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マンガ家Mの日常
天才シアーシャ・ローナン主演のアクション・サスペンス。
「つぐない」で見せた情感の濃い演技が思い出される。

ハンナはフィンランドの凍った森の奥深くで、父親と粗末な小屋でふたり暮らし。
日々、格闘技や武器の使い方等の訓練を受けている。
僅かな書物からの限られた知識しか得られないが、
父親のエリックはハンナに数カ国語の会話の修得もさせている。
ハンナが生き残る力を身につけた時、森を出て、
亡き母親の故郷ベルリンに帰る日が来る。
ハンナはその決心を固め、父親に言われたように、ある装置のスイッチを入れる。

スイッチからの信号を受信したCIAがハンナを拉致する。
ハンナは基地に連れて行かれるが、危険を察知して逃げ出す。
研究室から、自分の出生の記録を盗み出す。

ハンナは父親とベルリンで落ち合う予定。
しかし、ハンナが脱出した基地はモロッコの荒れ地にあった。
偶然通りかかった人類学研究者の一家のキャンピングカーに同乗させてもらい、
暫く共に旅をする。

CIAの暗殺者がハンナと父親の命を狙って攻撃を仕掛けて来る。
ハンナは攻撃をかわしてベルリンに辿り着き、父親と再会するが、
自分の出生の秘密を知らされて愕然とする。
10数年前CIAが遺伝子の書き換え等を行って、
精神、肉体ともに完璧な兵士を作り出そうとしていた、
ハンナはそうして作られた子供のひとりだった。
しかし実験は中止され、子供達は処分されてしまった。
エリックはハンナの実の父親ではなかったが、ハンナを救い出し、
自力で生き残れるように訓練していたのだった。

CIAエージェントのマリッサがふたりに追いつき、父親を殺す。
ハンナは傷を負いながらも、マリッサを仕留める、
かつて森で仕留めた大鹿のように。


やはり見所はシアーシャ・ローナンの表情の奥行きにある。
澄んだ青い瞳は美しいが、暗殺者の苦悩と残酷さ、冷酷さも潜ませている。

荒れ地の基地から脱出した後、ハンナは初めて見聞きする文明社会に戸惑い、
様々な人とのふれ合いを経験する、短い間で人生を取り戻すかの様に。
道中の光景も神秘的で美しい。

とは言え、個人的に正直言えば、追跡劇に終始するのではなく、
もうちょっとドラマ的な構成が欲しかった。

で、よく分からなかったんだけど、
父親は何故ハンナが森を出る時をわざわざCIAに知らせるような事をしたの?
母親の敵であるマリッサを殺させる為か、出生の記録を盗み出す為か?
それでは危険を冒す理由としては弱過ぎる。
マリッサひとり殺したところで、CIAから命を狙われるのに違いは無い。
第一、あの記録は何でペーパーで保存されているの?
今どきデータ化もされてないの?
それをハンナが見てどうなるっていうの?
実験は何で中止になったの? 何で子供達は殺されちゃったの?
中止されて、秘密にするような実験だったら、何で記録を処分しないの?
父親は何で小屋を先に出てハンナと一旦別れたの?
ハンナを守りたいのなら、身分を変えて何処かに身を潜めて
仲良く静かに暮らしてれば良かったんじゃなかろうか、
少なくともこの10数年はそう出来たんだし。
ハンナと旅してたあの一家はCIAに捕まった後、どうなったの?
ミサンガのくだりもほったらかしだよね。
ハンナがモロッコから貨物船に乗り、その後すぐベルリンに着くのは唐突過ぎ。

遺伝子操作で兵士化された少女が追っ手を始末して生き延びる、
そう言う魅力的なシチュエーションを描きたかったのはわかるんだけど、
背景の設定が追いついていないような。

今ひとつ、どうしたいのかが分からない作品でした。
シアーシャ・ローナンの成長を見せたいが為の企画なのかな。

父親役のエリック・バナはどうしても「ハルク」のイメージがつきまとうけど、
ハンナに向ける優しい目線等、なかなか良かった。
非人間的なマリッサ役のケイト・ブランシェットは完璧。



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