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マンガ家Mの日常
ネタバレ注意。



第93回アカデミー賞脚本賞受賞の話題作。


30歳目前のキャシーは、未だに裕福な両親と同居し、
昼間はカフェの店員として安月給で働いている。
夜になると1人でクラブに通い、泥酔したフリをしては、
お持ち帰りして手篭めにしようとする男達を糾弾する。
どんなに酔っていても、はっきり「No」と言った、と。

幼馴染の親友ニーナと大学の医学部で勉学に勤しんでいたが、
パーティで酔ったニーナは、同級生のアルに強姦される。
アルの取り巻きの男子学生達はただ笑って見ているだけだった。
ニーナは大学と警察に通報し、裁判に臨んだが、
誰もがニーナの言い分を聞き入れず、「男子学生」の味方をした。
絶望したニーナは大学を中退し、自殺。
キャシーは親友を助けられなかった悔恨から立ち直れず、同様に中退。
医師の道は絶たれた。
そうして、夜毎に傲慢な男達に制裁を加える日々となった。

ある日、カフェにかつての同級生ライアンが偶然訪れる。
ライアンはキャシーに恋心を告白。
紳士的な振る舞いに、次第に惹かれていく。
キャシーは30歳を迎え、ニーナの家族の家を訪ねるが、
ニーナの母親からも、過去を忘れて前に進むよう促される。

キャシーは、アルの結婚式が近々執り行われると知って、
改めてニーナの事件の関係者に復讐を始める。
ニーナの相談を軽く受け流したマディソンは、泥酔させ、男性をあてがう。
男子学生の味方になった大学のウォーカー学長(女性)は、
彼女の高校生の娘が襲われているかのような話を聞かせる。
しかし、アルの当時の弁護士ジョーダンを訪ねると、
彼は自分の過ちに悩み苦しみ、不眠に陥り、弁護士事務所も休職していた。
キャシーは復讐を止まり、ジョーダンを許す。

ライアンを両親にも紹介し、良い関係が築かれていた。
ところが、謝罪に現れたマディソンから、当時のパーティの動画を渡され、
恐る恐る見ると、
ニーナが強姦されている現場で笑っているライアンが写っていた。
ライアンとの関係を断ち切り、アルの独身お別れパーティーの場所を聞き出す。

ナース姿のストリッパーを装い、会場の山荘に入ると、
睡眠剤入りの酒で他の男達を眠らせ、アルを寝室に連れ込み、
プレイと偽って、手錠でベッドに繋ぐ。
ニーナの事件の復讐を告げると、アルは泣き喚き出すが、
力ずくで片方の手錠を外すと、キャシーを押さえ込み、窒息死させる。
翌朝、友人のジョーと共に、キャシーの遺体を焼却する。

何事も無かったかのようにアルの結婚式が始まるが、
キャシーは危険が及んだ場合の備えをしていた。
ジョーダンに動画を託し、キャシーが失踪したとされた場合、
警察が捜査に動くよう、手配していた。
結婚式場に警察が乗り込み、アルを逮捕。
ライアンの携帯には、キャシーからの時間設定されたメッセージが届く。


痛々しさで苦しくなる。
強姦であっても、ただの遊びであるように言い放つ学生達。
医学部の優秀な学生であっても、女性の立場は弱く、
学長は男子学生の将来ばかりを優先させた。
タイトルの「プロミシング・ヤング・ウーマン」とは、
町山さんの解説によると、「将来有望な若い女性」の意味。
将来有望な若い男性は何をしても保護され、
将来有望な若い女性は、男性の餌食とされ、追い落とされる。
キャシーは孤独な戦いに明け暮れる。

裕福な家庭で、母親は典型的な専業主婦だった事もあるのだろうが、
優雅なヨーロピアンスタイルの居間や、キャシーのロマンチックな部屋は、
両親に守られて育ったキャシーの幼さと閉鎖性を感じさせなくもない。
誰でもいつかは、現実の外の醜い世界に乗り出していかなければならない。

男性ばかり10人程いる山荘に、1人で乗り込む計画を立てた時、
キャシーは万が一を考え、覚悟を決めていた。
死後に全てが清算されるよう仕組んであって、見事に復讐が叶った。
それは、「映画」としてはスッキリするのだけど、
「現実」を思うと、やるせなくなる。
キャシーは死ぬ事でしか自らを救う道が無かった。
誰か、キャシーの行動の真意を受け止め、寄り添ってやれなかったのだろうか。
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