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マンガ家Mの日常
19世紀中頃、アメリカでは北部は奴隷制廃止が進んでいたが、
南部では依然家畜同然に売り買いされ、所有物として農場で酷使されていた。
ソロモンは自由黒人の身分を持ち、ヴァイオリン演奏家として生計を立て、
家族と何不自由なく幸せに暮らしていた。
ところが、奴隷商人に騙され、誘拐されて南部の農園に売り払われ、
12年間の奴隷生活を送ることになる。

アカデミー賞作品賞を受賞した映画だけど、
奴隷制について描かれた映画はこれまでにも沢山見て来たので、
作品賞という程の衝撃や感動は無かった。
とは言え、人種差別は根深く残っているし、奴隷制はホロコーストや原爆と同様に、
人類の負の遺産として語り継がれ、
折々で反省を促さなければならないテーマなのだと言える。

事実は事実としてある事だとしても、今作があまり好きになれなかったのは、
農場主達が黒人奴隷を鞭打ったり、残酷な仕打ちをしたり、レイプしたり、殺したり、
そういう場面がサディズムを呼び起こすような印象があったから。
もっと別の形で人間の残酷さを描けなかったのだろうか。

むしろ今作では、仲間の黒人が目の前で苦境にあっても助けようとしない、
黒人達の奴隷根性がいやらしく描かれていたようにさえ見えた。
長年の虐待で疲弊し、絶望しきって、奴隷根性が染み付いてしまった悲劇。
また、北部の黒人は自由で豊かな生活を謳歌しているのに、
先祖が同じ奴隷の境遇であった南部の黒人奴隷達を助けようとしていない。
結局、自分さえ良ければ良いのか?

心根の温かい白人男性の助けを得てソロモンは助け出され、無事家族の元に戻った。
そのラストシーンが終わった後、字幕で、実在の人物であるソロモンが、
奴隷制の問題について社会に訴えかける活動をした事が伝えられる。
奴隷時代を描くよりも、こうした活動について描くべきではなかったか。
無力な黒人奴隷が誠実な白人の情けで救われた、そこで終わって良い筈が無い。

ややセンチメンタルな感情でアカデミー賞作品賞が与えられたように感じる。
実際他の映画賞では、勿論受賞も多いが、ノミネート止まりも結構多い。
今作が賞から外れていたら、
今年主題歌賞を受賞した、キング牧師の活動を描いた「セルマ」は
もっと高い評価を得たかもしれないと思うと少し残念な気持ちになる。


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