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マンガ家Mの日常
現行、デジタル化には諸問題ありながらも、大勢はそちらに移行してしまう。
あくまでも、大事なのは、作家性。
簡単にディテールを詰め込めるデジタルでは、
その作家性が育ち難いのが最も危惧されるところ。


巨匠、萩尾望都先生の天才性について少しお話ししたい。

最大の出世作となった「ポーの一族」、
その1〜3巻に収録された初期作品は、天からの贈り物と言える。
当時、絵の上手さばかり強調される事に、
萩尾先生ご自身が辟易とされておられたようだったけど、
萩尾先生の「絵の上手さ」とは、単に技術的な事や美しさだけではなく、
物語性にある。
1ページ、1コマに、隅々まで、交錯する人物の深い感情が込められ、
前後のドラマを想起させ、読者を物語世界の深奥に引き込む。
なので、「ポーの一族」は見るたびに発見があり、何度読んでも飽きない。

画面に沢山の「情報」を写し込むというのは、そういう事。
ただ全てを緻密に描き込めば良いという事ではない。むしろ、その逆。
余分を省く事で、重要な要素を読者に分かり易く見せる。


デジタルで、気軽に緻密な背景情報を詰め込む事ができるようになって、
それで質の高い「絵」を完成させたと思い込んでしまうのが危ない。


文化も科学も、歴史の中で全て常に過渡期にある。

作者も読者も、過渡期をどう渡るかが問われる。


(この項、完了。)

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