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マンガ家Mの日常
出来れば、もっと専門家の意見を聞いてみたいんだけど、
適切なサイトを探すのに時間がかかりそう。

女の子にエールを送る映画、と、簡単に言ってしまえれば楽なのだけど、
重層的なアイロニーも感じる。

バービー人形は、女の子達を保守的な主婦像から解放し、
時代に合わせて様々な改革もして来た。
大統領や最高裁判事、ノーベル賞作家等々、リーダー的役割の職業、
人種、体型、障がい、ジェンダー等々、典型例と異なる外見にも踏み出した。
バービー人形は社会的に女性の立場を引き上げる取り組みをしていたが、
それでも、典型的な美女のバービー人形だけがロールモデルとされ、
サーシャのような、若い改革派の女性達から非難される。

現実の女性達こそが、一歩を踏み出せなかったのか、
バービー人形のメッセージ性に不備があったのか。

バービーランドでは、確かにリーダー的バービーが大勢存在するが、
夢の国バービーランドでは、ただ皆で楽しく歌い踊っているばかり。
リーダーとしての地位に中身が伴っていない。
それはまるで、女性に地位を与えても無意味だというようにも受け取れる。

一方、バービーの付属物的存在でしかない事に悩むケンもまた、
現実世界で男性の付属物となっている女性を
反転して象徴しているようにも見える。
女性目線から、ケンを笑う事は出来ない。

童話のピノキオのように、ラストでバービーは人間になった、
生殖器を備えて。
しかしそれは、バービーから不老不死と永遠の美を奪うものでもあり、
未だ男性優位の社会にあっては、多くの困難をもたらすものでもあり、
場合によっては、確立を願う自己を犠牲にしなければならないものでもある。
この世は矛盾に満ちている。
人間である事の象徴としての生殖器なのか。

ふと思えば、
我が身のみならず、
自己の確立を目標に定め、結婚や出産から遠のいた人生を送る女性も増えた。
結婚や出産を希望しなかったわけではないが、
生殖への参加は果たしていない。
それはむしろ、バービーランドに近づいたのだろうか。

自己の確立と生殖とを両立させるのがあるべき姿であるが、
理想はしばしば裏切られる。

誰もが戦いを避けて通れない。


今作は2023年の最大のヒット作でありながら、アカデミー賞では冷遇された。
コメディの皮を被った、女性の人権宣言という、
読み取りの難しさが混乱を巻き起こす。
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