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マンガ家Mの日常
PC作業に疲れたので、ハズレがないと思われる話題作を見る。

実話なんだって。
1984年ロサンゼルス五輪、レスリングで金メダルを獲得した兄弟と富豪の話。
ほぼこの3人の人間関係だけで話が展開していく。


ロス五輪から3年後、金メダルを獲ったものの世間の記憶は瞬く間に風化して、
満足な援助も仕事も無く、シュルツ兄弟の弟マークは世界選手権を控えて、
小学生相手の講演で小金をもらって食費に当てる厳しい生活を送っていた。
「偉大なるデイヴ」と呼ばれる兄デイヴは妻子持ちで、
選手兼コーチとして働いていた。
両親が早くに離婚した事から兄は弟の面倒をよく見て来ており、
しっかり者の兄はややナイーヴな弟を今も支えている。

ある日、デュポン財閥の秘書からマークに電話が入る。
レスリング好きなデュポンはマークの競技生活を支援したいと申し出る。
デュポンは兄のデイヴの参加も希望したが、デイヴは家族の為に転居を拒んだ。

デュポン家の敷地内に住宅と練習場が設置され、
マークを含めて10名程の有望な選手が招集されて練習に励む毎日を送った。
2ヶ月後の世界選手権ではマークは見事に金メダルに輝く。

デュポンの執着は次第に度を越すようになって来た。
マークに対して、支援者と選手以上の親密な関係を望むようになる。
支配者、偉大なコーチ、家族。
マークはデュポンから教えられた酒とコカインを常用するようになり、調子を崩す。
デュポンはデイヴをコーチとして呼び寄せる事に成功し、
レスリング協会に支援する形で、ナショナルチームをマーク達と共に合宿させる。
しかしマークの調子は回復せず、かろうじて五輪予選は突破したが、
ソウル五輪では惨敗。

デュポンのチームを外れる決心をしたマークだが、
デイヴはマークの生活を心配して、自分がデュポンのチームに残っている間は
マークにも給料が支払われるよう交渉する。

デュポンの関心はデイヴに移るが、しっかり者で家族持ちのデイヴは
仕事とプライベートをきっちり分けて、容易にデュポンになびかない。
たまりかねたデュポンはデイヴを射殺してしまう。

逮捕されたデュポンはその後獄中死。
マークはプロレスラーになった後、地元でレスリングのコーチをしている。


デュポンの母親が貴族的、支配的な厳しい女性で、
デュポンは過度に押さえつけられた人生を送らされ、友人も持てずにいた。
遺伝的な要素と孤独からシュルツ兄弟に固執した。
母親の趣味が乗馬で、敷地の通称にもなっている「フォックスキャッチャー」は
デュポン家代々の伝統的な趣味でもあったキツネ狩りに由来する。
レスリングを反対され、乗馬を好きになれなかったデュポンは
母が他界すると厩舎の馬を全て解き放ってしまった。

デュポンを演じるスティーヴ・カレルはおバカコメディで有名な俳優だけど、
シリアスな演技で、瞬きもしない死んだ魚のような目が不気味。
何の目的があってか、機銃付きの戦車を自宅に買い入れる。
デュポン自身がいつ暴発するともしれない恐怖をはらんでいて、
映画全編、冷えた空気を醸し出している。
マークが暮らす部屋は邸宅らしいクラシックで可愛らしい装飾だが、暖かさは無い。

マーク役は筋肉イケメン、チャニング・テイタム。まさにはまり役。
選手としては一流だけど、ちょっとアホっぽくて幼さが抜けきれない。
映画の中では27歳ながらGF.の存在も描かれない。

デイヴ役のマーク・ラファロはこの数年ヒット作に恵まれて絶好調。

二人ともレスリング選手らしく、いかつい肩で猫背でガニ股歩きが板についてる。

Wikiを見ると、デュポンは妄想型精神分裂病を患っていたとある。
その心の闇にはまってしまったシュルツ兄弟の悲劇。
分裂病と途方も無い財力、一方で恵まれないアマチュアスポーツ選手。
そのどちらとも接点の無い立場から見ると、不思議な世界。

デュポンは少年時代、運転手の息子がただ一人の友人だったけど、
実は母親が金で雇っていただけだった。
そういう人間関係しか作り方を知らない。
むしろ、それが当然だと思い込んでしまった。

「ルードヴィヒ 神々の黄昏」を思い出した。
ルードヴィヒ2世が城に招いたシェークスピア俳優を寵愛するのだけど、
お気に入りのロミオを演じていなければ途端に怒り出す。

支配しようとまで思わなければ、信頼を得られた筈だったのに。


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