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マンガ家Mの日常
ピューリッツァー賞を受賞した同名戯曲の映画化。


蒸し暑い8月のオクラホマ州。
ヴァイオレットは癌闘病中で、認知症の症状も現れつつあった。
そんな中、夫べバリーが入水自殺。
葬儀の為に家族が集まる。

ヴァイオレットもべバリーも、幼い頃に貧しい暮らしを強いられた経験があり、
特にヴァイオレットは子供達には厳しく接していた。
傲慢で辛辣な物言いは今も変わらず、
長女バーバラには後継として期待していた分、余計に当たりがキツイ。
バーバラは反発を強めるが、彼女自身ヴァイオレットの性質を受け継ぎ、
浮気夫ビルを責め立てている。

次女アイビーは地味めで男性関係も希薄で、
それもヴァイオレットの攻撃材料とされていたが、
実は、従兄弟のチャールズと親しく付き合っていた。
ところが、チャールズは、
べバリーがヴァイオレットの妹マティ=フェイと浮気して出来た子で、
アイビーとは異母兄妹に当たる。
ヴァイオレットは薄々勘付いていたが、黙認していた。
急に真実を知らされたアイビーは酷く傷ついて立ち去る。

三女カレンは自由奔放な性格で、ヴァイオレットにも可愛がられていた。
新恋人スティーヴを伴って来るが、
スティーヴはバーバラの14歳の娘ジーンに手出ししようとしたのを
家政婦に見咎められる。
カレンはスティーヴを庇って、一緒に立ち去る。
ビルはバーバラとの離婚を決意し、ジーンを連れて帰る。

ヴァイオレットは南部での過酷な生活に耐え抜いて来た事から、
お金の扱いにも強欲な面を見せる。
べバリーが自殺しようとしていたのを止めるでもなく、
夫婦の資産を自分のものにしていた。
憤ったバーバラは、いて欲しいとすがるヴァイオレットを置いて、去る。

認知症が進行しつつあるヴァイオレットは、意識混濁し、
家政婦のジョナにもたれかかる。


家族の映画というのは、いつ観てもシンドイ。
そんなにいがみ合わなくても良いのにと思うけど、
幸福そうであっても、不幸そうであっても、
自分の家族と比較して、辛くなる。

貧しく過酷な生活環境でありながら、何とか高校まで進学し、
そこそこの財を成した世代として、
大学に行かせてやったのに、何者にもならなかった娘達に不満を抱く。
こうした世代間闘争は如何ともし難い。
自分も、戦時下で育った両親とは、埋められない溝がある。
自分も、この娘達も、心の何処かで、ヴァイオレットを否定しきれない。
ヴァイオレットの不満をバーバラは受け継ぎ、ジーンに不満を覚える。

べバリーの自殺の原因は明らかにはされない。
義妹との浮気で息子が産まれながらも、隠し続けた辛さなのか、
気丈過ぎるヴァイオレットに疲れ果てたのか。

気丈な女性達に相反して、男性達が全員ナイーヴ。
それも南部の土地柄なのかな。

ヴァイオレットを演じたメリル・ストリープの演技が、やっぱり凄い。
後ろから刺したくなる。




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鑑賞した映画の感想記事の整理がなかなか進まない。
たかがブログ程度でも、文章をまとめるのは時間がかかる。


第79回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞作品。
フランスの実話を基にした法廷ドラマ映画。
裁判の模様は、実際の裁判記録をそのまま取り入れている。


パリ在住のアフリカ系女性作家ラマ。
フランス北部サントメールで行われる裁判の取材に泊まり込みで出かける。
セネガル出身の若い女性ロランスが幼い娘リリを殺害した罪に問われている。
生後15ヶ月の娘を海岸に置き去りにして溺死させてしまった。
ロランスは法廷で、何故娘を殺害したか、裁判長からその理由を問われ、
自分自身、この裁判を通してそれを知りたいと語った。

