1912年、英国の婦人参政権運動を描いた社会派映画。
モードは幼い頃から母親に連れられて洗濯工場で働き、
男女格差による僅かな給金と劣悪な職場環境にもがいていた。
10代の頃には工場長から性的虐待も受けていた。
ある時、街中で婦人参政権運動の活動家や、
活動を弾圧しようとする警察の激しい暴力に遭遇する。
同じ洗濯工場で働くヴァイオレットの誘いもあって、講演を聞きに行き、
次第に活動にのめり込んで行く。
パンクハースト夫人を中心とした活動は50年続いていたが、成果が現れず、
投石や爆破等、いよいよ過激な手段を講じぜざるを得ない段階に来ていた。
女性活動家達は警官に容赦無く殴り倒され、逮捕され、投獄される。
投獄を繰り返す中で、モードは活動への気持ちを強く意識するようになる。
それは同時に、夫との離婚、幼い息子と引き離されるといった悲劇も含まれた。
活動がなかなか進展しない中、広く世界への発信が重要と考え、
国王陛下への直訴が検討されるが、思うに任せない。
モードの友人エミリーは自らの命を犠牲にする覚悟で、
国王が訪れた競馬場でコースに侵入し、競馬馬に衝突されて死ぬ。
その様子は撮影され、世界中に報道されて関心を集め、活動の大きな進展に繋がる。
英国で女性の参政権が限定的に認められたのが1918年で、
まさに今から丁度100年前。
女性の基本的人権が認められる動きになったのは、たかだかこの1世紀にすぎない。
映画の冒頭から、見ていて腹が立つ。
7歳から洗濯工場で働かされていたモードに学がある訳ではないが、
次の世代に繋がる悪循環を断ち切る為にも、信念を強くし、弾圧に抵抗する。
主演のキャリー・マリガンは「わたしを離さないで」でも好演していたが、
あどけなく少し田舎臭い顔立ちが、
貧しい境遇の女性の芯の強さの表現に上手く繋がっている。
人は平等に生を受けた筈でありながら、差別され、理不尽な待遇を受け、
保証されて当然な筈の基本的人権を獲得する為に、命がけで戦わなければならない。
基本的人権がいかに尊いものであるかという思いを強くした。
Wikiで見ると、日本での興行収入が極端に低い。
広く見られていないのが残念。
こうした映画は中学や高校で上映して、学生に観せると良いのではなかろうか。
原題「Suffragette」は、20世紀初頭英国の婦人参政権論者を示す言葉とある。
日本人には通じ難い。
活動の象徴となった花に焦点を当てて、邦題を設定したのだろう。
希望が感じられるタイトルで、悪くない。
もっと大きく宣伝してヒットさせて欲しかった。