WOWOWのアカデミー賞特集で、公開から1年遅れで見ました。
音楽映画かと思いきや、サイコホラーな気配。
J.K.シモンズ演じるフレッチャーの顔が怖い、台詞が怖い、態度が怖い!
目のアップが怖い、顔のシワが怖い、太い二の腕が怖い、笑顔も怖い!
19歳のアンドリューはジャズドラマーを目指して、
名門シェイファー音楽学校に入学。
下級クラスで演奏していたところを、
トップクラスを率いるフレッチャーに認められ、引き抜かれる。
しかしそのクラスは鬼と化したカリスマ、フレッチャーのスパルタ地獄だった。
音程やテンポの僅かな狂いも許さないフレッチャーは
生徒に差別用語満載の罵倒を浴びせかけ、脱落させていく。
どんな理不尽にも耐えて、黙々とレッスンに励む生徒達。
フレッチャー率いるバンドは有名コンテストで優勝を重ねる。
このクラスに残り続ければ、有名バンドや老舗クラブにスカウトされ、
プロのジャズミュージシャンへの道が拓ける。
アンドリューはフレッチャーに気に入られたと思い、舞い上がるが、
フレッチャーの笑顔はレッスン開始とともに消え、徹底的にしごかれる。
このレッスンを乗り越えてこそ、チャーリー・パーカーやサッチモのような
偉大なミュージシャンを目指す道に繋がるのだ。
文字通り血の滲む練習を続け、ドラムの主演奏者の地位を掴んだ。
しかし、郊外で開かれるコンテストに向かう途中、バスがパンク。
アンドリューは急いでレンタカーを借りて会場を目指す。
僅かな遅れで会場入りするが、レンタカー会社にスティックを置き忘れ、
取りに戻って再び会場を目指す途中、無謀運転で事故を起こし、
横転した車の下から這い出して、血まみれでステージに立つ。
しかし、怪我して血だらけの手ではまともな演奏は出来ず、
ステージを離れ、学校も退学する事になってしまった。
バイトをしつつ、フラフラした生活を送りつつ、音楽を半ば諦めて
コロンビア大学入学を目指していたが、
ある時街中のクラブの演奏者の看板にフレッチャーの名前を見つけ、
聞きに入ってフレッチャーと再会する。
演奏後フレッチャーに呼び止められ、話を聞く。
フレッチャーは指導者としての思いを語り、
アンドリューをカーネギーホールでのジャズ音楽祭に出演するのバンドの
ドラマーとして誘う。
「有名音楽祭には多くのスカウトも来ている。
目に止まれば良し、しかしもしヘマをすれば、スカウトはそれを忘れない。」
フレッチャーはバンドメンバーにそう言い放って喝を入れるが、
実はアンドリューに仕掛けられた罠だった。
フレッチャーのかつての教え子が度を超えた指導の為に鬱病になり、
首吊り自殺をしてしまった件で、弁護士から匿名での意見陳述を求められ、
父親の説得もあって、アンドリューは退学させられた恨みがもたげて、
フレッチャーの体罰等について語った。
フレッチャーはそれが元で学校を辞めさせられ、復讐を目論んだ。
意気揚々とステージに立ったアンドリューだったが、
演目が渡された楽譜と違っていて、アドリブで滅茶苦茶な演奏になってしまった。
これで完全に終わりか。
廊下に出て父親に慰められるが、踵を返しステージに戻ると、
フレッチャーの指揮より先に演奏を開始し、バンドをリードする。
立場を無くしたフレッチャーが鬼の形相で迫ってくるが、意に介さず
更に次の演奏へと繋げる。
フレッチャーはアンドリューの卓抜な演奏に次第に共鳴して、
アンドリューを導く指揮をして演奏をまとめるのだった。
血まみれになってまで演奏しようとするアンドリューも凄いけど、
マジでフレッチャーの顔が怖い。性格も半端ない。
名門の音楽学校でトップクラスとなれば、生徒達も我こそは天才と信じ、
傲慢でライバル心むき出しで鼻持ちならない連中が多いが、
フレッチャーはその究極の姿。
でも、言ってる事は、本気でプロを目指す人間にとっては正しいと思える。
適当な褒め言葉で甘やかされてれば、努力を怠って伸びないし、
挫折を跳ね返す強さがなければ、プロとして生き残っていけない。
ジャズミュージシャンは天才肌に見えるけれど、
実際はスポ根的な練習の積み重ねだった。
ふとね、自分がアシスタントさん達に絵や仕上げの指導をしていたのを思い出した。
お金を貰って商業誌の原稿に携わる限りは、アシスタントも立場はプロ。
プロの芸を見せて、お金を貰える水準の仕事をしなければならない。
