物語。

少年の顔には　生まれて間もない頃に事故で負った大きな傷跡がありました。
両親は日々豊かな愛情をもって少年を育て、
少年はのびやかな心と健康な身体を持って、すくすくと成長していきました。

街の人々は少年に初めて会った　その一瞬だけは
大きな傷の痛みに耐えた少年への同情を隠しきれないのですが、
少年の心の逞しさや明るい性格に惹かれ、
誰もがすぐに打ち解けて、家族ぐるみの楽しい近所付き合いとなりました。

少年はまた、友人に囲まれて　実りある学校生活も送りました。

両親はインターネットで高度な整形外科治療について調べました。
国の手厚い保険制度があるので、
少年の傷跡は無償で治療可能のようです。
発育途中の手術には　皮膚の形成等の問題があったので、
成人年齢に近づいてから　改めて手術を検討しました。
　
世の中には　傷跡を含め、外見で人を判断するような人はいなかったので、
少年は手術が必要だとは考えてはいませんでした。
でも少年は、両親がかつて事故から少年を守りきれなかった後悔の念を
心の奥底に秘めていたのに気付き、
両親の心の痛みを癒す事ができるならば、と
手術を受ける事にしました。

手術は滞り無く終了し、
すぐに元通りの日常が帰って来ました。

終わり。