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マンガ家Mの日常

数日前、Facebookで誰かが紹介してたので、ちらっとだけ見た。
厚生労働省が公的年金についてPRする為のネットマンガ。

1〜11話まであるそうで、ネットのサイトに上がってたのは最終11話。
若い世代を中心に、年金制度への不安が広がっているので、
その不安解消を目論んでの話らしい。
上の世代は苦労して来たけど、今の若い世代は良い暮らしをして来たから、
もらえる年金額が少なくても、世代間では釣り合ってる、と。

おいおい、それって、年金制度の崩壊を、他の要素で誤魔化してるだけだろ。
人口が増え続けなければ成り立たないこの制度については、
小学生の頃から不安を抱いてたよ。

ネットマンガでは、ラストが、女性が働きつつ子供も産もう、
その為にお見合いパーティに繰り出そう、って締めくくりになってる。

お見合いパーティは良いけどさ、
少子化の問題や、女性の就労の問題って、女性の側って言うより、
むしろ男性側の問題だと思うんだよね。
なのに、全部女性任せで締めくくるって、どういう頭してるんだろう。
お見合いパーティの設定にしても、
女性が恋愛や結婚ばかり追いかけているかのような誤解を生む。

全話読んだ訳では無いので、言えるのはこのくらい。
Facebookで話題になってる程度かと思ってたら、
新聞にも記事が出てたんで、結構大きな問題になってるんだね。


で、このマンガ、11話だけ見ると11ページ(だったと思う)。
なんで、単純計算で全11話合わせて121ページって事になる。
ハーレクインと同じくらいの分量ね。

で、予算が1600万円なんだって。
!?!?!?

嘘だろっ!!!

入札をやって、マンガを提案した広告会社が落札。
ストーリー原案は業者が作ったそうだ。

えっ、どういう予算配分になってるんだ!?

マンガの原稿料、ハーレクインで1ページ1万円。
だから、マンガ家さんに121万円支払うとする。
原案を作った人は会社員だからお給料制の筈だけど、
労働量としてとりあえず60万円としよう。
これで、マンガ本体でページ1万5千円だから、今時破格。
でもまぁ良しとしよう。
で、校正とデジタル化の作業。
正確なところは知らないんで、とりあえず60万円としよう。
他、細かな経費が必要だったとして、諸々合わせて、予算総額250万円。

えっ、後の1350万円は一体何処に支払われたんだ!?

ふざけんな!

広告会社って、どうせ電通か博報堂でしょ?
こういうボロい稼ぎ方してるのね。
世間知らずのお役所を騙してぼったくってるとしか思えない。
かなり余裕を見て予算の見積もりをしたとしても、
1000万円くらいは宙に浮いてる。

ハーレクインで言えば、
例えば、コミックスが1万部くらいスムーズに売れたとする。
総額600万円の収益。
その中にマンガ家さんへの原稿料約130万円があって、原作料の支払いもある。
印刷や流通の費用があるから、出版社の利益って全体の半分くらい?
税金やデジタル分は除外しての計算。
必要経費を差し引いたらマンガ家の手元にはいくらも残らないんで、
出版社が必要経費を差し引いても、マンガ家より儲けは大きいとは思うけど。

ハーレクインを基準にしても仕方無いんだけど、
今作はコミックスが初版3万部売れたくらいの金額だから、
少女マンガで見れば、そこそこヒット作レベルの予算組み。
初版3万部って、そうは売れないんだよ。
厚生労働省のホームページが元からあって、そこにデジタル配信するだけだから
紙媒体に比べて経費はそんなにかかってないんで、もっと効率良い。

厚生労働省や広告会社がバカみたいな予算の使い方してるのは
どうにも口出しのしようが無い。


マンガ家として気になったのは、このマンガを制作したマンガ家さん。
それなりにキチンとした構成が出来る方なようで、
マンガ制作の作業としては問題無いのだけど、
何と言うかね、マンガって、本来は社会風刺に大きな役目があるものなのに、
お役所のおかしな内容に疑問も持たず、言いなりになって描いちゃったって、
一体どういう意識なんだろうって、
マンガ家の端くれとして腹立たしくなる。
1万円とかじゃなくて、おそらくもっと高い原稿料だったんだろう。
それで、何も考えずに言われるがまま、喜んで描いちゃった?

社会や体制に対する批評の精神が欠如しては、マンガ家とは言えない。

こういう恥知らずな代物を「マンガ」と呼んで欲しく無い。




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