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マンガ家Mの日常
挑発的な作風で知られるフランソワ・オゾン監督作品。


第一次世界大戦終戦直後のドイツ。
戦争で婚約者フランツを亡くしたアンナは、フランツの両親と住んでいた。
フランツの墓参り(主人のいない墓)に行くと、
アドリアンというフランス人青年が花を手向けていた。
アドリアンはフランツが戦前にパリに留学していた時の友人で、
フランツの両親に食事に招かれて、フランツの思い出を語る。
喪失感を共有するうちに、アンナとアドリアンは次第に惹かれ合っていく。

しかし実はアドリアンはフランツとは見ず知らずで、、
兵士として戦場に赴いた時、塹壕で対峙し、撃ち殺してしまった。
悔悟の念からフランツの墓を探し出して墓参に訪れたのだった。
事実を告げて、フランツの両親への手紙をアンナに託し、フランスに帰る。
アンナは手紙を燃やし、思い出を大事にすべく、両親には
アドリアンがフランツの良き友人であったとのイメージのままにする。

若くて美しいアンナには求婚して来る男性もいたが、
フランツの両親はアンナがアドリアンに惹かれている事を察知していて、
会いに行くよう勧める。

わずかな手がかりを頼りに探し当てると、
アドリアンは裕福な家庭の御曹司で、婚約者の女性もいた。
互いに愛情を感じながらも、アドリアンはアンナに別れを告げる。

しかしアンナは暫くの間パリに留まり、フランツの両親には手紙で、
アドリアンに観光案内してもらいながら楽しく過ごしていると告げる。


1919年という時代を意識して、20年代の映像風に
セピアがかったモノクロ画面で撮影し、音声もその時代独特の響きをしている。
フランツの思い出が語られる場面のみ、少し鄙びたようなカラーになる。
なんとなく、ベルイマンの画面を思い出した。

敗戦国ドイツの側から描かれたのが印象的。
フランス人のアドリアンはドイツでは殺人者として敵対視され、
アンナはパリのレストランで、国歌を合唱する人達に怯える。
フランス国歌の「ラ・マルセイエーズ」って、結構血生臭いし。

アドリアンは、フランツを撃ち殺した事をすぐには言い出せず、
友人だと嘘をつき、自らもその嘘に慰めを見出そうとする。
アンナはフランツの両親の為にアドリアンの告白を揉み消すが、
それはアドリアンへの恋心を傷つけたくない気持ちからでもあった。

そこまでは分かり易いのだけど、最後に謎が残る。

アンナはパリでアドリアンと上手くいっているように見せかける。
果たしてそれは成就する時が来るのか?

ルーブル美術館に展示されている、
マネが若者の死を描いた「自殺」という作品の前で、
アンナはこの絵に「希望を感じる。」と語る。
アドリアンが屋敷に模写を飾っていた作品で、
アドリアンはフランツを殺してしまった自責の念から、
アンナは最愛の婚約者を失った悲しみから、
それぞれ自殺を試みた経験がある。
アンナはこの絵画に、2人の運命の絆を投影しているのかな。

ただ、アンナの想いは行き止まりで、上手く行くとは思えない。
アドリアンは親から押し付けられた婚約者よりもアンナが好きなんだけど、
名家の子息の立場上、敵対国ドイツの田舎娘のアンナと結婚するとは思えない。

「自殺」は、アンナの絶望と、
やがて実行されるかもしれない自殺を暗示しているのかもしれない。

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