でやった。
まだ仕事用の机も無くて、
お膳兼用の古い家具調こたつに朝から晩までかじりついていた。
動かないから筋肉が落ちて体重はズルズル減り、貧血気味。

虫歯に気付いたのはそんな日々の途中。
まさかという思いだった。
自分の身体に全く構ってやれていなかった。

以後も健康的とは言えない生活が続いたけど、
歯科検診には定期的に行くよう心がけている。

幸い「悪霊島」はとても良い評価をいただいて、その後の仕事につながった。

それから1年半後には母が急逝する。

カドカワでお仕事させていただいていた、そんな時期の作品。

「悪霊島」に関しては、横溝先生の作品の昭和の時代の表現が問題視されて、
コミックの再録がなされなくなってしまったけれど、
多くを犠牲にしながら成し遂げた仕事に対して、
不用意に批判してくる編集者の横柄さが許し難いと感じた事があった。

歯の詰め物を見る度に思い出す。


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