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マンガ家Mの日常
タイトルからして小難しさの薫る映画。
ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したというので、
たまにはそういう文芸的名作も見てみなくてはと思い、録画していたのだろう。

予想をはるかに超える難しさ、面倒臭さで挫折した。
上映時間2時間35分と、ただでさえ長い。
45分辺りまでは何とか見ていたが、その後は早送りして見た。
それで十分な感じ...。
タル・ベーラ監督というハンガリーの人の映画なんだけど、
この人は7時間の映画とかも撮ってたらしい。
長時間の映画というんでは「1900年」とか「旅芸人の記録」とか見たけど、
5〜6時間くらいでシンドかった。
7時間ってなると、普段見ているような映画とは全く別種の芸術だと
観念するしかないんだろうか。

不勉強で、ニーチェという人をよく知らない。
哲学者であるとか、幾つかの作品のタイトルだけとか、梅毒で狂って死んだとか、
そういった程度。
哲学やってて偉そうな言葉を吐いてる男が、なんで梅毒で死んじゃうんだろう。
昔、何かの映画かドラマで、男が奥手な女を口説く時に、
「一緒にいて沈黙が苦ではない男女は相性が良い、とニーチェが言っている。」
とか何とかって言っていた。
そういう、インテリぶりたい時に使われる人。

おそらく、ハンガリーの何処か。
荒涼とした土地に頑丈だが粗末な石造りの農家が1件立っている。
老人とその娘が暮らしている。
老人は体躯はがっちりしているものの、右腕が麻痺していて使えず、
服の着替え等、日常の世話を娘が事細かに面倒見ている。
娘もたまには「いい加減にしてよ!」とキレかける。

外は暴風が常に吹き荒れている。
1頭だけいる荷馬車引きの馬も、あまりに風が強いと動きたがらない。

父娘二人の、淡々とした生活の様子だけがひたすら画面に流される。
生活の用事以外、会話はほぼ無い。
「58年ぶりに木食い虫の音がしなくなった。」それが唯一の会話。
だとしたら、もうこの先の会話は一生無い。
毎日茹でたジャガイモ1個だけの粗末な食事。

映画の中の設定で3日目に、近所の男が訪問する。
焼酎を売ってもらいに来た。
男は、欲深い人間が町を滅ぼした話をするのだが、
老人は面倒臭がって男を追い払う。

4日目、数人の旅の者達が水を求めてやって来る。
断りも無く、井戸の水を飲む。
娘は一緒にアメリカに行かないかと誘われるが、応じない。

5日目、井戸が枯れる。
この土地を捨てて他所に行こうと試みるが、いくらも行かないうちに諦めて戻る。
夜、ランプに油を注しても火が灯らない。暗闇に包まれる。

6日目、老人の「生きねばならん。」の一言。

映画の中で、娘が本を読むシーンがあって、聖書の一節のような感じ。
おそらく、聖書のそういう主題を基にした映画なんだと思われるんだけど、
そこまでキリスト教に詳しいわけではないから全く分からない。
欧州の中でもハンガリーは貧しい国なので、
生活環境の厳しさとか、社会が抱える問題が背景にあるのかもしれない。

ややセピアがかったモノクロの映像は美しい。

上映時間はこの半分くらいで良い。
でも、長時間を我慢して見てこそ、何かが伝わってくるのか...な?

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