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マンガ家Mの日常
J:comオプション解約を目指して、レコーダーに録画されている番組を整理。
見終わるか、ディスクにダビングするか、諦めるか。
なかなか追いつかないけど、
新規複合機導入に伴って、PCとTVの環境も見直す事になり、
時間的猶予はあまり無くなった。
と言うか、これを機に決着をつける。

前のレコーダーに録画していた映画については、
タイトルを見てもあらすじが思い浮かばないものもあり、
頑張って観ても、結局イマイチだったりする作品もある。
そんな中で、今作は鮮烈なる秀作。
アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされたらしい。
残念ながら受賞は逃した。


実話に基づく、ポーランド・フランス映画。


第2級殺人罪(衝動的殺人)で少年院に収監中のダニエルは、
トマシュ神父の導きを得て信仰に目覚め、
仮出所後は神学校への入学を希望していたが、
罪状により、神職の道は閉ざされていた。
代わりに製材所で働くよう指示されていたが、気が進まず、
近くの教会に立ち寄ると、祈りに来ていた少女マルタに神父の服を見せ、
自分はトマシュ神父だと嘘をつく。
教会の神父が体調不良で療養を予定しており、
療養中、ダニエルは神父の仕事を任される。

戸惑いながらも、若さで斬新な説教をするダニエルに、
村人達は次第に魅了されていく。

村では数ヶ月前に若者6人と対向車の運転手が亡くなるという、
悲惨な交通事故が発生していた。
子供を奪われた村人達は運転手とその妻に憎しみを募らせていたが、
マルタから事故の事情を聞いたダニエルは、融和の道を探る。

神父の仕事で働く予定だった製材所に行くと、
かつての少年院の入所者ピンチェルがいて、正体をバラされそうになる。
その場は何とか納めたものの、やはりその後密告され、
本物のトマシュ神父がダニエルを連れ戻しに来る。

少年院では、ダニエルに弟を殺されたボーヌスが待っていた。
ピンチェルは、大柄なボーヌスに攻撃される事を恐れたダニエルが、
信仰に目覚めたフリをして仮出所を得たと言う。
ダニエルとボーヌスは決闘する事になり、体格差で追い込まれながらも、
ダニエルが勝利する。
火災が起きて混乱する中、ダニエルは少年院から立ち去る。


犯罪者が神父のフリをする。
ハリウッド映画だったらコメディになりそうな設定。
今作でも所々にクスッと笑える要素はあるけど、全体のトーンはシリアス。

ダニエルの罪状はピンチェルの登場まで詳細不明。
(喧嘩で倒した相手が、病院で息を引き取った。)
また、ピンチェルが疑ったように、ダニエルの信仰心は偽物なのか?

仮出所前に少年院の自室で黙々と祈るシーンがあるので、
信仰に前向きな姿勢は見て取れるが、
出所後すぐにクラブでパーティーに興じたり、製材所に行かなかったり。
ちょっと微妙。
礼拝で思いの丈を述べる様子は、自らに陶酔しているよう。

何より、ダニエル役のバルトシュ・ビィエレニアが、
Wikiのプロフィール写真ではなかなかの美青年なんだけど、
今作ではいかにもな貧しい吹き溜まりの不良少年。
寂しげでありながら、疑り深そうな目線が油断できない。
そして、決闘で巨体のボーヌス相手に勝つという、ケンカ慣れの実力。

100%清廉潔白な人物などいない訳で、
ダニエルは信仰の光を見つめながらも、迷いの中にある。
その形の無さが、村人の心情に語りかける事を可能にしたのだろう。

映画の冒頭に戻れば、
まず、犯罪者は神学校入学を許可されないという事実。
どんなに更生、改心しても、元犯罪者に神の道は許されないのか。

信仰の原点を探る秀作。

ラストシーン、血まみれでカッと目を見開いて、まっすぐ歩き続ける姿が、
まるで悪鬼のような凄みを感じさせる。
ダニエルは再び、絶望と希望の綱渡りに赴く。

幸せになって欲しいと思うのだけど、そんなに単純には行かないね。
それが、取り返しのつかない殺人の罪の重さであるとも言えるのかな。
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