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マンガ家Mの日常
昨日の新聞記事。
KADOKAWAとその子会社が雑誌作成にあたり、
原稿や写真を発注した下請け業者に不当に低い代金しか支払わなかったとして、
公正取引委員会は下請け法違反(買いたたき)を認定し、
代金の支払いと再発防止を求める勧告を出す方針を決定。

対象はマンガではなく、「レタスクラブ」の原稿執筆や写真撮影の委託業者。
フリーランスも含まれていて、契約打ち切りの恐れから、
一方的な代金引き下げに従わざるを得なかった。

何処も同じ、秋の空。
怖いね。

これはどうやって公正取引委員会が知るところとなったんだろう?
業者が溜まりかねて訴えを起こしたのかな。

ハーレクインの再録料の値下げが頭をよぎる。
公正取引委員会に電話かメールをすれば、話を聴いてくれるのかしら。
元々のマンガの原稿料からして、超ブラックなんだけど。

…辛い時期を生き延びて来たなぁと、
今更ながらしみじみ思う。
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ネットニュースの速報で知る。

胃癌による病死。88歳。

怪奇マンガの先駆者として、個性際立つ作家。
「おろち」「漂流教室」「わたしは真悟」等々、数々の名作を世に放ち、
その人生と共に、問題提起を続けて来られた。

大昔、出版社通いをしていた頃、小学館の近くでお見かけした。
トレードマークの赤と白のボーダーTシャツが、横断歩道を渡っている。

これまで報道されて来た範囲でしか人物像を存じ上げないが、
群を抜く才能と共に、ゲイであった事も伝えられている。
マンガ界における、美輪明宏さんのような存在?
昭和の時代では、今より更に深い葛藤があっただろう。
それが作品に深みをもたらしていたのだとすれば、
読者は人の痛みを食べて生きる怪物のようにも思えてしまう。


ご冥福をお祈りします。


東京タワーの遥か高みでお寛ぎ下さい。




「魅入られた美女」再録にあたって、簡単な後書きコメントを提出。
編集長さんから早速受け取りの返信が届く。

再録料が下がっている事について伝えたら、
「売り上げ低下が少しあるのと、紙代、印刷代の高騰が原因」との回答。

紙媒体の売り上げ低下はあるものの、
出版業界全体としてはその分をデジタルの伸長で補っている筈なので、
ハーレクインの経営態勢に疑問を感じる。

そして、一番の問題は、
物価高で紙代や印刷代が値上がりしていながら、
外注であるマンガ家への支払いだけ下げられる、この大きな矛盾。
(新作を執筆している方々の原稿料がどうなっているかはわからない。)
何故、紙代や印刷代値上がり分を、再録料を削って支払いに当てるのか?
本来の売り上げで経費を賄えないのでは、ビジネスとして成立していない。

別の出版社、別の雑誌に移った場合、最初は不利な状況から始めざるを得ない。
結果を出してキャリアを積み、読者との関係を築く。
そうして、少しずつながらも原稿料が上がるのを期待する…筈が…。
振り返って、耐えていたあの期間は何だったんだろうと思う。

マンガ家だけが割を喰わせられる状況は深刻になるばかり。

出版社の社員さん達が、マンガ家と同様の待遇だったら、皆離職して、
出版社は崩壊するだろうな。

朝、メールを開くと、送信者欄の知らない名前が目に入った。
詐欺メールか?

と思ったら、

ハーレクインの編集長さん。

ご無沙汰しているので、お名前がすっかり記憶から飛んでいた。
失礼しました。

「魅入られた美女」が来年1月15日発売の増刊号に再録されるそうです。

この紙媒体の低調な中、まだ増刊号を出せているのは立派。

でも、そのせいか何なのか、再録料がメチャ安い。
前回の別作品の再録から、更に下がった。

昔は、再録料って、元の原稿料の50%とされていたけど、
ハーレクインになってから、およそ15%。
そして今回の提示はおよそ10%。
物価高騰で、給与やバイトの最低賃金が僅かながらも上げられる中、
再録料だけは下がっていく。

悲しいかな、これが、少女誌女性誌の現実。


「魅入られた美女」のタイトルを久々に見て、
すぐにはどんな作品だったか思い浮かばず、本棚を確認。
コーヒーショップ経営のヒロインがブラジルに行く話でした。
何だかね、ぱっと見て作品内容が伝わらないタイトルって、やっぱりダメだね。

どうだろう。
作中、印象的だったのは、コーヒー豆栽培のエピソードで出て来るシェードツリー。
コーヒーの木を保護する役目の木。
例えば、精神的に苦悩する彼を、ヒロインが守るエピソードとか入れて、
タイトルもシェードツリーと繋げて、とか。
その方が、エピソードとしても、画像としても、イメージが膨らむ。

全部描き直したくなる。

「マンガの神様」手塚治虫先生に対して、
ちばてつや先生は、その人徳の高さから「仏様」と称されていた。

緻密構成力と豊かな人間味溢れる作品は、単なるヒーローものに終わらず、
読者の心に寄り添い続けた。

ちば先生は仕事場のアシスタントさん達にも温情深く、
早い段階から年金等の社会保障制度を整えておられたとか。

後年、反戦に向けた思いの強い作品を多く手がけられた印象。
「反戦」と「勲章」は相容れないようでもあるけれど、
ちば先生は、マンガ家や、マンガに携わる無数の人々を代表して受賞された。

偉大な業績に感謝。