忍者ブログ
マンガ家Mの日常
日々慌ただしくしていると、
小説や映画の味わいを噛みしめる余裕が無くなる。
もう少し時間の使い方に配慮せねば。
読了から時間が経つと、時間に反比例して記憶や感動が薄まる。


勿論、タイトルに惹かれて本書を購入した。
歴史的名画「モナ・リザ」と「ウイルス」という組み合わせの妙。
結論から言うと、モチーフは興味深かったけど、
小説としての出来がイマイチで、魅力的なモチーフを生かし切れていなかった。

かつては「美」に取り憑かれた富豪が、逆転して「美」を打ち消しにかかった。
「モナ・リザ」こそが、黄金比率を携えて、
世界中に「美」の規範を伝播させる「ウイルス」だという、アンチの発想。
その「美」を打ち壊す方法として、
PCの中で、黄金比率に関わる画像をコンピューター・ウイルスで破壊し、
同時に、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を破壊し、
「モナ・リザ」を盗み出して、これもまた破壊を企てる。

結果として、「モナ・リザ」は救われるけど、
「最後の晩餐」は破壊されてしまうというのは、
美術に携わる者としては、小説であっても受け入れ難い。
小説ゆえの荒唐無稽さを楽しむという事ではあるんだろうけど。

ただし、そうした要素は別にしても、
何か、こう、ドラマの展開が不発。
各パートが上手く絡んでいないし、ドキドキハラハラ感も薄い。
事件の中心人物であるパヴェルの死に方も設定が雑な感じ。
ヒロインのヘレンにしても、もう少し魅力的に描けた筈。

アガサ・クリスティやダン・ブラウンの例を待つまでもなく、
ミステリー小説の面白さは、まずは設定の妙味だけれど、
それを生かすための人物設定や展開が必須。
もっと「小説家」として上手い人と組んで仕上げたら良かったかもしれない。
色々、惜しい作品。


ついでに。

「プラドのモナ・リザ」は知らなかったけど、検索して画像を見ると、
「モナ・リザ」とは、肝心の顔のバランスが違っていて、どうにも歯痒い。
肖像画なんだから、背景よりも、まず顔をきちんと模写出来ていなければ。
これを「モナ・リザ」の代役として、一体誰が誤魔化されると言うのか。

PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック