忍者ブログ
マンガ家Mの日常
以前から気になっていた映画。
2時間12分の長尺を頑張って見る。

あ、「ブラック・スワン」か!
って、こっちの方が公開はずっと早いから、こっちがオリジナルだよね。

ウィーン音楽院の教授エリカは、ピアニストとしても教師としても
実力を高く評価されている。
映画の設定では39歳だそうなんだけど、
主演のイザベル・ユペールはこの時40代半ばなんで、もっと老けて見える。

とにかく、中年になっても母親とふたり暮らしで、過干渉されている。
その母娘関係が不気味。
こじんまりとしたアパートだからってのはあるかもしれないけど、
母親と一緒のベッドで寝てる。

父親は精神疾患を煩っているらしいが、映画の中では現れる事無く、
母親がひと言「死んだと連絡があった。」と言うだけ。
エリカはそれについても何も反応しない。
尊敬するシューマンやシューベルトらも、精神疾患だったらしい。
エリカは自分にも父親の精神疾患が遺伝しているかと恐れているのかもしれない。

エリカは母親に干渉され過ぎて、かなりおかしくなっている。
顔は能面のようにこわばったままで、素直に笑う事も出来ない。
髪型も服も母親の地味なお仕着せで、ちょっとでも華やかなのを買うと
母親が勝手にクローゼットを漁って処分してしまう。

エリカは母親によって去勢された状態。
生理も早くに止まってしまったのか、まだあるように見せかける為に、
バスルームでカミソリで自分の股間を傷つけ、出血してみせる。
さすがに理解し難いわ。
当然結婚していないし、男性経験も無いのではと思える。
反動で、街のポルノショップで個室ビデオを見てたり、
ドライブイン・シアターで、車の中でいたしているカップルを見て興奮して
何故か排尿してしまったりする。
感覚がズレてしまってるのを自分でどこまで分かっているのかも不明で、
既にコントロール出来ていない。

昔流行った言葉で言うところの母原病。

こういう精神状態で、芸術性の高い演奏が出来るものなのか?

サロンでの演奏会で若い男性ワルターがエリカに一目惚れして
熱心にアプローチして来るのだけど、エリカはまともな対応が出来る筈も無い。
暫く拒絶した後、受け入れようと試みるが、
ビデオ等で仕入れたセックスの知識をそのまま適用しようとするもんだから、
ワルターは気持ち悪くなって、エリカを遠ざける。
まぁ、この辺りのエリカは、もうぶっ飛んじゃってる。
ワルターが女子学生にちょっと優しくすると、嫉妬して、
その女子学生は自分の教え子で、将来有望なピアニスト候補であるにも関わらず、
彼女のコートのポケットにガラスの破片を入れて、手を傷つけたりする。
また、セックスの妄想用のロープなんかを集めて、
箱に入れてベッドの下に隠してたりする。
押さえが利かないのもだし、やる事にも幼児性が感じられる。

結局、ワルターはエリカから逃げ出す。
ワルターを受け入れようと頑張ってた時は、いつもまとめてる髪を降ろしたり、
お化粧したり、カワイイ服を着てみたり、
変化の兆しを見せてはいたので、上手くいかなかったのは可哀相な気もする。
普通なら中学生くらいで経験する失恋や恋愛妄想を、
もはや後戻りの出来ない中年まで引きずってしまった。

エリカはワルターを刺し殺そうとしてか、ナイフをバッグに忍ばせて行くが、
サラッと通り過ぎられて、手出し出来ず、
感情の高ぶりで自分の胸を刺して傷つける。

何かもう、サイコ・ホラー。

クラシック音楽の場合、ものになる為には幼い頃からの徹底した訓練が必要で、
親はお金も労力も半端なく子供に注ぎ込む。
子供は自分の分身か、作品。
その極端な親和性の強さから、こうした物語が生まれるのだろう。
現実はどうだか知らないけどね、
身近な人達を見る限りでも、音楽で繋がった親子はかなり仲が良い。
良い方向にだけ効果が現れてくれていると良いんだろうけどね。



PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック