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マンガ家Mの日常
実話に基づいた映画。


英国で政治ジャーナリストとして名を成していたマーティンは
政府との諍いが原因で仕事を干されていた。
そんな時、ある女性から母親の事で調べて欲しいと相談を受ける。
社会面的な内容だと見下し、一旦は断るが、思い直して引き受ける事にする。

年配の女性フィロミナは看護師として働き、良い家庭も築いていたが、
10代の頃、行きずりの恋で妊娠し、我が子を手放した辛い経験があった。
その子の行方を知りたいと願い続けて来た。

50年前、アイルランドで暮らすフィロミナは未婚で妊娠した為、
カトリックの厳しい戒律の下、家族の恥として修道院に入れられた。
満足な設備も無い中、医者も呼んでもらえずに危険な出産をさせられる。
その後はそのまま修道院で重労働の洗濯仕事をやらされ、
1日に1時間だけ我が子と会えるという生活を送っていたが、
唐突に息子は養子に出される。
修道院では収入を得る為に、子供をアメリカ人に養子として売っていたのだった。
修道院はその事実を隠す為に、書類は破棄し
子供の行方を尋ねて来た人達に情報を与えずにいた。

フィロミナと共に修道院を訪れたマーティンは、やや強引な手法を取りながら
修道院の隠された事実を突き止める。
記事にするという条件で新聞社から資金の援助を受け、二人はアメリカに渡る。
到着後、移民局に問い合わせると、あっさりと身元が判明するが、
時既に遅く、アンソニーは8年前に死亡していた。
アンソニーはマイケルと名前を変えられて育てられ、
レーガン、ブッシュ政権の下、共和党の顧問として働いた実績を誇っていた。
しかし、ゲイで、AIDSに感染し、40代の若さで亡くなっていた。

ジャーナリストとして事実を調べつくそうとするマーティンとは裏腹に、
フィロミナは子供を手放した母親としての様々な感情で揺れ動く。

マイケルのパートナーだったピートという男性を探し当てると、
マイケルは母親を探してアイルランドの修道院を訪ねていた事や、
本人の希望で修道院の敷地内に埋葬された事等を知らされる。
事実を隠蔽し、母子の対面を妨害した修道院にマーティンは怒りを露わにするが、
フィロミナは許しを与えると言う。


マーティンを演じたスティーヴ・クーガンの製作、脚本。
皮肉屋や最低なプレイボーイを演じる事が多かったけど、今作では良い人。
押しが強いフィロミナにたじたじ。
フィロミナを演じるのは大ベテランのジュディ・デンチ。
背筋がしっかり伸びて、意志の強さを感じさせる。
老年になっても女を出すのには、日本人としてはやや腰がひけるかな。

修道院が子供を外国人に売って収入を得ていたってのは怖いね。
その中に実在する有名ハリウッド女優ジェーン・ラッセルの名前まで出て来た。
よく遺族が許可したなと思う。
でも、マーティンが修道院の壁に貼られたジェーンの写真を見る事で
事態の異様さに気づくと言うエピソードが事件発覚の起点ともなるので、
この事実は外せなかった。

事実としてはかなり酷い話なのだけど、爽やかな印象で見終わる。
写真やビデオで知らされるアンソニーの穏やかな表情に救われる。

アンソニーがホワイトハウスで働く写真を見ると、
その中に取材中のマーティンの姿が映っていた。
マーティンは記憶を掘り起こし、フィロミナにアンソニーについて語る。
本当は覚えちゃいないんだろうなとは思うんだけど、
フィロミナの為に何とか話を作ったのかな。
生前の息子を知っていた人を初めて目の前にしたフィロミナの
率直な眼差しに心を打たれる。

個人的な事だけど、高校の同級生が薬剤師として一時期母と同じ病院で働いていて、
最近になってその話を知らせてくれた。
自分が知る事の無かった母の様子を教えられる、嬉しさと悲しさ。
不意に思い出してしまった。


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