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マンガ家Mの日常
1990年公開、実話から着想を得た、フランスの社会派映画。
「ポネット」のジャック・ドワイヨンの監督、脚本。
映画祭の受賞作品シリーズの枠組みの中で放送されたのかな。


14歳の少年マルクはアルコール依存症の母親と継父との3人暮らし。
家庭にも学校にも居場所を感じられず、非行に走りがち。

ある日、母親宛の電話に出ると、電話の向こうの相手は
離婚した父親に付いて行った姉ナタリーだった。
それまで姉の存在を知らされておらず、
母親への反発もあって、家出して姉に会いに行こうと決意。
継父の銃を持ち出し、ドラッグストアに強盗に入り、500ユーロ奪う。

直後に顔見知りの刑事ジェラールに声をかけられると、銃で脅して、
車でナタリーの所に連れて行くよう命じる。

居場所を突き止めて会うが、ナタリーは迷惑そうな態度を取る。
ジェラールは職務上マルクを警察に連行しなければならないが、
その前に姉弟で話をするよう勧める。
ナタリーは次第にマルクに心を寄せるようになる。

自首するつもりだと行っていたマルクだったが、街に戻ると、逃げ出す。
身分証の名字を、継父から、姉と同じ名字に変えようとするが、
学校では受け付けてもらえない。
ナタリーは友達の家にいるマルクを見つけて、
ジェラールのアパートに連れて行き、一晩過ごすと、
翌朝、ジェラールはマルクを警察に連れて行く。


冒頭の会話にすぐには乗れなくて、どうなのかなぁと思いつつ観ていたが、
次第にマルクやジェラールの心情がジワジワと迫って来る。
社会経験が乏しい年齢のマルクは、短絡的に飛行に走る。
刑事のジェラールは隙を見て簡単にマルクを逮捕する事が出来ただろうけど、
マルクの罪が重くならないよう、気持ちを落ち着かせる事を優先させる。

マルクがジェラールの優しさに気付くまでには少し時間がかかる。
穏やかに話し合える大人が日常的に側にいてくれたら、
マルクの人生は違ったものになっただろう。
マルクに逃げられたジェラールは、自分の不手際に落ち込むが、
罪人を逮捕するより、罪人を作らない方向を心がける姿勢がどこまでも優しい。
マルクに限らず、巷の非行少年達の複雑な生活環境を思えば、
浅はかな行動を一方的に責め立てるのも酷だろう。

現実をまだ把握しきれていないマルクは、高級車の話をしたり、
もう1人、里子に出された妹との再会を望んだりと、妄想に浸っている。
映画はそこで終わる。
警察に連行されたマルクが、その後どうなったかは描かれていない。
寂しげなジャズのBGMが切ない。


前に観た「聖なる犯罪者」でもそうなのだけど、
アメリカ映画的な分かり易いハッピーエンドではない映画を観ると、
色々考えてしまうので、誰かと話したくなる。
でも、映画作品が溢れかえっている現代では、
同じ作品について語り合える相手を見つけるのは不可能に近い。
ちょっと寂しい。

ナタリー役のクロティルド・クローは、女優としてのキャリアを築きつつ、
実生活では旧イタリア王族サヴォイア家の長男と結婚し、
ヴェネツィア=ピエモンテ公妃になっている。
映画よりドラマチックだなぁ。



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