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マンガ家Mの日常
先のボルハのキリストの絵は多分フレスコで、
その上に油絵の具を塗り重ねたんじゃあ無かろうかと思います。
熟練の修復家が根気強く作業すれば、油絵の具を取り除く事は出来るでしょうが、
下のフレスコ画が元々かなり傷んでいるので、
油絵の具除去の際に、更に絵を傷めてしまうでしょう。
それを考えると、新聞に寄稿されていた画家の堀越千秋氏が言われる通り、
現時点では修復は不可能でしょう。
将来的に技術が進歩すれば、どんな可能性もあり得ますが。

地元画家の老婦人が80歳を越えた高齢である事と、
おそらく教会の熱心な信者で、信仰心と善意からの申し出であったであろう事、
そして、公開された絵がなんとはなしに愛嬌があった事で、
老婦人とこのグロテスクな絵を擁護する向きも多くあるようですが、
そうした無責任なヤジ馬的な意見はそのうち熱が冷めるでしょうし、
何よりも、画家の立場からすれば、非常にナンセンスです。

元の絵を描いた画家はもうとうにこの世の人では無いでしょうから
絵に何をされても怒る事は無いでしょう。
でも、絵というのは、画家にとって、我が子同然のものです。
長い人生で研鑽を重ねて感性と技術を磨き、
一筆一筆、心血を注いで仕上げた、分身であります。
二度と同じものに巡り会う事も出来ません。
それを他人が不用意に手を加えて良い筈は無いのです。
ましてや、キリストの肖像です。
画家は自分の命と引き換えにするくらいの覚悟で臨んだ仕事だったでしょう。

老婦人を咎めだてするのはお気の毒で、やるべきではないでしょうが、
絵そのものについては、オリジナル作品にもっと敬意を払い、
現段階のムゴイ絵を面白おかしく楽しむべきではありません。

(続く)

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