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マンガ家Mの日常
ヴィクとフロは熊には会わない。

童話みたいな可愛いタイトルに惹かれて、見た。

...とんでもなかった。

カナダの映画。
カナダの映画と言うと「CUBE」の恐ろしい印象があって、ちょっと離れてた。
今作はロマーヌ・ボーランジェの名前が記憶にあったので、
フランス映画だと思い込んでいた。
カナダの映画...やっぱり、とんでもなかった。

ヴィクトリアは終身刑で服役していたが、仮出所が認められ、
年老いた半身不随の叔父が住む、森の中の一軒家に転がり込んだ。
人嫌いで、外に世界に気持ちが向かない。
弟が一人いるが、正反対で、リッチで華やかな暮らしを好んで、
叔父の家とは距離を置きたい。
叔父は症状が悪化して、間も無く病院に入れられ、他界する。

ヴィクの刑務所時代の恋人フロランスが訪ねて来て、同居を始める。
ヴィクはフロに深い思いがあるが、フロは両刀で、時々はバーで逆ナンして遊ぶ。
おまけに、昔恨みを買ったジャッキーという女に殺されそうで逃げて来たらしい。

で、最後は残酷に殺されてしまう。
これが強烈に痛そう。
森の中に止まっている大きなトレーラーに目が行って、なんとなく見回してたら、
フロは仕掛けられていた熊用のトラバサミに足を挟まれる。
助けに行こうとしたヴィクも別のトラバサミに足を挟まれる。
二人して動けない。
ジャッキーは容赦しないタチだった。
森の中では助けを呼ぶ声も届かず、
ヴィクとフロは苦しみながら出血多量で衰弱死してしまう。

いやいや、何だったんだろう?

「熊」っていうのは、何かの比喩なのかな。
人生で出会う困難?
叔父の家というのが、元は砂糖の精製所だったそうで、
これは、蜂蜜に集まる熊って事?

プログラムのちっさな解説で、
刑務所帰りの二人の女性が...というようなフレーズを一応は見てたんで、
そうなんだなぁ、と思って見てたけど、
冒頭殆どそれらしい解説が無くて、分かりづらい。
ヴィクやフロがそれぞれどういう罪で服役していたのかも、最後まで分かんない。
終身刑になるって言ったら、それはかなりのもんでしょうが。
フロとジャッキーの過去に何があったのかも分かんない。

フロはヴィクより一回り若くて、外交的で、両刀でもあったんで、
近いうちにヴィクの叔父の家を出て行くつもりでいる。
ヴィクは寂しいが、快く受け入れる。
もうじき出て行こうという頃、二人でトラバサミに絡め取られて死んでしまう。
ヴィクは、フロと死ぬ時まで一緒でいられたというかすかな幸福を抱く。
何という皮肉。

ネットで他の人の感想等も探して読んでみたけど、イマイチよく分かんない。
同性愛と暴力性の映画なのかな?
カナダで同性愛がどう捉えられてるのかがまず分かんないし、
フロは刑期を満了して出所していて、
攻撃してくるジャッキーに対しても「私は償った!」と叫ぶ。
まぁ、あんまり反省してる風にも見えないんだけど、
フロは結局どうしたら良いのかも分かんないし、ヴィクもなす術が無い。

そう言えば、叔父の最期についても、
知人男性がヴィクに断りも無く入院させて、病院で亡くなったのに、
恨みがヴィクにぶつけられていた。
ヴィクの何が悪かったのかが分からない。
ヴィクを若干利用した挙句に去ろうとするフロに恨み言も言わないしね。
ただ消極的なだけでいるのも、人としては罪なのかな。
大人しくしてても、災厄「熊」は来る時は来る。

分からないこっちの無知や見方の甘さも問題なのかもしれないんだけど、
映画では、特定のジャンルにさほど関心が無い観客にも
ある程度は分かるようにしてくれなきゃって思うよね。
同性愛に関しては、あちこちに比喩的な要素が表現されているそうだけど、
だからって、何か問題提起してるようでも無い。

ロマーヌ・ボーランジェが粗野でやたら薄汚くなっている。
女優として大丈夫なんだろうかと思っちゃう。
ちゃんと綺麗に戻ってね。

恐ろしい展開とは対照的に、映像は美しい。
輪郭が飛んで、古い白黒写真に色づけしたみたいな色調の画面。
森の中の光景だけは童話的。

ああ、寝る前に見なきゃ良かった。

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