ロランスはセネガルの裕福な家庭に育ち、両親から厳しい教育を受けて来た。
フランスの大学に進んだが、両親の意に反して鉄月を専攻した為、
仕送りを止められて生活苦に陥り、やむなく休学。
援助してくれた歳上の彫刻家デュモンテと同棲し、妊娠、出産。
しかし、デュモンテには妻子がいて、次第にロランスとは疎遠になった。
様々な問題を抱えたロランスは精神的に弱り、呪術等に影響され始めた。

ラマはセネガル独自の家族関係や妊娠等、ロランスに自分を投影し、苦悩する。

弁護士は、孤独がロランスを蝕んでいたと主張する。


判決は映画の中では知らされていない。
ネットでいくらか検索してみたけれど、わからない。


やはりヴェネツィア国際映画祭作品。難解。
フランスにおけるアフリカ出身の女性の境遇についての見識も必要だし、
アフリカにおける女性の境遇についての見識も必要。
フランスの白人知識層が、異なる文化圏のアフリカ出身の女性を裁く難しさ。
母である事、娘である事の複雑な位相。

経済的に追い詰められたロランスが足元を危うくするのはわかるとしても、
成功者であるラマが悩みを引きずっているのが重々しい。

裁判を傍聴するラマと目が合ったロランスが一瞬微笑む。
同胞として理解してもらえると感じたのだと思ったが、
ネットで他の方の感想を拝読すると、
もしかしたら被告席にいるのはあなた(ラマ)だったかもしれないのよ、
という、ロランスの見方かもしれないとあって、ちょっと怖くなった。
 



前にも少し触れたのかな。

Facebookの「映画」ファンのグループに参加して、
他の人の投稿を眺めたり、時々自分からも発信したり。

比較的年齢層の高いグループのようで、穏やかで知識の深い人が多く、
造詣に富んだ話にも触れられる。

まぁ、でも、どこでも、グループクラッシャーはいるし、すぐ喧嘩腰になる人もいるし、
そこそこトラブルは発生している。
たまに他の人でそれらしきやり取りの形跡も見られる。
一番困るのは、こちらの発言の意図を理解出来ずに攻撃して来る人達。
対話にも議論にもならない。
国語教育から取り残されているのかな。
早めにブロックするに限る。

マリオン・コティヤール主演の家族ドラマ映画。
コメディのような紹介だったので観たら、結構重い話だった。


舞台女優として成功している姉アリス。
詩人の弟ルイは、数年前に子供を亡くして、山間部で妻と隠遁生活。
次男フィデルはゲイのパートナーがいる。
家族は長らく疎遠になっていたが、
両親が自動車事故に巻き込まれて重体になり、面会の為に姉弟が集まった。
しかし、アリスとルイは面会時間をずらす等して、極力会わないようにしている。
女優として早くから成功を掴んだアリスは、
詩人としてなかなか芽が出ないルイを応援していたが、
ルイがアリスに関する本を出版して成功した辺りから不仲になる。

父アベルは子供達に厳しい態度を取って来たが、浮気で家族を苦しめてもいたが、
重症の妻マリー=ルイーズを心配して、側にいたいと切望する。
願い虚しく、妻は死去。
葬儀にはアリスもルイも出席せざるを得ない。
和解の言葉が交わされる。


明確にされている訳でもないけど、
おそらく、アリスとルイは近親相姦の状態にあった。
酒に酔ったルイが全裸でアリスのベッドに入るシーンからも想像される。
ルイがアリスに関して著述した本の内容が、これまた明かされていないけれど、
おそらく、そこで亀裂が生じた。
諸々、想像するしかないのだけど、
例えば、近親相姦に至った原因としては、家庭内での父親の傲慢な態度に対して、
姉弟で支え合っていた状況からかもしれない。
次男フィデルの存在感は最後まで薄い。

