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マンガ家Mの日常
詐欺犯は見せ金を用意していた。

マーク(なりすまし)は井出先生に
日本円で20億円相当の現金(ドル札)をプレゼントすると言う。
アフリカ系男性が大量の現金の束を保持している写真が送信されて来た。
その現金を運ぶのに、旅費等の費用と、税関職員に渡すマージンが必要だと言う。
当然、井出先生は振り込んだ。

後日、井出先生宅に外人男性が小型のキャリーバッグを持って現れた。
キャリーバッグの中には真っ黒な紙の束が詰まっていた。
男性がおもむろに1枚取り出し、溶剤に浸すと、
表面の黒い覆いが溶けて流れ、100ドル札が姿を表した。
そして男性は、全てのお札を処理する為にもっと溶剤が必要で、
その購入代金30万円程を請求。
当然、井出先生は支払った。

男性はキャリーバッグを持ち帰り、
処理後に井出先生の口座に振り込まれる筈だったが、
当然、一向に振り込まれず。

同居している次女がその黒い紙を1枚だけ抜き取っていた。
番組で検証したところ、
黒いコーティング方法は小・中学生レベルでも実験可能なトリックで、
当然、次女の方が持っていた黒い紙はただの黒い紙で、
溶剤に浸しても決して100ドル札が現れる事はなかった。

小・中学生レベルの実験と言われても、そんなのは私も知らなかった。
札束に見せかけて、表面の1枚だけ本物ってのは常套手段だから、
それはチェックすると思うけど。

しかし、もう全く矛盾している。
マーク(なりすまし)は、散々お金が無いと言っておきながら、
20億円分の現金を持っていた(男性に預けていた)という設定なわけで、
このお金を自分で使えば良いでしょって。
それに、いくら黒くコーティングしたところで、
20億円分の現金を一般客が飛行機でおいそれと持ち運べるものでは無い。
税関職員に賄賂渡してたら、完全な犯罪。
そして、井出先生も、男性が持参したキャリーバッグが、
20億円分のドル札が入る大きさではないと気付いていた。

でも、騙されたままになってしまった。

そして、流石にこの辺りで詐欺を真剣に疑い出す。

時すでに遅しではあるけども。

(続く。)
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英語が苦手ながらも、Google翻訳でメッセージによる会話が継続した。

マーク(なりすまし)からのメッセージは次第に熱を帯びる。
番組ではごく一部が紹介されただけだけど、

何と、「君なしでは生きられない。」って。

そして、「離婚協議中。」と。

そして、「妻は君だ。」と。

メッセージだけで、どうしてそこまで盛り上がれるんだろう。


そこで遂に、マーク(なりすまし)からお金の請求がスタート。

「離婚協議中で資産が凍結されていて、お金が使えない。」と。

で、仕事の行き来での飛行機代や、怪我の治療費等、
数万円、数十万円単位から、ボチボチねだってくる。
レディコミで稼いでいた井出先生は、それくらいならとつい気軽に応じてしまう。


いや、お金を請求してきたら、もう詐欺確定だから。


資産凍結とか、もっともらしい事を並べても、
大体が(本物は)ハリウッドのトップスターなんだから、
万が一離婚ともなれば、有能な弁護団を雇って、ガッチリ財産は守る。
お金を全く使えないなんて、あり得ない。


「仕事で日本に行く。やっと君に会える。」
そう言って再三再四、旅費や何らかの手続き費用をねだるけど、
永遠に会いに来る筈も無い。
井出先生が疑念を抱くと、
「君が疑うなら、もうおしまいだ。」と脅しをかけて来る。
メッセージのやり取りにかけた時間と感情、そしてお金。
もう引き下がれなくなってしまった。
この恋は本物だと信じるしかない、賭けるしかない。

この詐欺犯の緻密で賢いところは、
知り合ってすぐにお金をせびるのではなく、
メッセージのやり取りに十分時間をかけ、頃合いを見計らって勝負に出た事。
恋愛の深みという名のマインドコントロールに陥れられた井出先生は、
要求されるがままお金を振り込み続ける。


総額7,500万円。


貯金は底をつき、持っていたブランド品等、売れる物は全て売り、
息子に800万円出してもらい、
それでも足らずに借金して、マーク(なりすまし)に貢ぎ続けた。
借金は4,000万円まで膨らみ、日々の生活費にも困るようになった。
「明日食べる物を買うお金も無い。」とメッセージすると、
「僕だってお金が無いんだ。妻である君が何とかしてくれ。」
「日本に行くにはお金がかかる。」と、地獄の催促が延々続く。

(続く。)



番組冒頭、
国際ロマンス詐欺は、外国人が日本人をターゲットにするとある。
お金を持っている事、情にほだされやすい事、
そして、恋愛に疎い事等が、ターゲットにされる要因だろうか。

詐欺犯は井出先生のプロフィールを調べてターゲットに定めたのだろう。

ある日facebookに突然メッセージが来る。
送り主はハリウッドスターのマーク・ラファロ。
アカデミー賞やゴールデングローブ賞等に複数回ノミネートされた経験を持ち、
大ヒットシリーズ「アベンジャーズ」で主要キャラクターのハルクを演じている、
押しも押されぬハリウッドのトップ俳優。

