楽しみにしていたウディ・アレンの話題作、
WOWOWで放送されたので早速見てみた。
ケイト・ブランシェットが本作でアカデミー賞主演女優賞を獲得している。

ウディ・アレンの作品はユーモアとペーソスに満ちている。
でも、今作はかなりシニカルで、見た後ちょっと落ち込んじゃった。
弱ってる時には見ない方が良いかも。

ジャネットは里子として育ったという生い立ちだが、
恵まれた容姿と知性で、里親にも可愛がられ、名前を自分でジャスミンと変え、
大学在学中にリッチなイケメンにプロポーズされ、
セレブに登りつめて優雅な暮らしを満喫していた。

ところが、夫は不倫三昧。
不倫旅行がバレると、親子程も年の離れたフランス人留学生と愛し合ってるから、
離婚したいとまで言い出す。
ブチ切れたジャスミンは、元々怪しげな投資会社だった夫の事業について
FBIにチクって、夫を破滅に追いやる。
結局、自分も全財産を没収され、息子にも逃げられてしまう。

行き場の無くなったジャスミンは、里子時代の妹のアパートに転がり込む。
しかし、セレブ時代のプライドが捨てきれず、周囲と摩擦を生じるし、
妹の元夫には、事業を起こす為の資金を投資させた挙句の破産で、
全額失って、離婚の原因にもなり、かなり恨まれている。

ジャスミンは何とかやり直そうとするが、つまづきっぱなし。
セレブ生活の崩壊で、精神的にも崩壊気味。

何とも救われない話。
ジャスミンは確かにセレブ気取りの嫌味な女ではあるけど、
そんなに悪い事をしたかっていうと、そうでもない。
たまたま要にいた不運。被害者だと言えなくも無いくらい。
では、何がダメだったのか？

プロポーズされた時、大学を１年残していたのに、中退して結婚してしまった。
なので学位が無く、今になって学歴を生かした仕事が出来ない。
そういう細かいところでの他者への依存心の積み重ねが人生を危うくしている。
里子だった事と関連があるのかもしれない。
他人に取り入るのが処世術として身についてしまっていた。

里子の妹ジンジャーは、感じの悪いジャスミンを受け入れてくれる気の良い女性。
そんなジンジャーをさえ、ジャスミンは
「卑屈だから負け犬の男ばかりとくっつく。」と容赦なく罵る。
でも、それも一理ある。
ジンジャーは負け犬人生に流されるがままで、努力するタイプでは無い。

登場人物の誰もが、欠陥とくだらないこだわりに縛られて、
人生を明るい方向にコントロール出来ずにいる。

結局、ジンジャーのアパートを飛び出し、行くあても無くなった。
道端のベンチに座って、意識が飛んだように独り言を吐き出す。

ジャスミンはこの後どうなるんだろう？
明るい兆しは何も見えない。
ウディ・アレンでもここまで厭世的な作品は珍しい。

２０年あまり続いたセレブ生活の意識をいきなり全て取り払うのは難しい。
映画では気楽な希望を提示してはくれない。
御都合主義の安易なハッピーエンドも腹が立つけど、
現実的なアンハッピーエンドは心を掻き毟られるよう。