アリスは結婚しているけれど、子供はいない。
舞台終演後に現れた熱心なファンの若い女性に、やたら肩入れしたりする。
でも、取り立てて進展は無い。

アリスとルイが不仲な理由が示されないまま話が進み、
もしかしてと思ってると、終盤になって、やはり近親相姦の様子が伺えるのが重い。

いや、まぁ、自分にも3歳下の弟がいるんで、
近親相姦は「うへっ」となっちゃうなぁ。

ネットで他の人の解説を読んでみたいのだけど、
アルゴリズムが変わったせいか、DVD販売ばかりが出て来て、
解説を探し難くなった。

自分の家族を思い出してしまうので、家族ドラマは息苦しい。





「ジョニーは戦場へ行った」「ローマの休日」等々、
数々の名作の脚本家として映画史に名を残すダルトン・トランボの伝記映画。


脚本家として活躍するトランボは、
自ら執筆した小説「ジョニーは戦場へ行った」等で反戦思想を示しており、
戦後の赤狩りで裁判にかけられ、服役を余儀無くされた。
釈放後もブラックリスト入りは継続され、映画の仕事を失う。
多くの脚本家仲間とともに、偽名を使うなどして脚本を執筆。
友人イアン・マクラレン・ハンター名義にした「ローマの休日」が大ヒット。
アカデミー賞に輝くが、トランボもハンターも授章式は欠席した。
質の高い脚本を書く一方で、自らと脚本家仲間の窮状を打開すべく、
皆でB級映画の脚本も多産する。

仕事に没頭するトランボは疲労の為にアンフェタミンを服用。
次第に家庭を顧みなくなるが、
賢夫人の妻クレオがトランボと家族を献身的に支える。

ハリウッドで権力を持つ反共のコラムニストのヘッダが、
トランボを排除しようとするが、
徐々にトランボの名声が広まり、
名優カーク・ダグラスや巨匠オットー・プレミンジャーらが脚本を依頼し、
ケネディ大統領までもがトランボの作品を称賛するようになった事から、
トランボは名誉を回復する。


映画マニアのハートを沸き立たせる作品。
当時の映画人達が実名で登場するのも興味深い。
戦後のハリウッドの赤狩りの無常さと共に、
トランボの才能の豊かさが伝わる。
ロマンチック映画の最高峰「ローマの休日」を、あの髭おじさんが創作したなんて。
でも、トランボが最初につけたタイトルは「王女と無骨者」で、
名前貸しを頼まれたマクレランが「ローマの休日」を提案したらしい。
「ローマの休日」は。やっぱり「ローマの休日」じゃなくちゃね。

信念を貫いたトランボや、陰ながら協力した友人達、
トランボに信頼を寄せたカーク・ダグラスらは名を上げたけど、
仕事を得る為にトランボを裏切らざるを得なくなった俳優ロビンソンは、
今作の公開で、再び辛い立場に置かれてしまうような。
当初、トランボ達の裁判の資金援助で有名絵画を売却までして協力しながら、
仕事を干されて、どうにもならず、寝返った。
やがて買い戻された絵画をトランボが見て、
ロビンソンに軽蔑の眼差しを向けるのが、見ていてちょっと辛い。
「脚本家は偽名で仕事が出来るけど、俳優は顔が商売道具だから。」と言う
ロビンソンの言い分にも一理ある。

トランボを演じたブライアン・クランストンの名演が光る。
アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。
そのトランボを光らせたのは、強烈な悪役ヘッダを演じたヘレン・ミレン。
ヘッダがコラムニストとして権勢を振るった背景には、
大物プロデューサーにレイプされた過去があり、
告発を恐れる彼らは、ヘッダを優遇せざるを得ない状況にあった。
近年のMeToo運動を想起させる。

何はさておき、
改めてトランボの天才を世に知らしめる。
原作、監督も務めた普及の反戦映画「ジョニーは戦場へ行った」や、
「ローマの休日」のような王道ロマコメ作品から、
史劇「スパルタカス」、アクション「栄光への脱出」、
更には「パピヨン」まで、
幅広いジャンルで歴史的名作を物したのは驚嘆に値する。