マスコミの問題についてもう少し。
前述の記者の方とは古くからの友人で、
このブログをご覧になれば、不快に思われるかもしれないのですが、
ずっと以前からのわだかまりをふと思いだしてしまったので書きます。
「スマッシュをきめろ」「エースをねらえ」等、
少女マンガの世界ではテニスは憧れのスポーツでした。
クリス・エバートのような、華やかなスター選手の時代。
編集者の方と話をすると、現在は少女マンガは週刊誌が無くなってしまって、
スポーツマンガのように連続性で面白さを見せるものは向いていない、
との事で、スポーツマンガの企画は見向きもされませんでした。
カドカワで仕事させていただいていた時に、
基本はミステリーではありますが、全米オープンを舞台にした作品を
描かせていただける幸運に恵まれ、コミックス化していただきました。
テニス関連では、読み切りで秋田書店でも1作描かせてもらえました。
こちらは残念ながら単行本収録されていません。
中学生の頃にはテニスに憧れていたものの、
両親は体育会系の部活に入るのはハナから反対だったし、
ラケット等にかかる費用を出してもらえる経済的余裕も無かったので、
テニスは憧れのお金持ちスポーツでありました。
日本のように国土が狭い国ではコートも数が足りなくて、プレー環境も不遇。
それでも、テニスへの憧れはずっと続いていて、TV観戦で、
BSやWOWOWに加入したのも、テニスの試合が見たかったから。
仕事のスケジュールの問題があると、なかなか実際の会場までは行けませんが、
日本で開催されていたいくつかの大会には足を運びました。
フィリップと知り合った時、テニスを教えてあげると言ってくれて、
年齢を考えれば、今から新しい事を始めるのは
体力的にシンドイ事ではあったのだけど、
これを逃したら一生テニスを自分でプレーする事はあり得無くなるので、
機会を作ってくれたフィリップには感謝しています。
前置きが長くなってしまったけど、何を言いたかったかと言うと、
全く只のド素人ではあるけど、ずっとファンとしてテニスに接していた、
それは確かだと言う事です。
仕事として接している記者の方々の真剣さも、
一般のファンでは分からない面が多々あると思う。
ただ、違うのは、
ファンはそこから見返りも何も求めない、と言う点。
仕事であれば、取材等を通して最終的に自分が収入を得る道を計る、
そこで、どうしてもファンとの感覚的ズレは生じる。
それが今回のマスコミ全般の対応にも出ているのだと思ってしまう。
ここで、前述のわだかまりについて。
テニスに更にのめり込んで行くきっかけになった選手がアンドレ・アガシ。
大胆なファッションとスピーディな試合運び、人懐っこい人柄等で人気を博した。
友人は記者として、17歳で日本の大会に出場する為に来日したアガシに
インタビューをした。
その時アガシは「自分はチャンピオンになる。」と明言したそうで、
それに対して友人の個人的感想は
「大風呂敷を拡げる子だな。」と言うものだった。
私からはアガシのファンだと伝えて話をしていたので、
この言葉にはちょっと引っ掛かってしまった。
「大風呂敷」とは、実力を過大評価して大袈裟に言う、といった、
あまり良く無いイメージで使われる言葉。
友人はアガシをそう判断したのだった。
アガシは翌年にはグランドスラム決勝まで進出し、
ある個人的事情が無ければ、あわやタイトルを獲る所まで行った。
その後、ATPランキング1位に上り詰め、グランドスラムタイトル8回、
レジェンドと言われる選手になった。
友人は専門の記者として、リサーチ不足だったか、見る目が無かったか、
と言う事になる。
当時、のど元まで出かかったけど、口に出せばケンカになりそうだったので
言わずにしまっておいた。
でも、ファンとしては悔しかった。
ついでに、完全なる蛇足ですが、
コミックス後書等で自分のキャラクターとして描いているのは
アガシの風貌がモデルです。
錦織君やサッカーの本田圭佑と言った人達も、
子供の頃「世界チャンピオンになる。」と学校の文集等で記している。
今この結果があるから、マスコミはそれを持ち出して絶賛するが、
ひとつ間違えば、それこそ「大風呂敷」とバカにされていただろう。
で、おそらく、そう言う選手は星の数のようにいるに違いない。
実際に結果が出るまでは散々バカにされたりもして来ただろう。
そして多くは星くずとして散って行った。
これは、日本に限った事では無いけれど、
どうしても人と言うのは卑しいもので、他人の努力を蔑んで見ようとしたがる。
そして、あっさり手のひら返し。
個人的な性分として、私の場合は、何でも長く続ける。
子供でも大人でも、趣味や習い事など、数多く首を突っ込んですぐ辞めてしまう
そう言うタイプの人も多いが、
上手い下手は別にして、私は絵を描く事をずっと続けて来た。
マンガの仕事でそこそこの結果は出てはいるが、
はっきり言って、才能が無いのは自分が一番良くわかっている。
もう出来ないかもしれないと、挫けた事も1度や2度ではない。
マンガだから、親からは反対され、友人からもバカにされて来た。
でも、ギリギリで粘って来た。泣く思いもあった。
マンガでもスポーツでも、こういう頂点の下のプロ達が世界を支えているのだ。
それが「クールジャパン」等と言われ出すと、微妙に周囲の対応が変化する。
麻生元総理も歯嚙みしてるだろう。
海外のムーブメントであるが、ブームが過ぎればまた皆手のひら返しだろう。
ブームが去ったからどうこうで、こっちはすぐに宗旨替えする訳にはいかない。
道を極めるには長い年月が必要。
引き続きその道に取り組む、後ろ指刺されているのを背中に感じながら。
蛇足だけどね、
ずっとロックやヘヴィメタルを聞いて来て、
「大人になったら聞くもんじゃない。」みたいな事を言ってる人の言葉も
度々耳にして来た。
それで、そう言う人がまたブームで聞き始めてたりするのを見ると、
なんなんだコイツは、と思ってしまうよ。
蛇足ついでにいくつか。
現在フェデラーのコーチを努めているステファン・エドバーグは現役時代
「北欧の貴公子」とあだ名されて、日本の女性テニスファンの注目の的でした。
ところがエドバーグが引退した途端、その人達は皆テニスから離れてしまった。
エドバーグのスポンサーだった企業が大会スポンサーを降りて
大会は開催されなくなってしまったし、
「テニスマガジン」の編集長さんは「雑誌が売れない。」と嘆いていました。
エドバーグファンは、只のイケメン好きで、テニスのファンじゃなかった。
蛇足で最後にもうひとつ。
Facebookって、お追従的なコメントだけ書いてれば丸く納まるんだろうけど、
そう言うのってエネルギーの無駄だと思える。
私のコメントで友人の記者は反発を感じたかもしれないけど、
私への反論と言う格好で、日頃思っていた不満等も表現出来たので、
却って良かったんじゃないかな、と思うようにもなった。
取材費が出ない、なんて言うのは会社の運営方針であって、
一般の読者や観客には関係無い事だしね。
思う所が多過ぎて、
こういう事から、マスコミの急な大騒ぎに抵抗を感じるのです。
マスコミが現場と観客とを繋ぐ重要な役割を担ってもいるので、
無くてはならない存在ではありますが、
選手を応援する反面で、識者ぶって無情に潰しもする。
長くファンでいれば、そう言うことにも負けなくなって来ます。
純粋なファンでいる事の大切さを知る今日この頃。