すごく地味なタイトルなんで、退屈そうなラブロマンスが連想されて、
録画したのを見ずに消しちゃおうかとさえ思ったんだけど、
豈図らんや、名作でした。
根暗男の恋愛を描かせたら天下一品のパトリス・ルコント監督作品。
社長の若い妻と秘書が不倫する話、ってただそれだけなんで、
それだけ書くとくだらない事この上無いんだけど、
上質の絹の肌触りのように、しめやかな愛情のゆらめきが描かれていた。
純愛って、こういうものだよ!
鈍いヤツは壁ドンばっかりしてろよ。
時代は1912年のドイツ。
フリドリックは父を知らず、母親も早くに亡くして、後見人に育てられた。
苦学して工科大学を優秀な成績で卒業し、製鋼業に就職する。
真面目で努力家で、社長にも目をかけられて出世する。
社長のホフマイスターは心臓に重い持病を抱えており、発作で倒れる。
何とか持ち直したが、フルタイムで会社にいる事が出来ず、
フリドリックを秘書に任命し、片腕となってもらって会社を運営させる。
フリドリックは仕事の鬼のように働き、才能を発揮して業績アップに貢献する。
ホフマイスターの自宅に伺った時、夫人のシャーロットを紹介される。
夫とは親子程も年の離れた、若く優美なロットに魅了される。
フリドリックにはアパートで下働きをするアンナという恋人がいるにはいたが、
結婚したがるアンナに対して、フリドリックは全く乗り気では無かった。
ますますロットに心を惹かれていく中、
貧しいアパート暮らしを気にかけたロットが
フリドリックを自宅に住まわせるよう手配して、事が複雑になっていく。
惹かれながらも、恩ある社長の夫人にこれ以上近づいてはならないという
ジレンマに苦しむ。
ホフマイスターは人格者で、夫としても素晴らしい人だったが、
ロットはいつの間にかフリドリックに惹かれていってしまう。
若くて元気な二人が息子のオットーを挟んで楽しそうにしている様子を見て、
ホフマイスターは複雑な感情にとらわれる。
敢えて二人が一緒に居られるような配慮をしてやる。
しかし、ホフマイスターは事業拡大の為にフリドリックにメキシコ赴任を要請。
元々フリドリック自身が提案していた事業計画だけに、断れない。
ロットとの事が理由なのか尋ねるが、ホフマイスターは言葉を濁す。
フリドリックは赴任を受け入れる。
フリドリックへの思いが募るロットは手紙を書き続けるが、
もうすぐ任期が終わろうという1914年、第一次世界大戦が開戦され、
海峡は封鎖されて帰国出来ず、郵便物も返送され、完全に音信不通となった。
フリドリックの安否を気遣い、深夜パニック発作に見舞われるロット。
暫くののち、ホフマイスターは持病の悪化で他界する。
亡くなる直前、ロットに、フリドリックへの嫉妬心があった事を明かす。
終戦を迎え、フリドリックは帰国を果たし、
ロットと結ばれる。
本当に、筋書きだけ単純に書き出すと、いかにも陳腐な不倫ものなんだけど、
派手な展開も無い中で、登場人物達の心の揺れが画面から薫って来る。
計算され尽くした画面、編集、BGM、全てが素晴らしい。
まさしく巨匠の作というに相応しい芸術。
映画の制作には全くの素人なんで、具体的な説明が出来無いのがもどかしいけど、
直前に見たエンターテインメントの「パガニーニ」の印象がまだ頭に残っていて、
比べると監督の力量の差は歴然。
パトリス・ルコントの作品でしばしば見られるフェティシズムも美しい。
階段を上る時、目の前にある夫人の腰に目がいく。
うなじを撫で回すように見てしまう。
フリドリックが夫人が弾いたピアノの鍵盤の香りを嗅いでいると、
若いメイドが扉の向こうでその様子を見てしまうが、何も言わずに立ち去る。
また、純愛は残酷でもある。
フリドリックは仕事で移動中の車内から、雨宿りしている夫人を偶然見かけ、
急ぎ車を止めて夫人を中に入れて、凍えた手をさすって温める。
一方、恋人だった筈のアンナには、じきに会いに行くと約束しておきながら無視。
ある時、いてもたってもいられなくなったアンナは
フリドリックのシャツを手渡す事を口実に会いに来るが、
車で会社を出たフリドリックは、アンナが車の窓を叩くまでその姿に気づかない。
ドアを開けて話をするが、アンナを中に入れようともしないばかりか、
フリドリックはシートに背をつけたまま身を乗り出そうともしない。
この対比の残酷さ。
でも、これが純愛の本当の姿。
フリドリックは運命的な愛を感じたロットにだけしか愛情を傾けられない。
フリドリックはアンナには誘われてセックスに応じたりしていたが、
ロットとは手を触れ合うのがせいぜいで、キスさえまともに出来ないまま。
それでもお互い再会するまで愛を貫く。
原作は「ベルばら」の元ネタ「マリー・アントワネット」で有名な
シュテファン・ツヴァイクの「約束」。
ドイツが舞台の物語で、フランスの監督で、英国の俳優で、セリフは英語。
映画の中で手紙を書くシーンがあるんだけど、それも英語。ちょっと変?
