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マンガ家Mの日常
ハリウッドの新帝王ホアキン・フェニックスが
アカデミー賞主演男優賞に輝いた、バットマンシリーズのスピンオフ作品。


コメディアン志望の青年アーサーは、心身を病む母ペニーと二人暮らし。
幼い頃、ペニーのBFから受けた虐待で脳の一部を損傷し、
発作的に笑い出すという症状を抱えている。
ピエロの仕事で生計を立てているが、暮らしは貧しく、
街頭で不良少年達からの理不尽な暴力等にも悩まされている。

地下鉄で泥酔した3人の証券マンに絡まれ、射殺する。
貧富の差に苦しむ民衆はピエロをシンボルに祭り上げ、大規模暴動を起こす。

ペニーが街の権力者トーマス・ウェインに宛てた手紙を読んだアーサーは、
トーマスが自分の父親だと知り、話す機会を求めるが、邪険にされる。
ペニーには妄想や統合失調症の病歴があり、
トーマスとの関係もペニーの妄想のように扱われていたが、
後日、若き日のペニーの写真の裏に、TWの署名入りのメッセージを見つける。
(アーサーと同じアパートに住む女性との恋愛シーンが、
 実はアーサーの妄想だったという設定になっているのだけど、
 この写真裏の署名も、アーサーの妄想とかいう事もあり得るのかな?)
トーマスはピエロマスクを着けた何者かに射殺される。

自分に辛く当たったピエロの元同僚を刺し殺し、
TV番組で自分を笑い者にしようとした有名司会者を、放送中に射殺。
逮捕され、精神療養施設に入所させられるが、逃走を図る。


大人しい青年が凶悪な殺人鬼に変貌する過程を描いた作品だが、
犯罪よりも、青年の孤独感が強く響く。
ゴッサムシティという架空の都市ながら、貧富の差はアメリカの今を象徴している。
映画「バットマン」シリーズにはあまり詳しくないけれど、
今作のジョーカーや、ナゾラー、キャットウーマンといった悪役達は、
共通して、貧しい環境で静かに暮らしながら、権力者によって苦しめられ、
その怒りから殺人者へと移行した。
彼らを倒すヒーローのバットマンが、大富豪の美貌の青年だというのは、
皮肉としか言いようがない。

殺人鬼が殺人を犯すのは当然犯罪として裁かれるべきだけれど、
権力者が庶民の生活を圧迫するのも、一種の殺人ではないかと、考えさせられた。
雇用者を低賃金で酷使し、にべも無くリストラし、福祉も切り離す。
徹底的に打ちのめされ、その先にどういう人生が待っているというのか。

孤独なアーサーが銃を渡された事から殺人鬼ジョーカーに変貌していく様は、
「タクシー・ドライバー」を想起させる。
TV番組でアーサーを攻め立てて射殺される有名司会者マレーを演じているのが
ロバート・デ・ニーロなのは、
名作のテーマを現代に踏襲しているというメッセージに相当する。

ホアキン・フェニックスはこの年の主演男優賞を総なめにしたが、
作品賞はノミネート止まりが大半。
ほぼ、ホアキンの独り舞台で、重苦しいテーマで、一般向けではなかった。
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