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マンガ家Mの日常

先月アシスタントさんが来ていた時に下描きを進めていたのだけど、
人がいると集中するのが難しくて、
フツーの会話やアクションのシーンはまだ何とかなったんだけど、
所謂ラブシーンと言うか、感情の高ぶった場面に感情移入して描くのが困難で、
そう言ったシーンいくつかを後回しにしていた。

今月上旬、確定申告を含め、色々な雑用をこなしてから
改めて下描きに向かっているのだけど、
ただでさえ感情移入が大変なとこに持って来て、
とびきり感情が高まったシーンばかりが溜まっているので、
描き辛い事この上無い。

例えばね、一般的な家庭の朝って、起きたら
お父さんは会社に行く前に、ホントはスポーツ新聞が読みたいんだけど、
仕事の為に我慢して日経新聞とか読んでる。
お母さんは小学生の息子に、給食費の袋を忘れず持って行くよう大声出しつつ
ダンナの朝食作ってて、それも、何でウチのダンナは
トーストとコーヒーと味噌汁なんだろう、とか思いながら手を動かしてる。
そんな朝、さあこれから仕事だってなった時、いきなり
「生きている限り君だけを愛し抜く!」
「貴方の胸の中で熱く焼かれたい!」
...なんていう気持ちになれる?

ああ、今日は久々にお天気良いから洗濯物を外に干したいなぁ、とか
考えたいところ、
「あの人が憎い、私の心を嵐の海のようにかき乱して...。」とか、
考える方向に自分を持ってゆかねばならん。

正直シンドイ。

でも、それくらい真剣にひとコマひとコマ感情移入して描かなければ
納得のいく作品には仕上がらない。
ちょっとでも感情のこもっていない絵を描いてしまった時の後悔たるや...。

進み具合は順調とは言えないけど、
何とか頑張る。

前にも書いた事がある通り、
マンガの仕事で一番ツライのはこうしてテンション上げて行く過程にある。

随分前に東京ドームでGuns & Rosesのライブを見た時、
アクセル・ローズのハイテンションのパフォーマンスに圧倒された。
ハードロックだから、しょっぱなからテンション高い曲が続く訳で、
歌に全身全霊を込める。それは並大抵の事では無い。
そこまでテンションを持って行く為には、開演が1時間以上遅れてしまうのも
やむを得ないと思えた。
(まぁね、プロなら時間を守らなきゃなんだけど。)
そういうテンションの急激な上げ下げの為に、
当時の彼らにはアルコールやドラッグが必要だった側面もあったのかもしれない。

体質的にお酒もタバコも受け付けないんで、
テンションを上げるためには、もっぱらコーヒーとチョコレート。
でも、これも摂り過ぎは身体に良いとは言えないよね。

1作仕上げる毎に、身体の何処かを壊してゆく...。

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