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マンガ家Mの日常
ネタバレ注意


ピエール・ルメートル最新刊。
「その女アレックス」のカミーユ・ヴェルーヴェン警部が再登場する。
文庫で200ページ程の中編作品。

これまでのシリーズで、残虐な殺人事件を描いて来たけど、
今回の被害者は軽傷のみ。


工事現場で爆発が起こり、負傷者が出た。
犯人の男ジョンが警察に出頭し、
1日に1個ずつ爆発するように、計7個の時限爆弾をセットしたと告げる。
勾留中の母親ロージーの釈放と、自分達母子2人の逃亡を条件に、
爆弾の設置場所を知らせると言う。
話す相手にカミーユを指名。
交渉は難航する。

郊外の幼稚園に設置されたと言う爆弾は、
指定の午前9時には爆発しなかった。
5発目として設置された爆弾は、地下の点検日と重なり、発見される。
戦時中の不発弾を利用した爆弾は、古さの為に不発に終わるかもしれないが、
死傷者を出すわけにはいかず、
カミーユはジョンの要求を受け入れる形を取る。
政府と警察は、爆弾の在り処を掴んだら、直ぐにジョンとロージーを逮捕、
もしくは暗殺するだろう。

ジョンは、ロージーを連れて、
指定の空港ではなく、公園に向かい、
あらかじめ仕掛けていた爆弾で、2人で爆死する。

ジョンは、他には爆弾を仕掛けてはいなかったとカミーユにメールしていた。
これまでに爆発した爆弾は、死者が出ないように設置し、
5発目は、爆発日の前に発見されるように計画していた。

息子を溺愛する母親ロージーは、
自分と息子の間に割って入る人々を次々殺害していた。
カロルを車で跳ねた容疑で拘留されていた。
ジョンは、最愛の恋人カロルを殺され、母と共に死ぬ道を選んだのだった。


「その女アレックス」の衝撃を超える作品を提供するのが
困難であるのは当然ながら、
やはり、今作は予定外の中編という事もあって、物足りなさは否めない。
カミーユのシリーズは3部作で完結していて、それ以上書く予定は無く、
今作は出版社からの依頼を受けてのものとか。

ジャンルとしては歴史物とも言える「天国でまた会おう」のシリーズを
執筆中という事でもあり、
ルメートルの興味が、猟奇殺人事件から離れつつあるのかもしれない。
それは、ミステリー読者には少々残念な方向だけど。
いつかまた別の設定でミステリーの新作が出る日を待つばかり。

今作は、前述の通り、ミステリーとしてはやや物足りなく、
途中でジャンの目的が読めてしまう。
ただ、ルメートルの狙いは、謎解きではなく、
母子の悲劇的な心理描写にあったのだろう。
小説として面白くないわけではなく、
爆弾事件からの母子の関係性への流れがスマートで、読ませる。


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