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マンガ家Mの日常
ジョン・ル・カレ原作の本格スパイミステリーの映画化。
監督は写真家のアントン・コービン。

ドイツの秘密諜報部員バッハマンは
イスラム系テロ組織の資金の流れを追っていた。
かつてのロシアの大物カルポフの息子イッサが政治亡命で入国、
人権派弁護士アナベルが身柄を保護しようとしていた。

イッサが開こうとしていた銀行口座には父親の莫大な遺産が隠されていて、
汚れた金は知人のアブドゥラ博士を通じて慈善団体に寄付すると言うのだが、
博士から金の一部がテロ組織に流れる危険性が見込まれていた。

バッハマンはアナベルや銀行家のブルーを取り込んで、
アブドゥラ博士の策略を暴こうとするが、
済んでのところでアメリカの諜報機関にイッサも博士もさらわれる。


タイトルの「誰よりも狙われた男」と言うのは、イッサでも博士でもなくて、
アメリカの諜報機関はバッハマンの動向を常に探って、
成果の横取りをしていた、って事。

アブドゥラ博士はともかく、
イッサの本心はどうだったのかは明らかにされていない。
身体中に残る無数の痛々しい傷跡から、ロシアでの凄まじい拷問が伺えるが、
それの意味するところも定かではない。
母の形見のブレスレットをアナベルに渡すシーンからは、
別離が任務完了をイメージさせるようで、やはりテロ組織の一員だったのか。

アナベルやブルーは善意の人なのだが、
諜報機関の脅しに屈して、簡単にイッサを裏切ってしまうのが悲しい。

バッハマンを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンはこれが遺作となった。
本格派サスペンスなので、映画としてはかなり退屈なのだけど、
フィリップ・シーモア・ホフマンの演技は全編隈無く素晴らしい。
表情にも間の取り方にも、全身から深い奥行きが感じられる。
この演技でオスカーをあげたい。
ハリウッドの最高位の名優とみなされる、突き抜けた演技力。

これほどまでに優れた偉業を成し遂げる人が自殺してしまうとは、
鬱病は酷い。



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