時々はかなり厳しい事も言った。
現実を見据えて努力して、力を蓄えた人は残るし、
そうでない人はこの仕事に不向きだから、早く辞めて別の道を探した方が良い。
スキンヘッドの鬼教官のしごきとくれば「愛と青春の旅立ち」を連想するけど、
エンディングはもっと爽やかだった。恋愛も上手くまとまったし。
今作は芸術家ものだけあって、登場人物が皆陰湿さを抱えてどっか歪んでるよね。
ライバルが降ろされた時、アンドリューの口元の片端が上がるいやらしさ。
自分から誘って付き合い出した女の子に、
「練習の邪魔だから別れる。」とか真顔で語ってるのには、何か笑えてしまった。
どこまで自意識過剰やねん。童顔のくせに、ってね。
映画としては、数々のしごきに耐え抜き、指導者の熱い心に触れて
互いを認め合ってめでたしめでたし、ってのが本筋で、
今作も基本はそうなんだけど、
何せ、再会に喜んでヘラヘラっとバンドに入るアンドリューに
致命的制裁を食らわそうとするフレッチャーの性格が怖くて、油断出来ない。
さすがに大人気ない。
そういうのも芸術家の特性の一つなのかな。
でも紆余曲折を経て、やっぱり最後の最後は和解してめでたしめでたし。
良かったね。
でもでも、きっとまたお互い罵倒し合いを繰り返すんだろうな。
エンディングに向けて、自分だったらフレッチャーにどういう台詞を言わせるか
ずっと考えながら見ていた。
雑誌によっては低学年向けだったりしたし、
それでなくても分かり易く描かなければならなかったので、
所謂お涙頂戴的な感動的台詞を書くしかないのかなぁ、と思いつつ、
何かを言わせると場面の緊張感が崩れるなぁ、と思っていたら、
まさしくその通り、演奏で締めくくられ、台詞は無いまま終了した。
そうだよなぁ。
大人向けでややコアな雑誌だったら、そういう演出も可能なんだろう。
とにかく、緊張感に支配された息詰まる映画だった。
ライティングでJ.K.シモンズの顔の皺を隈取りのように強調させたんだろう。
アップの目元の迫力もハンパ無い。
この年のアカデミー賞を始め、主要な映画祭の助演男優賞を総ナメ。
おめでとう、やったね!
音楽映画かと思いきや、サイコホラーな気配。
J.K.シモンズ演じるフレッチャーの顔が怖い、台詞が怖い、態度が怖い!
目のアップが怖い、顔のシワが怖い、太い二の腕が怖い、笑顔も怖い!
19歳のアンドリューはジャズドラマーを目指して、
名門シェイファー音楽学校に入学。
下級クラスで演奏していたところを、
トップクラスを率いるフレッチャーに認められ、引き抜かれる。
しかしそのクラスは鬼と化したカリスマ、フレッチャーのスパルタ地獄だった。
音程やテンポの僅かな狂いも許さないフレッチャーは
生徒に差別用語満載の罵倒を浴びせかけ、脱落させていく。
どんな理不尽にも耐えて、黙々とレッスンに励む生徒達。
フレッチャー率いるバンドは有名コンテストで優勝を重ねる。
このクラスに残り続ければ、有名バンドや老舗クラブにスカウトされ、
プロのジャズミュージシャンへの道が拓ける。
アンドリューはフレッチャーに気に入られたと思い、舞い上がるが、
フレッチャーの笑顔はレッスン開始とともに消え、徹底的にしごかれる。
このレッスンを乗り越えてこそ、チャーリー・パーカーやサッチモのような
偉大なミュージシャンを目指す道に繋がるのだ。
文字通り血の滲む練習を続け、ドラムの主演奏者の地位を掴んだ。
しかし、郊外で開かれるコンテストに向かう途中、バスがパンク。
アンドリューは急いでレンタカーを借りて会場を目指す。
僅かな遅れで会場入りするが、レンタカー会社にスティックを置き忘れ、
取りに戻って再び会場を目指す途中、無謀運転で事故を起こし、
横転した車の下から這い出して、血まみれでステージに立つ。
しかし、怪我して血だらけの手ではまともな演奏は出来ず、
ステージを離れ、学校も退学する事になってしまった。
バイトをしつつ、フラフラした生活を送りつつ、音楽を半ば諦めて
コロンビア大学入学を目指していたが、
ある時街中のクラブの演奏者の看板にフレッチャーの名前を見つけ、
聞きに入ってフレッチャーと再会する。
演奏後フレッチャーに呼び止められ、話を聞く。
フレッチャーは指導者としての思いを語り、
アンドリューをカーネギーホールでのジャズ音楽祭に出演するのバンドの
