名匠ダルデンヌ兄弟監督作品。
ジェニーは大病院での出世が約束されている優秀な医師。
現在は一時的に、入院中の老医師の代理で、町の小さな診療所で、
一緒に働く研修医ジュリアンがモタモタするのにちょっとイラつきつつ、
治療に当たっている。
夜間にドアのベルが鳴って、ジュリアンが出ようとすると、
ジェニーは、診療時間終了から1時間経っている事を理由に、応対を制する。
ジュリアンに対する自分の立場の優位性を見せつける意図も働いた。
自らの実力不足の自覚で、ジュリアンは医師の道を諦め、職場放棄する。
翌朝出勤すると、警察が来て、昨夜来た少女が殺害されたと知らされる。
身元不明のその少女は何者かに追われて、
助けを求めて診療所のベルを鳴らしたのだった。
もしあの時応対していれば、少女は死なずに済んだかもしれない。
ジェニーは自責の念にかられ、少女の身元について調べようとする。
大病院への転職を断り、診療所を引き継ぐ決意をする。
ジュリアンに対しても責任を感じ、研修を続けるよう説得を続ける。
女性の写真をスマホに入れて、会う人毎に尋ねて回ると、
患者の一人である少年ブライアンが反応を見せた。
少女は売春婦だったらしい。
客とのトラブルが原因で、逃げ出して、誤って事故死した。
その相手はブライアンの父親だった。
ジェニーは診療所で貧しい人達の治療を続ける。
少女の事件が無かったとしても、元々ジェニーは患者思いの良い医師だった。
そのジェニーが更に自らを律する意識を強めた、自己犠牲とも取れる美しい決意。
世の中はこうあって欲しい。
不満をこぼさず、不必要に語らず、出世欲を断ち切り、他者に尽くす。
それが出来るのはジェニーのように心が強い人だけだろうか。
我欲を捨てた時、世の中はこんなにも美しくなる。
私達はその事をジェニーと共に学ばなければならない。
蛇足だけど、
最近、日本では医師の過重労働が問題視されています。
医師と言えど、いや、人の命を預かる医師だからこそ、
自分自身もきちんと休養を取って体調を整えておかなければなりません。
ジェニーは止むに止まれぬ思いから、一時的に診療所で寝泊まりして、
どんな時間帯でも診療に応じていましたが、
それを医療従事者全てに求めてはいけませんね。
ジェニーの様子はあくまでも事件解決までの一時的な事。