忍者ブログ
マンガ家Mの日常
ジョージ・クルーニー主演のファミリードラマ。

マットはハワイのオアフ島で弁護士として働いている。
ある日、妻のエリザベスがモーターボートのレース中の事故で
意識不明の重体となり、23日間生命維持装置に繋いでいたが、
尊厳死を望むエリザベスの意思を尊重して、装置を外す事となった。
装置を外せば、余命数日と見られる。
マットはハワイ島の寄宿学校に行っていた長女を呼び寄せ、事実を告げる。
次女はまだ10歳なので、真実は告げられないが、
母親が意識不明の寝たきりで、情緒不安定になっていた。

マットは長女から、エリザベスが浮気していた事を知らされる。
エリザベスの親友夫妻に問いただし、浮気相手を突き止める。
エリザベスはマットと離婚して、その男と再婚するつもりだった。

マットはこの数日間が山場のもう一つの問題を抱えていた。
曽祖母はカメハメハ大王の末裔で、広大な土地を子孫に残した。
しかし、法律が変わり、土地の独占的な所有が認められなくなった為、
親戚と共同で、土地を開発業者に売りに出す計画を立てていた。
その契約が数日後に迫っている。
マットが責任者として最終的な決定を下さなければならない。

エリザベスの浮気相手ブライアンは、妻子持ちで、離婚などする気は無かった。
おまけに、マットの土地の売買候補の開発業者の社員でもあった。
ブライアンは土地絡みでエリザベスに近寄った訳ではなかったが、
浮気の苦さは、マットが土地の売買について再考するきっかけとなった。
マットは先祖伝来の土地を売らずに、
自然のまま保存できるよう道を探る決意をする。


話の主軸としては、
マットが父親として二人の娘との関係を構築し直すところにある。
土地から得られる様々な収入があったので、もっと贅沢出来る筈だったが、
マットは子供達の教育の為にも、
弁護士としての自分の稼ぎだけで出来る生活を大事にしていた。
エリザベスはそれが物足りなかったらしい。父親にも愚痴ってたらしい。
それが浮気に走った原因なのか?
また、以前のマットと娘達の関係性がはっきりしないので、
エリザベスの事故の前後で、
肝心の関係性がどう変化していったかが伝わって来ない。

冒頭、「本土の友人達はハワイは楽園だと言うが、悩みは沢山ある。」
といったマットのナレーションが入るが、
ハワイが気候温暖で暮らしやすくて、自然が豊かなのには違い無いし、
マットはちゃんとした暮らしが出来ている。
長女の私立の寄宿学校の授業料で35000ドルも支払っている。
おまけに、カメハメハ大王譲りの広大な土地があって、
そこから大きな収入を得られてるんだから、説得力が全くない。
土地の売買が悩みだなんて、おっとっと、って感じだよ。
マットの一族の名字からして「キング」だもんね。
エリザベスの死は10代の娘達にとっては悲劇だが、
本人は遊び倒してて、その遊びの途中の事故なんで、大して同情は出来ない。
設定では退屈な夫だったのかもしれないけど、
何せミスター・ハリウッド、ジョージ・クルーニーだからねぇ...。
娘達もやや反抗期気味ではあるけど、根は真面目で素直な良い子。
このナレーションが無ければ、もうちょっとマシだった気がする。

母親が亡くなって以後、特にまだ10歳の次女は辛い。
父親が頑張っても、埋められないものがある。
現実はそこから精神的苦難が始まる。
これでハッピーエンドっぽく見せるのは、どうにも作りが甘いと思える。

浮気相手のブライアンは小心者で、エリザベスの見舞いにも行かない。
マットは浮気のことをブライアンの奥さんには黙っているが、
コテージからの帰り際に、奥さんに濃いめのキスをする。
奥さんはそれで、何か変だと気づく。結局知らせてるやん。
ブライアンに自分の妻を寝取られたから、その腹いせで、
奥さんにキスをする事で陵辱した訳で、
何の罪もない奥さんに対しては随分失礼な行為。
それに、フツーの男だったらこういう事出来ないでしょ。
マットも女たらしな時があったんじゃないかって思えてしまう。
後味を良くしたいんだろうけど、
夫の代わりに浮気相手の女の病床を見舞いに行く奥さんって、
そんな綺麗事、あるかね?

土地の件についても、マットが土壇場でいきなり売買を中しても、
大勢の親戚達は皆快く支持してくれる。
マットに最終的な決定権があったからってのもあるだろうけど、
売買で入るお金をあてにしてた人だっていたんじゃないかな。
反論や揉め事があってしかるべきでしょ。

シリアスになりがちな一家に対して、
長女のイケメンB.F.のシドは物言いが率直で小気味良い。
マットの義母の認知症を笑い飛ばし、義父の暴言にも一番に反論する。
重くなるばかりのドラマが、シドの存在に救われている。

邦題の「ファミリー・ツリー」は、この家族のドラマとしては
あまり合っていないように思えるけれど、
原題の「The Descendants」は
「子孫」とか「先祖伝来の」とかいった意味なので、
日本向けに分かり易く上手く訳していると言えなくも無い。

エリザベスの浮気と事故による死、残された父親と娘達との繋がり、
そういった個の家族の問題が、
一族の土地の問題とあまり噛み合ってないところに難があった。

甘ったれた登場人物達、甘ったれた展開。
各賞を受賞したり、高評価だったみたいだけど、
なのがそんなに良いのかよくわからない。


PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック