アメリカで話題となったTVドラマ。
年末年始、ケーブルで一挙放送をしているので、録画して見る。
「全米で話題騒然!」とかって煽りがあっても、
たった1シーズンで終了してしまったようなのも結構あるので、
過度の期待は禁物なんだけど、今作はなかなかキッツイ。
舞台はニューメキシコ州アルバカーキ。
アメリカの典型的地方都市で、何にも無い。
メキシコと近い事から、麻薬密売が多く行われているらしい。
主人公のウォルターは、50歳の誕生日を迎えようというオッさんで、
50歳といえばトム・クルーズやブラッド・ピットだってそれくらいなんだけど、
こっちは高校で化学を教える貧乏教師で、お腹もダブついて、サエ無い。
教師の稼ぎだけでは家計が苦しいので、ガソリンスタンドでバイトもしている。
生徒の車を洗車する羽目になり、鬱屈が溜まっている。
元々はノーベル化学賞の研究チームに居た事がある程の優秀な科学者だった為、
プライドが余計に彼を苦しめる。
ある時、バイト中に倒れ、検査でステージ3の肺がんが見つかった。
リンパに転移していて、手術は出来ず、放射線治療でいいとこ延命2年。
義妹の夫、タフガイのハンクは麻薬捜査官で、
ウォルターは麻薬取引の現場を見聞きして、大金が動く事を知り、
家族の為に短期間で高額の金を残す為に、麻薬の製造を決意する。
高校の元教え子でドラッグディーラーのジェシーと手を組む。
そっから、完全にブチ切れ人生がスタート。
麻薬を作って街で売れば良い、という単純なものではなく、
ギャングやマフィアと芋づる式に繋がって、癌より危険な毎日。
まさしく、蛇の道は蛇。
金儲けを焦るウォルターはジェシーに危険な取引を要求する為、
ジェシーはギャングから半死半生の目に合わされる事もある。
ウォルターは新しい治療を受けて、やや良い方向に向かうが、
高額な治療費代も稼がなければならない。
麻薬の事は当然家族に言えず、不審な様子に気づいた妻と仲違い。
家族の為を思って始めた筈が、次々裏目に出てしまう。
今まだシーズン3の途中なので、後半どうなるかはこれから。
地味なオッさんがいきなりブチ切れるって言うと、
「アメリカン・ビューティ」を連想する。
ドラマのトーンとしては「ソプラノズ」かな。
ウォルターは危険な世界に足を踏み入れて、生き生きとして積極的になって来る。
傲慢さ、強引さ、内に秘めていた残忍さも現れ出す。目つきが怖い。
「家族の為」を繰り返すが、それだけでは語れない。
妻のスカイラーは夫の真実を知って、離婚を考えるが、息子には夫の事を言えない。
スカイラーもまた「息子の為」とだけ繰り返すが、
言外の様々な感情が秘められているように思える。
夫婦の真意はセリフだけでは推し量れない。
ウォルターは家族に何も言えずにいたせいもあってか、
パートナーとなったジェシーに次第に親近感を抱く。ジェシーも同様。
この二人の関係性がドラマの中心軸。
ストーリーを一言で言えば、
麻薬製造で一攫千金を狙ったが、思ったより道のりは険しかった、
という感じなのだけど、
登場人物それぞれが説得力を持って緻密に描かれているので、
こうして文章に書き出すとひたすら長くなる。
各自の悩み等がじっとりと描かれ、気持ちがかみ合わなくなり、
その為、展開のテンポが遅くなる面もあるように感じられるが、
何事も単純ではないところにツボがあるのかもしれない。
頑張ってラストのシーズン5まで見終わったら、また書きます。