忍者ブログ
マンガ家Mの日常
19世紀初頭の英国の風景画の巨匠、ターナーの後半生を描いた映画。
監督、脚本は「秘密と嘘」の巨匠マイク・リー。


靄のかかったような海辺の風景画で知られるターナーは、
今作によれば、随分と偏屈な醜男だったらしい。
映画なんだから、嘘でも良いから美男子に演じさせてくれれば
楽しんで見てられるのに、と思うけれど、
時代が新しいから正確な資料も沢山残ってるだろうし、
そう言うわけにはいかないね。


英国画壇で地位と名声を築いたターナー。
しかし、実生活は地味な感じ。
元愛人との間に二人の娘がいて、元愛人は養育費を要求してくるけど、
ターナーはしみったれてて、僅かしか出そうとしない。
娘のうち一人は病気で若くして他界する。

ターナーは父親と女中との3人暮らし。
父親が画材の買い出しに行ったり、絵の具を練ったりと、助手の仕事をしている。
病気で他界すると、ターナーはしばし落ち込む。
女中はターナーの気晴らしの手慰みの相手もさせられて、
内心では恋心を抱いているが、そこまでは思ってはもらえない。

ターナーは海辺の町にスケッチ旅行に行った際、宿屋の女将とウマが合い、
女将の夫が亡くなった後、二人は愛人関係になる。
女将は献身的にターナーの身の回りの世話をする。

英国王室画壇で名声を築いていたターナーだったが、
やがて世間の好みが移り変わり、悪評が聞かれるようになる。
それでも、病に犯された晩年まで、執念で絵筆を取り続ける。


ターナーの後半生を淡々と描いた作品。
ターナー役のティモシー・スポールの息苦しいような喋り方が耳に残る。

晩年の霞みがかった絵は不評を買い、視力が落ちたのだろうと言われていたけれど、
むしろ、光や気体を科学的にとらえようと言う試みだったのではなかろうか。
中盤で、写真家に肖像写真を撮ってもらうシーンがあり、
やがて画家もスケッチの代わりに写真を利用するようになるのだろう、と語る。

マイク・リーの演出は、言葉による説明が控え気味で、味わい深い。
ただ、映画を見慣れていない観客には、長く、退屈に感じられるかもしれない。

ターナーの作品に対する後世の評価は周知の通り。
マイク・リー監督は、ターナーの作品に対しても人間性に対しても、
自らジャッジする事無く、奥行きの中に観客を誘い込む。


PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック