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マンガ家Mの日常
ネタバレ注意


ドイツ、フランスの社会派映画。
もっとサスペンス的なタッチかと思ったけど、ちょっと違った。


ネオナチによる移民排斥の暴力行為が激化するハンブルグ。
クルド系移民のヌーリは麻薬の売買で逮捕され、
4年間の服役の後、旅行代理店を経営。
ドイツ人女性カティヤと結婚し、一人息子ロッコに恵まれ、
家族三人で幸福な生活を送っていた。

ある日、カティヤがロッコをヌーリに預けて女友達と出掛けた後、
ネオナチの女性が仕掛けた爆弾で代理店が爆破され、ヌーリとロッコは即死。
カティヤは浴槽で手首を切って自殺しようとするが、
弁護士からの電話で、
カティヤがロッコを代理店に預ける時に若い女性を見かけて声をかけたという
目撃証言を元に、
ネオナチのメラー夫婦アンドレとエッダが容疑者として逮捕されたと知らされ、
気持ちを取り戻す。

息子アンドレのネオナチ活動に憤りを覚える父親の通報により、
メラー夫妻宅のガレージでは、犯行に使われた爆弾と同じ材料が発見された。
しかし、ガレージには他の人間の出入りも可能な事や、
カティヤの薬物使用で目撃証言が不確かと判定されるなどして、
メラー夫妻は無罪放免となり、国庫から補償金を受け取った。

カティヤはギリシャに旅行中のメラー夫妻の居場所を突き止め、
彼らが使用したのと同じ手製爆弾を作り、爆殺を試みるが、直前で止める。
ハンブルグに帰ろうとした頃、弁護士から控訴期限についての連絡を受ける。
誠実な弁護士ダニーロは上告への強い意志を示す。
しかし、カティヤはメラー夫妻がいる浜辺のキャンピングカーに引き返し、
二人が中に戻ったのを確認して、自ら爆弾を抱えて入り、自爆する。


救われない展開。
監督と脚本を手がけたファティ・アキン自身がトルコ系移民で、
こうしたケースを数多く見て、心痛が根底にあった。

原題「Aus dem Nichts」をグーグル翻訳にかけると、
「何もないから」と出て来た。
邦題「女は二度決断する」の方が、意志の強さが感じられて良い。
二度の決断とは、二度爆弾を仕掛けた事を指すのかな。

人の命を奪う事への恐怖と罪悪感から、一度は爆破をやめたものの、
上告しようというダニーロからの電話が、逆にカティヤに絶望を引き寄せた。
決定的な証拠が無く、控訴してもまた無罪になる可能性が高い。
裁判で疲弊して、仮に勝てたとしても、夫と息子は戻っては来ない。
最終的に、自分には「何もないから」と、復讐を決行した。

カティヤは電気工学の知識があり、遠隔操作で爆発させる事も可能だった。
しかし、自ら爆弾を抱えて自爆に向かう様子は、
イスラム系テロ組織の自爆テロとダブる。
ある意味、アキン監督は、自爆テロの精神的背景にも言及しようとしたのか。

カティヤが血に塗れるシーンが二箇所ある。
この「二度」の方が、「二度の決断」に近いのかな。

手首を切って自殺しようとしていた時に、電話に気づかされ、
浴槽から出ようとすると、流れ出た自らの血に全身を覆われていた。
出産時の赤ん坊の姿を想起させられる。
事件から後、精神的ショックで生理が止まっていたが、
ギリシャで一旦メラー夫妻の爆殺を思いとどまった後、
緊張がほぐれたのか、急に出血した。
(流石にこの感覚は、男性には分かり難いだろうね。)
この二つの血は、画面こそグロくても、人間の再生の兆候としての意味を持つ。
特に、生理の出血は、新しい人生への希望を感じさせたが、
カティヤにはその気力が失われていた。
残念な結末。

個人的には、
容疑者を逮捕しながら、確実な証拠固めを出来ないまま起訴して、
あっさり裁判で負けてしまった、ドイツの警察、検察は、何してるんだろうと、
そればっかりが気になった。
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