ハイ、ハッキリ言って、その時点で明らかに詐欺と気付くべきだった。
SNSでのなりすましは横行している。

井出先生もすぐに本人だと信じたわけではない。
ところが、マンガ家である井出先生には、
大物からのメッセージを受け取って信じる素地があった。

作品のいくつかは英訳されて海外でも販売されている。
クールジャパン以降、日本のマンガを重要な文化と位置付けたイベントが
海外の格式ある会場等で催されるようになり、井出先生の作品も紹介された。
マーク・ラファロ(なりすまし)からのメッセージでは、
共演女優から井出先生がマンガ化された「源氏物語」を勧められて読んで、
感動した、との事。
こうなると、これは100%無い話だとも思えなくなる。
世界的なミュージシャンが素人のYouTubeを見てコメントし、
そこからシンデレラストーリーが始まった例だってある。

その後メッセージのやり取りが始まり、まだ暫くの間は疑っていたが、
ビデオチャットが出来た事で信用するに至った。

画面でマーク・ラファロが直接話している!

しかし、番組が調査したところによると、
これはAIの簡単な技術で、顔の画像をシンクロさせて、
あたかも画像の人物が喋っているように見せかけただけらしい。

動きのぎこちなさを見れば、ただの画像処理だと気付くと思えるけれど、
いきなり本人の顔で親しげに喋られたら、動揺しても不思議はない。

井出先生がマーク・ラファロのファンだった事、英訳された作品、等々、
詐欺犯は下調べをしており、
メッセージのやり取りにもじっくり時間を費やした。

番組で専門家がメッセージの文章を検証したところ、
英語圏の人はしないような文法のミスが多数見つかった。
番組の最後では携帯でマーク・ラファロ(なりすまし)と話すシーンがあり、
相手の英語がネイティブスピーカーではない訛りがある。
ビデオチャットの時もおそらく訛っていただろうけど、
英語が苦手な世代の井出先生に気付く力は無かった。

(続く。)

深夜、番組を見終わりました。

いやぁ〜、客観的に見てると、
どうしてこんなのに騙されちゃうのかなぁって思うんだけど、
何だか、洗脳されちゃうみたいな感じなのね。

番組は丁寧な作りだった。


少女マンガの黎明期にデビューして、
すぐさま「りぼん」で「ビバ!バレーボール」が大ヒット。
「アタックNo.1」や「サインはV」に先行しており、
少女マンガにおけるスポ根ものの最初のヒットと言える記念碑的な作品。

でも、「りぼん」での人気は長くは続かなかった。

30歳で結婚して、1男2女に恵まれるも、夫のDVに悩まされ、離婚。
3人の子供を抱えてガムシャラに働いた。
丁度その頃レディースコミックの大ブームが始まり、レディコミにシフトチェンジ。

「りぼん」連載当時の華やかさは影を潜め、陰鬱な作風になり、
稚拙に見える絵柄もあって、同業者である女性マンガ家からの評価は低かった。
でも、パワーで押し切り、徹底したエログロさは多くの読者の支持を得て、
レディコミのトップランナーの一角を担う。

おそらくその時、少し金銭感覚がズレてしまった面もあるんではなかろうか。
描けば描いただけ売れる。
当時レディコミは少女マンガより原稿料が高かった。
それは...、
少女マンガの理想を脇に追いやり、売れるレディコミを描くという、
ある意味、覚悟に沿った原稿料。

出せば売れるレディコミバブルの時代は、編集部も粗製乱造に拍車がかかった。
しかし、ブームが落ち着けば淘汰が始まる。
井出先生がその後も長く続けられたのは、
ご自身の結婚体験等から、読者目線に近く、ニーズに応える力量があったから。

この時期の働けば稼げるという自負が、詐欺犯への出費に繋がったように思える。

(続く。)



ネットニュースをツラツラと見ていたら、
ベテラン漫画家が国際ロマンス詐欺の被害に遭ったという記事に遭遇。

良さそうな結婚相手と見せかけて、
何じゃかんじゃ泣き言を並べてお金をせびるのが一般的な手口なんだけど、
何と、今回の相手は、ハリウッド・スターのマーク・ラファロだって。
いや、マーク・ラファロを名乗った詐欺。

どうして、そんななりすましに引っかかっちゃうかなぁ。
若い子がジャニーズのタレントを騙った詐欺に引っかかるのと同じかな。

記事を読んでたら、何と、今夜NHKBSで放送されるとあって、早速録画予約。


井出智香恵先生。


7,500万円程貢いでしまい、経済的に厳しい状況だとか。
…この番組で名前を売って、作品の宣伝に繋げようという目論みでもあるんだろう。
でなけりゃ、こんなみっともない事を公にはしない。
井出先生のパワフルさが素晴らしいと思う反面、
女性マンガ家はこんなロマンス詐欺に引っかかるような恋愛呆けした人種だと
思われてしまう可能性もあるのが、ちょっと迷惑な感じ。

レディコミの女王といった紹介になってるけど、
「りぼん」時代には「ビバ!バレーボール」のような爽やかなスポーツマンガや、
「あの虹をとれ!」のような、社会派の感動作を描いておられた。
一条ゆかり先生の前の「りぼん」の女王だった。