世界公開の為にはそうするしかないのね。
フリドリックの根暗さを演じきったリチャード・マッデンは、
なんと、ディズニー映画で「シンデレラ」の王子様も演じてるんだって。
録画したのを見ずに消しちゃおうかとさえ思ったんだけど、
豈図らんや、名作でした。
根暗男の恋愛を描かせたら天下一品のパトリス・ルコント監督作品。
社長の若い妻と秘書が不倫する話、ってただそれだけなんで、
それだけ書くとくだらない事この上無いんだけど、
上質の絹の肌触りのように、しめやかな愛情のゆらめきが描かれていた。
純愛って、こういうものだよ!
鈍いヤツは壁ドンばっかりしてろよ。
時代は1912年のドイツ。
フリドリックは父を知らず、母親も早くに亡くして、後見人に育てられた。
苦学して工科大学を優秀な成績で卒業し、製鋼業に就職する。
真面目で努力家で、社長にも目をかけられて出世する。
社長のホフマイスターは心臓に重い持病を抱えており、発作で倒れる。
何とか持ち直したが、フルタイムで会社にいる事が出来ず、
フリドリックを秘書に任命し、片腕となってもらって会社を運営させる。
フリドリックは仕事の鬼のように働き、才能を発揮して業績アップに貢献する。
ホフマイスターの自宅に伺った時、夫人のシャーロットを紹介される。
夫とは親子程も年の離れた、若く優美なロットに魅了される。
フリドリックにはアパートで下働きをするアンナという恋人がいるにはいたが、
結婚したがるアンナに対して、フリドリックは全く乗り気では無かった。
ますますロットに心を惹かれていく中、
貧しいアパート暮らしを気にかけたロットが
フリドリックを自宅に住まわせるよう手配して、事が複雑になっていく。
惹かれながらも、恩ある社長の夫人にこれ以上近づいてはならないという
ジレンマに苦しむ。
ホフマイスターは人格者で、夫としても素晴らしい人だったが、
ロットはいつの間にかフリドリックに惹かれていってしまう。
若くて元気な二人が息子のオットーを挟んで楽しそうにしている様子を見て、
ホフマイスターは複雑な感情にとらわれる。
敢えて二人が一緒に居られるような配慮をしてやる。
しかし、ホフマイスターは事業拡大の為にフリドリックにメキシコ赴任を要請。
元々フリドリック自身が提案していた事業計画だけに、断れない。
ロットとの事が理由なのか尋ねるが、ホフマイスターは言葉を濁す。
フリドリックは赴任を受け入れる。
フリドリックへの思いが募るロットは手紙を書き続けるが、
もうすぐ任期が終わろうという1914年、第一次世界大戦が開戦され、
海峡は封鎖されて帰国出来ず、郵便物も返送され、完全に音信不通となった。
フリドリックの安否を気遣い、深夜パニック発作に見舞われるロット。
暫くののち、ホフマイスターは持病の悪化で他界する。
亡くなる直前、ロットに、フリドリックへの嫉妬心があった事を明かす。
終戦を迎え、フリドリックは帰国を果たし、
ロットと結ばれる。
本当に、筋書きだけ単純に書き出すと、いかにも陳腐な不倫ものなんだけど、
派手な展開も無い中で、登場人物達の心の揺れが画面から薫って来る。
計算され尽くした画面、編集、BGM、全てが素晴らしい。
まさしく巨匠の作というに相応しい芸術。
映画の制作には全くの素人なんで、具体的な説明が出来無いのがもどかしいけど、
直前に見たエンターテインメントの「パガニーニ」の印象がまだ頭に残っていて、
比べると監督の力量の差は歴然。
パトリス・ルコントの作品でしばしば見られるフェティシズムも美しい。
階段を上る時、目の前にある夫人の腰に目がいく。
うなじを撫で回すように見てしまう。
フリドリックが夫人が弾いたピアノの鍵盤の香りを嗅いでいると、
若いメイドが扉の向こうでその様子を見てしまうが、何も言わずに立ち去る。
また、純愛は残酷でもある。
フリドリックは仕事で移動中の車内から、雨宿りしている夫人を偶然見かけ、
急ぎ車を止めて夫人を中に入れて、凍えた手をさすって温める。
一方、恋人だった筈のアンナには、じきに会いに行くと約束しておきながら無視。
ある時、いてもたってもいられなくなったアンナは
フリドリックのシャツを手渡す事を口実に会いに来るが、
車で会社を出たフリドリックは、アンナが車の窓を叩くまでその姿に気づかない。
ドアを開けて話をするが、アンナを中に入れようともしないばかりか、
フリドリックはシートに背をつけたまま身を乗り出そうともしない。
この対比の残酷さ。
でも、これが純愛の本当の姿。
フリドリックは運命的な愛を感じたロットにだけしか愛情を傾けられない。
フリドリックはアンナには誘われてセックスに応じたりしていたが、
ロットとは手を触れ合うのがせいぜいで、キスさえまともに出来ないまま。
それでもお互い再会するまで愛を貫く。
原作は「ベルばら」の元ネタ「マリー・アントワネット」で有名な
シュテファン・ツヴァイクの「約束」。
ドイツが舞台の物語で、フランスの監督で、英国の俳優で、セリフは英語。
映画の中で手紙を書くシーンがあるんだけど、それも英語。ちょっと変?
世界公開の為にはそうするしかないのね。
フリドリックの根暗さを演じきったリチャード・マッデンは、
なんと、ディズニー映画で「シンデレラ」の王子様も演じてるんだって。
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