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マンガ家Mの日常

「舟を編む」みたいなベストセラーにはなりそうにない。
ずっと使っていたお箸の先の方を噛み折ってしまったので、
新しいのを買う事にしました。

長めのが2膳、短めのが2膳あって、
手の大きさに合う長めのをいつも使っていた。
それを、1本噛み、2本噛み、3本噛み、
短めのも1本噛み、
とうとう短めのを使うか、
短めのと長めのとを組み合わせて使うとかしてたんだけど
どうも具合がよろしく無い。
で、使い勝手の良さそうなのを専門店で探す。

前のお箸を自分で買った記憶は無いんで、実家にあったのを持って来てたんだろう。
どう言う質の物かはよく分からない。
でも、長年使って来たので、手に馴染んでいた。
なので、前のお箸と感触が似た物を探す。

専門店と言うのも良し悪しで、選択肢が多過ぎて迷う。
所詮普段使いの雑器だから、とも思うのだけど、
毎日使う物だからこそ、良い物を使うべきか。
そう思うと、妥協が許されなくなって来た。

木の手触り、重さ、太さ、長さ、形、色、
何もかもが少しずつ違う。
元通りしっくりと手に馴染むお箸を見つけるのがこんなにも難しいとは。

ひとつひとつを手に取って、感触を確かめる。
やはり、完全に同じ物と言うのは無理らしい。

これは良いかな、と思って手にしたお箸が2、3膳見つかった。
値札を見ると、えっ、これがお箸の値段か!と驚く程バカ高い。
デパートで売ってるブランド品の食器よりもお高いよ。
しかし、日々口に運ぶ物で、もう妥協は出来ない。
素人判断ではあっても、良い物はやはり良くて、値段もそれに見合う金額。

それらのお箸について店員さんに尋ねてみると、
どこそこの有名な職人の手による作品らしい。
木も、何だか知らないけど、紫檀とか黒檀とかなんやらとか、
堅くて良い木らしい。
これならもう、一生物として使えるかな。
そう考えて、2種類1膳ずつ購入に踏み切った。
「真剣に選んでいる様子だったので、声をかけられなかった。」
と店員さんに言われた。
そんなに?


帰宅後使ってみると、まだ手触りは落ち着かない。
そのうち慣れて、馴染んで来るだろう。

やっぱ、お高いんで、大事に使わなきゃ。
洗い方にも気をつける。水に浸けっぱなしとかは御法度。
暫く使い込んだら元の木材の油分が薄れるので、
オイルを塗り籠んでやったりすると良いらしい。

良い食器、良いお箸を使う事で、食卓の質が上がる。
学生時代に買った安い雑器や実家から持って来た物がまだ生き残っていて、
それはそれで使い勝手は悪く無いし、何となく可愛くて愛着もある。
でも、日々、長く付き合うならば、
きちんとした物を選び、身の回りに置くよう習慣付けなければ。


お箸きっかけで、人生を見つめ直す。


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