ドラマーとして誘う。
「有名音楽祭には多くのスカウトも来ている。
目に止まれば良し、しかしもしヘマをすれば、スカウトはそれを忘れない。」
フレッチャーはバンドメンバーにそう言い放って喝を入れるが、
実はアンドリューに仕掛けられた罠だった。
フレッチャーのかつての教え子が度を超えた指導の為に鬱病になり、
首吊り自殺をしてしまった件で、弁護士から匿名での意見陳述を求められ、
父親の説得もあって、アンドリューは退学させられた恨みがもたげて、
フレッチャーの体罰等について語った。
フレッチャーはそれが元で学校を辞めさせられ、復讐を目論んだ。
意気揚々とステージに立ったアンドリューだったが、
演目が渡された楽譜と違っていて、アドリブで滅茶苦茶な演奏になってしまった。
これで完全に終わりか。
廊下に出て父親に慰められるが、踵を返しステージに戻ると、
フレッチャーの指揮より先に演奏を開始し、バンドをリードする。
立場を無くしたフレッチャーが鬼の形相で迫ってくるが、意に介さず
更に次の演奏へと繋げる。
フレッチャーはアンドリューの卓抜な演奏に次第に共鳴して、
アンドリューを導く指揮をして演奏をまとめるのだった。
血まみれになってまで演奏しようとするアンドリューも凄いけど、
マジでフレッチャーの顔が怖い。性格も半端ない。
名門の音楽学校でトップクラスとなれば、生徒達も我こそは天才と信じ、
傲慢でライバル心むき出しで鼻持ちならない連中が多いが、
フレッチャーはその究極の姿。
でも、言ってる事は、本気でプロを目指す人間にとっては正しいと思える。
適当な褒め言葉で甘やかされてれば、努力を怠って伸びないし、
挫折を跳ね返す強さがなければ、プロとして生き残っていけない。
ジャズミュージシャンは天才肌に見えるけれど、
実際はスポ根的な練習の積み重ねだった。
ふとね、自分がアシスタントさん達に絵や仕上げの指導をしていたのを思い出した。
お金を貰って商業誌の原稿に携わる限りは、アシスタントも立場はプロ。
プロの芸を見せて、お金を貰える水準の仕事をしなければならない。
時々はかなり厳しい事も言った。
現実を見据えて努力して、力を蓄えた人は残るし、
そうでない人はこの仕事に不向きだから、早く辞めて別の道を探した方が良い。
スキンヘッドの鬼教官のしごきとくれば「愛と青春の旅立ち」を連想するけど、
エンディングはもっと爽やかだった。恋愛も上手くまとまったし。
今作は芸術家ものだけあって、登場人物が皆陰湿さを抱えてどっか歪んでるよね。
ライバルが降ろされた時、アンドリューの口元の片端が上がるいやらしさ。
自分から誘って付き合い出した女の子に、
「練習の邪魔だから別れる。」とか真顔で語ってるのには、何か笑えてしまった。
どこまで自意識過剰やねん。童顔のくせに、ってね。
映画としては、数々のしごきに耐え抜き、指導者の熱い心に触れて
互いを認め合ってめでたしめでたし、ってのが本筋で、
今作も基本はそうなんだけど、
何せ、再会に喜んでヘラヘラっとバンドに入るアンドリューに
致命的制裁を食らわそうとするフレッチャーの性格が怖くて、油断出来ない。
さすがに大人気ない。
そういうのも芸術家の特性の一つなのかな。
でも紆余曲折を経て、やっぱり最後の最後は和解してめでたしめでたし。
良かったね。
でもでも、きっとまたお互い罵倒し合いを繰り返すんだろうな。
エンディングに向けて、自分だったらフレッチャーにどういう台詞を言わせるか
ずっと考えながら見ていた。
雑誌によっては低学年向けだったりしたし、
それでなくても分かり易く描かなければならなかったので、
所謂お涙頂戴的な感動的台詞を書くしかないのかなぁ、と思いつつ、
何かを言わせると場面の緊張感が崩れるなぁ、と思っていたら、
まさしくその通り、演奏で締めくくられ、台詞は無いまま終了した。
そうだよなぁ。
大人向けでややコアな雑誌だったら、そういう演出も可能なんだろう。
とにかく、緊張感に支配された息詰まる映画だった。
ライティングでJ.K.シモンズの顔の皺を隈取りのように強調させたんだろう。
アップの目元の迫力もハンパ無い。
この年のアカデミー賞を始め、主要な映画祭の助演男優賞を総ナメ。
おめでとう、やったね!
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