ストーリー展開の説明が長くなってしまいました。
脚本のストーリー運びが良いからでしょう。
ダヴィッドはひとりずつ子供達に会いに行く。
勿論、サッカー選手のように有名になったのは例外で、
大半は夢や悩みを抱えて、勉強や仕事にいそしむ普通の若者。
ダヴィッドはちょっとした手助けで彼らを応援出来る事が分かって、
徐々に積極的に関わって行くようになる。
薬物の過剰摂取で病院に緊急搬送された女の子は、治療施設行きを拒み、
退院の為に保護者のサインが必要で、
搬送時に付き添いで来たダヴィッドに偽の父親役を頼む。
「ありがとう、パパ。」と言われて抱きつかれると、感情が揺らぐ。
そんな事を続けていたら、ある時、子供の中に
重度の障がいで施設で暮らしているラファエルという子がいる事がわかった。
施設に会いに行くがビビってしまう。
ラファエルとの関わりは、楽しいだけでは済まされない。
職員に促されておずおずとラファエルに話しかけ、その日はそのまま一緒に過ごす。
ダヴィッドの父性がどんどん目覚めてゆく。
それでも裁判も進行する。
友人の弁護士が頑張ってくれたお陰で、裁判に勝ち、
逆告訴で、病院からは賠償金を取る事も出来た。
賠償金があれば闇金の借金を返してもお釣りが来るが、
そうなると、今度は自分が皆の父親だと名乗れなくなってしまう。
悩むダヴィッドの姿をみた父親が借金の分を負担する。
ダヴィッドはマスコミを通じて正体を明かす。
世間からは非難も浴びるが、子供達はダヴィッドを理解し、喜んで迎え入れる。
ダヴィッドにとっては、恋人と結婚して産まれて来る子供の父親として
ふさわしい人間になるべく、変わる為の努力の過程だった。
無事赤ん坊が産まれて、534人の子供の父親になる。
カナダ映画なんだけど、フランス語圏で作られていて、全編フランス語。
アメリカよりもヨーロッパよりのテイストの作品。
ダヴィッドを演じたパトリック・ユアールが、なんか情けなくてカワイイ。
普段着はほぼ着古したジャージ。
兄弟や近所の友人達とサッカーチームを作っていて、ユニフォームでもめたりする。
しっかり者の恋人ヴァレリーは警官だったり、
友人の弁護士はコンプレックスを抱えていたりして、
さりげない人物描写も上手い。
肩の力を抜いて楽しんで見ていられる。
それでいて、中身が濃い。
本当に脚本や演出が上手いからだね。
前回書いた通り、ダヴィッドも、脚本も、言い訳をしないのが美しい。