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マンガ家Mの日常
SNSで(一部で)話題になったらしい話。

少女マンガ雑誌の編集者が、
「打ち合わせで自分が指示した通りに作家がネームを修正して来たらガッカリする。」
と、投稿したら、
そこそこ批判と賛同の両方向からの声が上がったとか。

まぁ、そうだろうなぁ。

この編集さんは、自分が考えたより、更に良いアイデアを出して来て欲しいと願った。
作家はその期待に応えなければならない。

でもね、

一方で、
「何で俺様の言う通りにしないのか!」って、機嫌を悪くする編集者もいるわけで。
そこんところは、作家と編集者との相性とか、信頼関係とかによる。
そして、やはり、
編集者の多くは、自分の意見が通る事を内心では望んでいる。

なので、

作家の側の戦略としては、
他の部分を通す為に、一部で編集者の意見に従って変更する。

そう、ご機嫌取りです。

でもね、

作家として、本気の部分は守り通さなきゃならないから、
そこは頑張って押し通す。

なので、

私は大分編集者に嫌われた。

ところが、

そうやって普段散々たてついていると、
暫く仕事を続けた後には、いくらか編集者の指示に合わせる場面もあって、
そうなると、その編集者は一気にご機嫌になる。
(それが必ずしも良い事ではなかったりもするんだけど。)


まぁ、
打ち合わせって色々難しい。
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昨年12月12日にご逝去されていたと、先程ネットニュースで見ました。

「マジンガーZ」のコミカライズ等の仕事をしておられた事から、
永井豪先生の元アシスタントだと思っていたけど、
アシスタントとしては、石ノ森章太郎先生に師事しておられたらしい。 

子供の頃、雑誌の少年マンガに接する機会があまり無かったので、
作品を目にした記憶が少ないけど、
少年マンガらしい溌剌さを表現されておられた。


ご冥福をお祈りします。

ネットニュースから。

講談社の青年誌「月刊イブニング」休刊。

「休刊」って、実際は「廃刊」。
言葉は正しく使わなきゃ。

発行部数42,000部。
これを悪く無い数字と見るか、ダメな数字と見るか。
人気作「金田一少年」や、
大ベテランの小林まこと先生の柔道ものが連載されていたとなると、
それだけでも、支払われる原稿料はかなりの金額になる。
コミックスは良い数字をあげるだろうけれど、雑誌の赤字は大きい。
人気作品だけ他の雑誌に移動させて、雑誌は廃刊にするのが通常の手立て。

「イブニング」は、講談社の青年誌の中でも少し特殊で、
売り上げよりも、個性的な作品を世に出す事を使命としていたと言われていた。
先輩マンガ家さんも「イブニング」に描きたいと言っておられた事があった。
でも、ここに来て限界が見えて来たのだろう。
残念。

少年誌や青年誌では、読者の関心を繋げる為にも、週刊ペースで発行する必要がある。
しかし、「イブニング」は月刊誌として隔週発行だったそうで、
そうなると、会社員の読者とかはついて行かなくなる。
ただ、昨今、マンガ家のハードワークが問題視されている通り、
週刊連載は体力的に厳しいので、男性作家でも、週刊連載から外れる方向の人もいる。
月刊誌、隔週誌は、そういう男性作家の受け皿でもあった。
ただ、読者はついて行かなくなる…。
少女誌や女性誌の売り上げが伸びなかったのも、そこに一つの原因があったわけだけど。

「イブニング」の場合、お初で単体で購入して読んでも、正直、入って行けない。
どういう作品が連載されていたか、その時期にもよるかもしれないけど。

少女誌、女性誌では、
雑誌を売る為に、単発の読み切りか、読み切り連載の形式が求められて来た。
それは、作家にとってはネタの消耗度が高く、量産は厳しい。
挙句に、読み切りをまとめたアンソロジータイプのコミックスは売れない。
コミックスで売れるのは、長期の週刊連載作品のようなタイプ。
この矛盾が、女性作家の首を締めて来た。
男性作家にも同様の現象が起き始めるのかもしれない。

売り上げ、マンガ家の生活、作品の質、
出版社は、そういう要素をもっと総合的に考える義務があったと思うが、
名案は出なかった。

「イブニング」が夜を迎えた。

聖悠紀先生に続き、
御厨さと美先生の訃報も入って来た。
こちらは友人のFacebook投稿で知った。

専属アシスタントに入っていた頃、
新谷かおる先生から、御厨先生の作品「裂けたパスポート」を見せていただき、
背景の描き方の参考にするよう指導された。
青年誌の劇画タッチで、正統派の描写。

「裂けたパスポート」の記憶も薄れてしまったが、
「イカロスの娘」という作品では、アメリア・イアハートを知った。
懐かしい。

当時、出版社はそこそこ景気が良く、雑誌も部数を伸ばしていたので、
読者プレゼント用のTシャツとか、よく作っていて、
新谷先生の小学館の担当さんから「イカロスの娘」のTシャツもいただいた。
可愛いデザインで、好きでよく着ていたので、とっくに古くなって、もう手元に無い。
専属を離れて、フリーでアシスタントをやっていた頃、
そこの先生から「マンガのTシャツばかり着てるね。」と言われた。
専属時代は時給2〜300円。
フリーでもせいぜい時給4〜500円。
そんな状況で、どうやって流行りの服を買えと言うのか。
まともに暮せる時給を支払ってから言ってくれ、と内心思った。
そうやって、極貧のアシスタントが、トップのマンガ家の作画を支えていた時代。
真っ白の原稿用紙を、ブラックな仕事状態で埋めていた。

話が横道に逸れてしまった。

御厨先生のご冥福をお祈りします。

少年誌で独特のSF作品の世界を築き上げた「超人ロック」の作者、聖悠紀先生。
数年間に渡ってパーキンソン病の治療を受けておられて、今年10月末、逝去された。

少年誌のSF作品と言えば、
手塚治虫先生の「鉄腕アトム」や、石ノ森章太郎先生の「サイボーグ009」等、
長い歴史と名作の数々が知られているけれど、
その後の少年誌では、SF的な設定でありながら、
バトルシーンに焦点を当てられた作品が殆どとなっていた。

「超人ロック」もバトルシーンは盛り込まれているけれど、
ベースとなる設定が、本格SF小説を彷彿とさせるもので、マニアの心を満たした。
「超人ロック」という、真正面から言い切ったタイトルもカッコイイ。

懐かしい。
学生時代、各方面のマンガに詳しい友人から教えられて読んだ。
「週刊少年キング」という、ややマイナーな雑誌が連載の舞台となった事で、
メジャーに迎合しない、独自の作品作りが可能となったのだろう。

ご冥福をお祈りします。