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マンガ家Mの日常
仕事上、自分にとって重要な話となると、集中力が必要だし、
きちんと説明しようとすると、どうしても文章が長くなる。
またもや書きかけになってしまっていたので、今回、ちゃんと結着を付けよう。

「巨匠」になったが故に、作品の質が低下する、という現象。
本人の望む事が読者の望む事では無くなってしまったという事だろうか。

マンガの原稿というのは、雑誌でもコミックスでも、
まずページ数の制約ありきで始まる。
それは本の印刷コストが絡んでの事なので、
プロである以上は受け入れざるを得ない。
大体に於いて、枚数を言い渡されてから話作りにかかる訳で、
その枚数に見合った話を作れば良いだけの事なんだけど、
これがなかなかそうもいかない。

「キアラ」のような読み切り連載の場合、
1回毎に何かの事件があって、それを解決するパターン。
毎回新キャラクターが出て来るので バックグラウンドの説明が必要だし、
事件のプロセスを組み上げるだけでも かなりな枚数が必要になる。
また、少女マンガなので、何らかの恋愛も盛り込むよう求められる。
そうすると、もう、生半可では枚数内に収まりきれない。
以前ある編集者から「力技だね。」と言われた。
とにかく、枚数内に収める為に、ギリギリまでネームを煮詰め、コマを詰める。
「ポー・ド・ルルスの娘」の時はストーリー構成がしっかりあったにも関わらず、
必要な枚数の半分しかもらえなかったので、ネームも原稿も、泣く思いだった。

ネームを煮詰める過程で重要なのは、とにかく言葉を選ぶ事。
3行で語られる内容を1行で言い表す、そういう言葉を探し出す。
慣れない人が書くと、明らかに説明台詞が長くなり、画面が文字だらけになる。
スラスラと読めるマンガ程、ネームが厳しく推敲されているのだ。

ネームを煮詰めてもまだ入りきらないような場合は、コマ割りで何とかする。
エピソードを切る、という考え方も当然あって、出来る事なら先にそうしてるが、
切って良いエピソードは、もうとっくに切っている。
今残っているのは、ストーリー展開上既に必要最低限のエピソード。
ひとつのコマに上手く情報を入れ込む。
更に、コマの配置の工夫で、必要な構成を図る。
それでも、マジどうにもならなかったら、多くてもコマ数を詰め込む。
そうなると、吹き出しや絵のバランスの取り方が更に難しくなるし、
人物も小さくせざるを得なかったりで、思う通りの絵が描けるとは限らなくなる。
ハーレクインの原稿も原作ありきなので、枚数に収めるのがかなり厳しい。

えんえんこの作業の繰り返し。
ページに余裕があったら、もっと良い作品に仕上がるのに、といつも思う。

でも「巨匠」になって、好きなように描ける自由を手にした途端、
歯車がズレてしまう様子を色々な作品で見てしまうと、
描き放題にも疑問を感じる。
締め切りと同様で、何か歯止めが必要なのかもしれない。
マンガ家ばかりが気持ち良くなってると、読者は楽しめない。

...
それでもやはり、心の内では、思う存分の状態で原稿が描けたらと願ってしまう。

せめぎ合いの日々。

...話が長くなってしまったけど、
「マンガを読まなくなった」大きな原因のひとつは、
こうした、元お気に入りだったマンガ家の作品がつまらなくなってしまったから。
その作家にこだわらず、新しい作家の作品を開拓して行けば良いのだけど、
どれも連載が長くなって、読み通すのがシンドイ。
結局堂々巡り。

単純に、時間が無いってのもある。
仕事最優先の毎日だと、勉強の為に時間が許す限りは本や映画を見るし、
人と会ったり、旅行に行ったり、人生経験そのものを豊かにすることも大事。

マンガ家になってから、マンガから遠ざかってしまった。
こういうタイプのマンガ家、結構いると思う。

(この話、終了。)
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