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マンガ家Mの日常
実在の人物に着想を得た映画。

セシルは綿花畑で奴隷として働かされていた一家の息子として育つが、
母親は農園主に繰り返しレイプされて正気を失い、父親は無残に撃ち殺される。
気の毒に思った農園主の老母がセシルをハウスニガーとして使う。

ボーイとしてのマナーをいくらか習得したセシルは、農園を出て、
放浪後、ホテルの給仕の仕事にありつく。
当時、給仕は黒人を使うのが流行りだった。
上司に良く従い、仕事の腕を上げて、良い家庭も持つようになる。
ホテルを訪れた官僚の目に止まり、ホワイトハウスの執事にスカウトされ、
第34代大統領アイゼンハワーから第40代大統領レーガンまで仕える。

セシルの長男ルイスは黒人解放運動にのめり込み、
白人に従順である事で仕事を得て来たセシルと対立し、家を出る。
大きな時代の変化の中で、苦悩しながら、地位向上を掴み取っていく。
セシルはレーガンが黒人の地位改善策に拒否の姿勢を取った事に失望し、
ホワイトハウスを去り、ルイスと和解する。
やがて、初の黒人大統領オバマの誕生の瞬間を見る。


数十年の歴史を2時間12分に詰め込んでいるので、端折った感はあるものの、
時代を追って丁寧に描かれている。
中高生くらいの年代の子達にアメリカの人種差別を知ってもらうには
ちょうど良い作品だと思う。
現実はおそらくもっと過激で残酷だった事だろうけど、
そればかり描いても仕方無いし、
今作で差別の不条理さや非暴力での抵抗等、十分分かり易く描かれている。

各大統領を演じる俳優の競演が面白い。
それぞれ、似てるようでもあり、似てなくもあり。
ロビン・ウィリアムズのアイゼンハワーは泣けるね。

セシルという役はアンビバレンツを孕んでいて、
その為か、時々嫌味っぽくていけ好かない。
真に従順な性格なのではなく、生きる為に従順さを演じ続けて来た。
若い世代のルイスと対立するのは当然の成り行き。

セシルの妻グロリア役のオプラ・ウィンフリーはコケティッシュでチャーミング。

長男ルイス役は「セルマ(邦題は「グローリー」に決まったのかな。)」で
キング牧師を演じたデヴィッド・オイェロウォ。

正直言えば、名前の発音が難しくて覚えにくい。
ルピタ・ニョンゴまでなら何とかなったんだけど。
最近のアフリカ系の俳優は
アフリカ系の名前をそのまま使う人が増えて来たように思う。
白人におもねらず、自らのルーツに誇りを持とうという意思表明なのだろう。
観客の側としても、尊重したい。
昔はね、ボブ・ディランとかも、ユダヤ系の名前じゃ売れないからって
WASP的な名前にさせられて、今日に至る。

今作もスター俳優がちょこちょこ大勢出ていて、探し当てる楽しみもある。
レニー・クラヴィッツが俳優をやっているのは初めて見た。
髪型が変わるとちょっと分かんないね。

レーガン大統領の妻ナンシー役にジェーン・フォンダ。
この人が出てくると見てるこっちまで何だかビクッとさせられる。

現代はシンプルで「Lee Daniels' The Butler」となっている。
リー・ダニエルズというのは今作の監督。
これだけじゃあ分りにくいけど、逆に邦題の「〜の涙」はセンチメンタル過ぎて
ちょっと余計だったかな。
観客に先入観を与えているような気がする。

奴隷制時代の映画を見て、いつも疑問に思うのだけど、
白人は黒人を家畜のように扱いながら、それでもレイプするのは何故だろう?
差別的な目で見ている相手だけどセックスはしたいって、何なのかな?
白人女性相手にレイプしたら捕まるから、
黒人女性をレイプして気晴らしするのだろうけど。

私だったら、一個人として嫌いな相手だったら、触りたいとさえ思わない。
女性と男性の違いもあって、
男性は女性を犯す事で侮辱したり凌辱したりした気持ちになるのだろう。
でも、そうせずにいられないのは、
本能的に相手の優位に怯えているからではないだろうか。
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